今日の空は群青色だ。昨日のような毒々しい紫でもなく、浮かれた黄色でもなく、見慣れた、そして落ち着いた群青。好みの問題で言えば、もっと透き通った空色が好きだけども、今はこれでよしとしよう。
「先生はいらっしゃる?」
物見塔から、空が染められていくのを眺めていると、下から声がかかる。毎朝、先生に焼きたてのパンを届けてくれる、お隣のマダムだ。
「いますけど、まだ空を塗りきっていないんです。ご用でしたら僕が代わりに」
「あらそうなの? そうしたら塗り終わるまでここで待たせてもらおうかしら」
いつもなら、籠に入ったパンを受け取って終わりなはずなのに。と、不思議に思ったのが顔に出ていたのか、マダムは言葉を続けた。
「ちょっとね、ミトンと鉄板が壊れちゃったの。だからごめんなさい。今日はまだパンが焼けていなくて」
「そ……れは一大事ですね」
取り外された布巾の下にはただの空洞。中身が満たされているはずの籠の中身は空だった。一大事だ。先生に渡されるパンのおこぼれを当てにしているもので、毎朝の食事はなにも用意されていない。というか、していない。
「先生の絵の具でしたら、数分か数ヶ月で直せると思いますし、きっと大丈夫ですよ」
これは自分に言い聞かせた。
「数分のほうだったら助かるのだけど。……最近ほら、外から絵魔も来ているみたいだし、また先生がお忙しくなる前に頼みたいのよね」
「もうそんな時期ですか。絵魔を追い払うくらいなら僕たちのような助手でもできるのですが、大きいモノは難しいですからね」
数分か数ヶ月か。先を憂いて、鳩尾の辺りが切なく鳴った。
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即興小説15分
お題:絵描きの空想
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【書く前】
ゴッホ? わからん。売れない絵描きが売れることを夢見るとか、もしくは描いたモノが実体をもつとか
空想?
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【書いた後】
「先生」は特殊な力を持った「エカキ」で、外の世界をうようよしている化け物を倒し、そいつらが入って来れないように、村の周辺をオエカキパワーで覆って世界平和に貢献しているのである! みたいな。
村の中はまさに絵で描かれたような牧歌的風景が広がってるんだけど、一歩村の教会から外に出ると、廃墟と瓦礫、化け物、骨みたいなやべえ世界が広がってるイメージ。資源は存在しないから、本来的には家を建てるのも、パンを焼く器具を用意するのも容易ではない(用意するのも容易ではない)んだけど、無機物であれば「エカキ」は精製できるから、それで文化的生活が成り立ってるような感じ。でもスランプ入るとブツが上がってこないから大変。
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