ガツガツ打ってるので文章へんです  られと百合どっちか書いてます
られ ガレージの話
三人称 ランガより
「一回許すと、ずっと許す羽目になるぞ」
 暦が少し厳しいトーンでランガに向かって声をかける。ランガの膝にはななかが乗っかっていた。放課後、ガレージに頻繁に顔を出すようになってから、ななかも興味本位でよく顔を出すようになっていた。早く母屋へ戻るようにいつも暦に促されるが、頬をふくらますだけでなかなかろうとしない。今日はランガの膝に乗りながら「あれ取って」「これ取って」と指示をしていた。
「まーた始まった」
 ボードの修繕をしながらちらと暦はランガを見遣る。「とってやるなよ」その声に重なるタイミングでランガは暦の工具箱からスパナをななかに手渡した。「あーこら!」あぶねーぞ、と暦は取り上げる。
「見るだけならいいと思って、おれ見てるし」ななかと同じ表情でランガが暦を見つめる。「不細工な顔しやがって」暦は眉間に皺を寄せランガを通してななかを睨んだ。
 ひょい、と音を立てななかはランガの膝から降りる。「おい!」暦の説教を察知したようにととと、と走りガレージの扉をくぐった。
「お兄ちゃんのバーカ!」
 外からガレージの内側に声が響く。暦によく似て響く大きな声。肺活量があるな、掌に収まるサイズになったななかを眺めてランガは想像する。きっと兄と似ていて運動神経もいいんだろう。日本に来てまだ女性のスケーターは見ていないが、きっとななかもレキの隣をいつか並んで滑ったりするんだろう。
「ランガ」
「なに?」
「ぼーっとしてる」
 ぐい、と暦がランガとの距離を詰め、鼻先を人差し指で押した。妹にするような動作。「あんまりさあ、ななか甘やかすなよ」二度目の忠告。声音も先ほどのように低い。あいつ、我儘の限度がまだよくわかってねーんだよ。小さいから。お前、もうロックオンされちまってるからな。そう、若干吐き捨てるような言い方をする。
「そういうもの?」
「そうなの」
 ランガが話を大人しく聞いたこと気配で確認し、暦はまた作業へと視線と心を戻した。集中しているときの暦は誰の言葉も耳に通さない。ランガは自分のボードを見てもらっている手前何も言えず、ガレージ内に置いてあるスケートボード誌を選び、ページをめくった。
 このガレージは居心地がいい。スケートボードで埋められていることも、木のにおいがすることも、冬を感じさせない気候も。暦が動くたびにカタカタと鳴る工具の音も。包まれているような穏やかさがある。コーティングされた特殊用紙の端に指先が触れ、痛みで現実へと引き戻される。暦がこっちを見ていた。
「直ったぞ、試しに外で乗ってくれよ。微調整はそのあとすっから」
 何故か口の中が乾き、うまくスケートボードを受け取ることができない。「どした?」暦のきょとんとした目の中にランガが映り込む。瞳孔の中を占めるランガの割合は時間に比例するようにどんどんと大きくなっていく。唇と唇が触れ、見えるのはお互いに相手だけ。逃れようとする暦の手首をきつく掴み、伏せようとする瞳を捕えようとランガは熱っぽく見つめる。
「一回許すと、ずっと許す羽目になるよ」
 暦はたじろぎ固唾を飲んだ。喉仏の上下。逃がさないと言わんばかりにランガは暦に重心を寄せた。
おしまい
おかあさんのこと 百合です
これは一時創作
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向き
初公開日: 2021年01月21日
最終更新日: 2021年01月23日
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