アカネ
「始まりました! トクラジ~特別市民相談室ラジオ~のお時間です! こちらは特別市民相談室の活動を紹介したり、相談員への質問や相談にお答えしたりするラジオになります。記念すべき初回のパーソナリティーは私、アカネと」
細流
「芹川細流でお送りします。」
二人
「よろしくお願いしまーす」
アカネ
「というわけでついに始まりましたけれども」
細流
「ええ。」
アカネ
「なんで始まったんですか? これ」
細流
「そこから説明する……? 一言で言えば上の思いつき、よ」
アカネ
「台本とか何も無いんですね」
細流
「思いつきだけ押しつけてあとは下に任せる、悪い例の見本みたいなやつね」
アカネ
「佐保さんの提案でしたっけ」
細流
「そう。先日のカーミラの事件で、『町』の人達にも避難とか色々迷惑をかけたりして、トクシに対するクレームが結構来たらしいわ。それで、改めてトクシの活動とは何なのかを紹介して、トクシのPRにつなげたいという狙いがあるそうよ」
アカネ
「それを全部ここで言ってしまっていいんですか……?」
細流
「細かいことは気にしない。さあ、気を取り直して続けましょう」
アカネ
「あ、はい。えっと、それではまず自己紹介から始めましょう。改めまして、アカネといいます。特別市民相談室の補助員として相談員の皆さんのお仕事のお手伝いとかをしています! 中学1年生です! 私自身、吸血鬼型グレーゴルでして……先日はお騒がせしてすみませんでした」
細流
「特別市民相談室相談員の芹川|細流セセラギです。本職は製薬会社の研究員としてグレーゴル用の薬を研究開発しています。」
アカネ
「ではまず特別市民相談室について、ご存知の方もいるかもしれませんが、まずは紹介しようと思います。
我々特別市民相談室は、人間と特別市民グレーゴルがこの「町」で共生していくための相談に乗ったりトラブルを仲裁したり、時にはグレーゴルを保護したりと、グレーゴルに関するあらゆる相談事に応じる部署のことです。」
細流
「そしてグレーゴルというのは、身体がヒト以外の動物や植物、空想の世界の生き物などに変質した人間の総称ね。かつては人外病という病気とされていたけれど、今では一般の人間と同じ一市民として共生していくために、実験都市として特別指定独立自治体が置かれるようになった。それがこの『町』であり、特別市民相談室――通称トクシができた理由ね」
アカネ
「ちなみにこの『町』みたいにグレーゴルと人間が一緒に暮らしているところって、どれくらいあるんですか?」
細流
「行政区として整備されているのは国内ではこの『町』一つだけで、世界的にも一部の先進国にしか置かれていないわ。そもそもグレーゴルはこれまで人間社会から排除され、迫害されてきた歴史があるから、差別的に扱われているところはいくらでもあるし、そもそも法律上「人間」とは扱われていない国もいくつもある。だから、余り知られてはいないけれど、ある調査によると一つの都市に対して1人の割合でグレーゴルが暮らしているという結果が出たこともあるそうよ。」
アカネ
「それじゃあ、この『町』以外にも探せばグレーゴルと会えるかもしれないって事ですね」
細流
「そうね。ただし人外グレーゴルと一言で言ってもその症状は多岐にわたって、見た目だけでは判断できないことも多いから、そう簡単には分からないと思うけれど。そもそもこの『町』以外でグレーゴルがグレーゴルとして暮らしていることはほとんど稀で、大抵が一般人として生活しているから」
アカネ
「自分が自分らしく生きられないって、なんだか寂しいですね」
細流
「それは人間であっても見た目や生まれた土地、思想、信じる宗教、価値観、性的指向などあらゆる要素で差別されたりして自分を偽って暮らしている人がいるわけだから、難しい問題だとしか今は言うことができないけれど」
アカネ
「それでも、その人がその人らしく生きていけるように、お手伝いするのがトクシのお仕事なんですよね!」
細流
「うまくまとめられたわね」
アカネ
「えへへ」
細流
「ただ先日のカーミラの件のように、人間としての理性を失い、完全に人外となってしまったものはたとえ『町』であっても人間扱いすることはできない――それは私達が絶対に守らないといけない一線なのよ。もし住人に危害を加えられるようなことがあれば、排除することもいとわない。」
アカネ
「グレーゴルが完全に人外化してしまうことって、よくあるんですか?」
細流
「そうね。結局はひとそれぞれという結論になってしまうのだけれど、グレーゴルの人外化というのは進行性で、はじめは身体の一部だけが人外だったのが、どんどんその範囲が広がっていって最後には全身が人外となってしまう。だから生まれてすぐは一般人と同じだと思われていたのが、成長してから実はグレーゴルだったと分かるというケースは、少なくないのよ。他にも、外見には全く表れずに、身体の内部が一部だけ人間にはないものがある、というパターンもあるわね。アカネの吸血鬼型も、ぱっと見には人間と何も変わらないでしょ?」
