21時30分~22時30分予定です。
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コメント、ハートは大歓迎です。言葉が浮かばない人は「キャー」とかかいてやってください、というのがいつものノリ。(書き終わり次第の反応になります。1時間待てる方は応援してやってください)
ネタを考えるところから始めるので最初はダラダラしています。
本日のテーマ
「バレンタインデー」
「進路」
「友達」
◆
ネタ出来た。
書きます。(シチュー食べながら。。。)
◆
かごにざっくりと盛り上げられた小さな包みに、これはそれなりに手間なのではないだろうか、とリドルは思いながら談話室の盛り上がりに近づく。
「寮長ー」
近づいてきたエースに、はい、寮長の分、と笑顔で手のひらにその包みのうち一つを渡される。
「ありがとう。一つ以上取ったりしてはいけないよ?」
「わかってますって。取ってきてあげただけじゃないッスか」
唇を尖らせるエースの隣で、デュースは少し首を傾げる。
「これ、寮長の分もあるんですか?」
「ん? どういうことだい?」
「いえ……寮長の分は特別だと思ってたんで」
さらりと言われて、ちょっとドキッとする。
バレンタインデーには談話室にトレイのチョコレートが積み上がる。それは毎年の事で、寮生たちも喜んでそれを持っていく。
けれど確かに、トレイはいつもリドルの分は別に作ってくれる。
それにどんな意味があるのかなんて気にせずに去年は食べたけれど。
(いや、去年は『寮長だから』作ってくれただけだろう)
トレイと付き合い始めて半年ほど経った。
いつからそういう気でいてくれたのかはわからないけれど、一年前も『そう』思っていたなんて、あまり考えづらいような気がする。
「あ。ハッピーバレンタインデー! トレイくんもう置いてたんだ」
談話室にケイトが入ってきて、待って待ってチョコの写真撮りたい、と籠にスマホを向けている。
そういえばケイトはチョコレートは大丈夫なのだろうか。
「ケイト」
「ん?」
「それ、食べるのかい?」
「えっ……食べちゃ駄目なの?」
真剣に『映える角度』などを検討していたらしいケイトは素っ頓狂な声を出す。いや、そういうわけでは。とリドルは首を振り、
「嫌いじゃないのかい?」
と尋ねた。
「んー、これぐらいなら大丈夫だから俺の分もあると思うけど、今年は甘くないのをくれるっていってた」
「そうなんだ」
やはり、それぐらいの気は使うか。と内心で思う。がっかりしたわけではなくて、トレイはそういう人間だと思ったのだ。
子供の頃から、毎年貰っている。
一年に一度の幸福の味。小さな一粒が、リドルにとってどれだけの幸せだったか。
話しているとトレイが監督生とグリムと連れ立ってやってきた。
二人の分も作ったから、とハーツラビュル生が群がっている籠の方を指す。一個だけだよ、と念を押す監督生に、どれが一番大きいか見ろ! とグリムは真剣だ。
一年生二人がそれに合流して盛り上がっているのを横目にしていると、トレイはリドルの所に近づいてきた。
「寮長の分は後でお部屋にお届けに参ります」
「ありがとう」
目を合わせて微笑み、お前の分もな。とケイトに振るトレイの顔を暫くぼんやり見つめていると、トレイが気づいた。
「ん? どうした?」
「いや……キミ、マメだよね」
「そうか?」
「やー普通にこれについてはマメでしょ」
「全員に配って回ってるわけじゃないからな」
ケイトが言い、チョコレートを選び終わったらしい監督生とグリムがちょこちょこと近づいてきた。
「トレイ先輩ありがとうございます! こっちにも義理チョコってあるんですね!」
いつもどちらかと言えば落ち着いている監督生が珍しくちょっとテンションが高い。
「義理チョコ……?」
デュースが首をひねり、何それ。とエースもつっこむ。
「え、これ、義理チョコじゃないの? 本命? 全員? ハーレム?」
「どんどんおかしな言葉になっていくようだけれど、一体何だい……」
どの国から来たかもわからないと学園長が言っているだけあって、監督生は本当に文化が違う所の育ちなのだな、と時々不思議な気持ちになる。
「こういう、配るチョコレートのこと、ですかね」
首をひねりながら自信なさげに応える監督生に、ええ、とエースは唸る。
「フツー配んねーって、ハーツラビュルで良かったーっていう案件だかんな、これ」
「そうなの? まぁこんな大量には普通配らないと思うけど……」
「カードを一人ずつ渡すよりはこっちの方が効率いいだろ。いつものことをねぎらうっていう意味にしても」