アカネ
「そういえば、そうですね。ちょっと歯が尖っているくらいですかね。日光に当たっても平気ですし」
細流
「症状が進行していくに従ってより人外らしくなっていくから、初期段階だとほとんど一般人と変わらなかったりするのよね。皮膚の一部に鱗があったり、羽毛が生えていたり、みたいな」
アカネ
「トクシにも色んなグレーゴルの人がいますよね」
細流
「キョンシー型、蛇型、人狼型、鳥型、他にもサキュバス型や人魚型もいるわね」
アカネ
「今日も何人かがこのブースの外から見ていてくれていますね」
細流
「MCは交代制でいくそうだから、彼女らが話す機会もあるでしょうね。次回があればだけど」
アカネ
「何人かがぶんぶん首を振ってますね」
細流
「せっかくだからこの後にでも喋らせましょうか。質問もいくつか届いているみたいだし」
アカネ
「そうそう! 今回トクラジを始めるに当たって、質問を募集したら、いくつか送ってくださっているんですよね! まだ始まってもいないのに、本当にありがとうございます!」
細流
「一旦休憩を挟んでから、いただいた質問に答えていこうと思います」
二人
「それではここでCMでーす」
特別市民相談室が登場するバトル百合小説「血潮に弾痕」はバトル百合小説アンソロジー『一蓮托生』に収録されています。
公式HPはこちら:http://battlelily.wp.xdomain.jp/
通販では2020/12/26(土)~2021/1/11(月/祝)開催のText-Revolutions Extra2にて頒布予定です
https://plag.me/p/textrevo_ex2/10657
plag.me
また、同人誌即売会では以下の2つのイベントに参加する予定とのことです。
文学フリマ京都2021年1月17日(日)
関西コミティア2021年1月17日(日)
文庫本472頁というバトル力の高い鈍器が1400円で入手できますよ!
「――負ける気がしない、ふたりなら」これは、 戦う少女/女性のバトル百合小説アンソロジー
最強&最高の6編でお送りするバトル百合小説アンソロジー『一蓮托生』をぜひどうぞ!!!
二人
「質問コーナー!」
アカネ
「このコーナーでは、特別市民相談室にお寄せいただいた質問にお答えします!」
細流
「なお質問はこちらの質問箱にて募集しています。
https://peing.net/ja/newface139
peing.net
特別市民相談室のこと以外や作品以外のことでもなんでも結構ですので、お気軽にどうぞ」
アカネ
「作品って!?」
細流
「説明文を先に読まなかったの? このラジオではネタバレもメタ発言もオッケーなのよ」
アカネ
「細流さんってそんなキャラでしたっけ?!」
細流
「そしてキャラ崩壊もね。そもそも崩壊って何。人は変化する生き物なのだから、たとえ180度違う意見が出たとしても、そう変化したと言うことでしかないじゃない」
アカネ
「そそそそれでは! 早速一つ目の質問に行きましょう!」
細流
「いきなり私達以外への質問が来たわね」
アカネ
「わんちゃんのるうさんですって……プクッ」
細流
「こらアカネ。笑っちゃ失礼でしょ……クス」
るう
「そういう細流さんも笑っているじゃないですか」
細流
「ああ、るう。もう出てきたの? もう少し後で呼ぼうと思っていたのに」
るう
「はい。御主人様に行ってこいと言われましたので」
細流
「あー、珠琉もいたのね。珍しい」
アカネ
「それでは早速、るうさん自己紹介からお願いします!」
るう
「はい。狼河ロウガるうと申します。私は”人狼”型グレーゴルでして、満月の夜になると狼人間に変化する身体をしています。」
アカネ
「はじめにカーミラに襲われた時、享子さんと一緒に助けてくれましたよね。あの時は本当にありがとうございました」
細流
「るうは道行さんと並んで、トクシでも屈指の武闘派だからね」
るう
「そんな滅相もない。あの時はたまたま満月だったから追い払うことができましたけど、私の力は月の満ち欠けに左右されてしまうので、いつでもああ上手くいくとは限りませんからね。カーミラの駆除作戦の時も万全ではなかったので道行さんに前衛をおまかせすることになってしまいましたし」
アカネ
「あの、私まえから気になっていたんですけれど、るうさんと珠琉さんってどういう関係なんですか? お二人は幼馴染みだって聞きましたけど、どうして『御主人様』って呼び方なんですか?」
るう
「はい。それは、私が玉簾タマスダレ珠琉タマル様専属の下僕だからです」
アカネ
「え、え、??」
細流
「ちょっと、中学生相手になんて話をしているのよ」
るう
「ですが事実ですので……」
細流
「だから、もう少し順序立てて説明しなさいよせめて。質問でも来ているんだから」
るう
「はあ……えっと、私と御主人様――珠琉様は小学生の時に出会ったいわゆる幼馴染みでした。うちの親が玉簾グループの下請けをしていた関係で知り合ったんです。ちょうど同い年だったということもあり、学校は別々でしたがとても仲良くしていました。
ですが、小学校卒業を間近に控えたある時、親の会社が倒産してしまって、借金で家も全て差し押さえられてしまい、夜逃げするしかなくなってしまいました。会社が倒産した原因は、玉簾グループ――つまり珠琉様の家の会社に切り捨てられたからでした。私はそれを、珠琉様に八つ当たりしてしまって、そのまま離れ離れになってしまったんです。
それから高校で私達は再会しましたが、別れる時に私が酷いことを言ってしまったことを、彼女はずっと忘れずにいました。学校の支配者だった彼女はクラスメートを使って私をいじめさせていましたが、ある時、彼女の地位が他の人に奪われてしまい、彼女自身が嫌がらせを受ける立場になってしまいました。けれど私は、自分が彼女にしてしまったことを償うためにずっと傍にいることを選んで、専属の使用人という名目で下僕になりました。彼女が私を許さない限り、私はずっと償い続けるために下僕として彼女と一緒にいられるんです。」
細流
「ちなみに玉簾グループは一時、不景気や不祥事が重なって経営危機に陥っていたけれど、珠琉が高校生ながらにして経営に参加するようになってから徐々に業績を回復させて、今ではトクシの重要なスポンサーにもなっているわ。」
アカネ
「な、なんだかすごい関係なんですね……。あの、ずっと許してもらえないって、辛くはないんですか? 悪いことをしたらごめんなさいって謝って、許してもらって、元通りの仲が良い関係に戻りたいって思わないですか?」
るう
「元々私達は、親同士が仕事のために引き合わされたんです。そして親同士の関係が悪くなったら、引き離されることになってしまった。私達を繋いでいたのはそんなものだったんです。でも今私達の間にあるのは罪と罰なんです。これは他の誰にも邪魔されたりしない、私達だけの繋がりです。罪がある限り彼女は私を罰し続けるし、私は彼女に償い続けることができるのですから。元通りの関係に戻らない方が良いことも、あるんですよ」
細流
「何度聞いてもあなた達の関係ってよく分からないわ」
るう
「そう言っていただける方が嬉しいですね」
細流
「こんな閉じた関係性しか築いていないから、本編ではほとんど登場する機会が無かったのよね」
るう
「私はともかく、御主人様の出番が全カットされてしまったことには断固異議を唱えたいです!」
アカネ
「一応、私を助けてくれた時に珠琉さんも応援隊の中にはいたって聞きましたけど……」
細流
「時速70キロに一般人がついて行けるわけがないじゃない」
るう
「私はそれが心残りです……!」
細流
「住民の避難誘導とか、研究所に出資していた独立行政法人の調査とか、裏では色々と動いていたんだけどね。」
アカネ
「あはは……あ、珠琉さんが何か書いてますね。えっと『私のことはいいから戻ってきなさい』だそうですよ。るうさん」
るう
「わんっ! ただいま参ります!」
細流
「やっぱり犬じゃない」
アカネ
「あっという間に行っちゃいましたね……昼間なのに尻尾が見えます」
細流
「他人には理解されない関係でも、本人同士がよければそれもありなのかもしれないわね」
アカネ
「そうですね。さて、次は享子さんの番になるかと思うんですけど……」
細流
「少し早いけど次回の予告をすると、彼女と澄ちゃんが次のメインパーソナリティなのよね」
アカネ
「なので、享子さんの紹介は次回に回させていただきたいと思います! お楽しみに!」
細流
「時間もそろそろ遅いので、あと一つだけ質問にお答えすることにしましょうか」
アカネ
「はい! それでは次の質問はこちらです!」
アカネ
「えっ、私の服、ですか?」
細流
「一気にピンポイントな質問が来たわね」
アカネ
「な、なんだか恥ずかしいような、そんなことを知ってもあまり面白みがないというか……」
細流
「あー、あんまり服とかにこだわりないものね、あなた」
アカネ
「『病院』にいた時は与えられた服ばかり着ていたので、ファッション? とか気にしたことなかったんですよね。動きやすければそれでいいや、みたいな感じで」
細流
「『町』にきてトクシの保護を受けてからも相談員の誰かが子どもの時に着ていた服のお下がりとかをとりあえず着せられていたのよね」
アカネ
「そうだったんですね。」
細流
「実は、こんなファンアートをいただいたりもしているんだけど……」