「え、トレイくんこれ、カードがめんどくさいからチョコなの? チョコってめんどくさくないの?」
「大した手間じゃないのに『自分は大事にしてもらえてる』と認識してもらえたら何かあったときにいいだろ」
「眼鏡、ホントに腹黒いんだゾ……」
「そうか?」
会話するのを眺めながら、腹黒いというのだろうか。とリドルはぼんやりと思う。
味方は多いに限ると思う。ただ、リドルはそういうのが下手だと自分でも認識している。
だから、トレイを凄いと思うのだ。こういう、小さな気が利くところが。
子供の時からきっと、リドルにもそう思って接してくれていたのだ。
小さなチョコレート。
大した手間ではないとトレイは言った。
けれどそれをこっそりと渡してくれることを、リドルが毎年どれだけ楽しみにしていたか。
◆
今日の談話室はチョコレートで騒がしい。
お茶は自室でとることにして、トレイがサーブしてくれるというので任せる。
リドルにはチョコレートは小さな粒ではなく、ケーキだった。
せっかくだから、と、最後に赤い色の飴で細工をしてくれる。確かに、サーブしてくれるようなものじゃないとできないものだ。
こういう『ちょっと手の込んだチョコレート』は去年ももらった。
だから、トレイはリドルが寮長で、リドルにチョコレートが出せる、という状態だとこうやってくれるのだろうと思う。
……そう、自分に対する態度なら理解できるけれど。
「トレイ、ナイトレイブンカレッジに入学して、ハーツラビュルに所属して、っていうのが無かったら、それでもチョコレートは配ったのかい?」
「ああ、どうだろうな、状況に寄るだろうから」
想像はしないのか、と思いながら、少し意地悪な気持ちになる。
「じゃあボクがハーツラビュルに来なかったら?」
わざとそう言うと、トレイは僅かに眉をひそめた。困ったように笑って、リドルを覗き込む。
「そんなわけはないだろ、と、思うけど」
何の自信だ。と言い返したいのだけれど、近づいた表情の甘さに何も言えない。
「それはそれで、これだけは届けに行ったさ。毎年、お前にチョコレートを食べてもらわないとな」
「……ボクはこの後、キミと違う道を選ぶと思うのだけれど」
リドルの進路とトレイの進路は重ならないだろう。
トレイもそれをこちらにあわせようとはしないだろうし、リドルもそうだ。
自分たちは誰にも恥じない大人になって、そしてお互いに正しく認め合うのだ、と、何処かで……してもいない約束を、している。
言葉にはしていない約束を。
「バレンタインデーは俺に時間をくれればいい。チョコレートを食べる時間だけでいいから」
何処にでも届けに行くとはトレイは言わなかったけれど、そういう事だろう。
「……うん。楽しみにしてる」
この先何年でも、何処にいても。
一緒にいない所なんて、想定できない。
甘いケーキをじっくり味わう。一瞬で口の中で溶けてしまうチョコレートの一粒だったころから考えると、なんという幸福だろうか。
ケーキを食べ終わって淹れてくれたお茶を飲んでいると、トレイはリドルの手元にそっとカードを置いた。
このタイミングで、とおかしく思いながら、両手で広げる。
押し花をして、丁寧に作られたカード。
「……カードは面倒なんじゃないの?」
ちらりと見あげる。
「まぁ、他のやつのためにはな」
……そう言われたかったから。
そう、とそっけなく言いながら、噛みしめる。嬉しい。特別なカード。シンプルな、愛の言葉だけのカードだ。市販されているものと変わらない。
「リドル」
「ん?」
突然、手から取り上げられた。今、贈られたカードを。
「お前、なんだと思って受け取ってたんだ?」
ちょっと拗ねたような物言いに、え、と瞬く。
押し花できちんと作られたカード。毎年くれるカードだ。いつも大体、薔薇で作られている。
「監督生じゃないんだから、もっと早く気付いてほしかったな」
鼻先まで近づきながら、他の人の名前を出されるのが不思議だ。キスをするためにカードを取り上げたのだろうに、少し拗ねた声色なのも。
「カードは愛する人にだけ贈るものなんだぞ。知らないなんていうなよ」
「それは……」
知っているよ、と、言おうとして、ふと思う。
そうだ、毎年、貰っていた。
カードと、チョコレート。
「友達には贈らない」
そう、愛する人に贈るのだ。
友達には、贈らない。
リドルがトレイの声に響いて目を閉じると、甘い唇が重なって来た。
そして、思い出す。
もっと不器用なデザインだった、小さなころにもらったカードの存在を。
終わったー。やっと終わったー。