https://twitter.com/kinakowankoro/status/1330483671015460864?s=20
twitter.com
アカネ
「わー、細流さんがまさに研究者! って感じですね。」
細流
「うん。それよりあなたの服のことなんだけどね?」
アカネ
「動きやすそうでいいと思います! 血で汚れても目立たなさそうですし」
細流
「結局そういう基準なのね。たまに洋服屋に連れて行っても、店員さんに勧められたのを試着してすぐ『これでいいです』ってそのまま一式買ってばかりだし」
アカネ
「細流さんも似合っているって言ってくれるから、じゃあそれでいいかなーって思って。」
細流
「他にも色々あるんだから、比べてみたらいいのに」
アカネ
「たくさんあり過ぎて、こだわりだしても結局決められなくなっちゃうだけだと思うから、考えるだけ時間のむだかなって」
細流
「私も仕事を始めてからはあまり服に気を遣ってこなかったらか、その気持ちは分かるけれど、でもせっかく中学校に通っているんだから、友達に教えてもらったり、一緒に買いに行ったりしたらいいじゃない。イマドキの中学生らしく」
アカネ
「うーん。でもせっかくの休みの日くらい、細流さんと一緒にいたいから。クラスの子達は平日にいつも会ってるし」
細流
「そんなんでちゃんと友達作れてるの……?」
アカネ
「話をする子はクラスで何人かいますよ! 友達と呼べるかどうかは、よく分からないけれど……」
細流
「はあ……世の親御さんもこんな風に自分の子どもが学校でちゃんとできているか、心配で頭を悩ませているのかしらね。」
アカネ
「細流さんは私のお母さんじゃないでしょ?」
細流
「世間的にはそういうことになっているのよ、一応ね」
アカネ
「……私、細流さんと親子になりたかったわけじゃないんだけどな」
細流
「ん? 何か言った?」
アカネ
「ううん、なんでも無いです! えっと、というわけでこんな回答になってしまいましたが、これでよかったでしょうか?」
細流
「他にも紹介できなかった質問には次回以降に回答していきたいと思いますので、気長にお待ちくださいね」
アカネ
「質問はまだまだ募集していますので、お待ちしていまーす! 以上、質問コーナーでしたー!」
細流
「さて、室長の突発的な思いつきで始まったこのラジオも、3時間以上が過ぎてしまったわね」
アカネ
「大して話していないような気がしますが、時間が経つのは早いですね……」
細流
「文字数にしたら6800文字くらいね。どうしようもない遅筆だから」
アカネ
「またメタ発言!?」
細流
「最後に何か言い残したことはある?」
アカネ
「えっと、あまりうまく言えないんですけど、私は色んな人に助けられて、今こうしてこの場にいられます。それこそ本当に、命をかけて私を救ってくれた人もいて。だから、これからはその人達にもらった命を大切にして、精一杯生きていこうと思っています」
細流
「ラジオで話すようなことじゃないかもしれないけど、いい決意表明だったと思うわ。私も負けずに、前を向いていかないとね」
アカネ
「はい!」
細流
「さて、既に言ってしまったけれど、次回のパーソナリティは鈴音澄と道行享子の二人です」
アカネ
「次回っていつですか?」
細流
「さあ? 始まりが思いつきなら、それ以降もずっと思いつきよ」
アカネ
「コメントとか質問とか、反応をいただけるとやる気が湧いて近いうちに続くかもしれないです~。」
細流
「現金なものね」
アカネ
「そこは正直に言った方がいいかなって」
細流
「それじゃあ、まあ、ここまでだらだらと続けてきたけれど、終わりにしましょうか」
アカネ
「最後まで聞いてくださってありがとうございました!」
細流
「次回もよければのぞきに来てやってください」
二人
「「読了多謝!」」
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トクラジ~特別市民相談室ラジオ~
初公開日: 2020年12月13日
最終更新日: 2020年12月13日
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バトル百合小説アンソロジー『一蓮托生』(公式HP:http://battlelily.wp.xdomain.jp/)寄稿作「血潮に弾痕」に登場する組織「特別市民相談室」がお送りするテキストラジオです。
【注意】このラジオには以下の要素が含まれます。
・ネタバレ
・メタ発言
・キャラ崩壊
以上のことをご了承の上でお楽しみください。
「血潮に弾痕」続編(仮題)
バトル百合小説アンソロジー『一蓮托生』寄稿作「血潮に弾痕」の続編をちまちま書いていきます。前作はこち…
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