もうすぐ秋も終わり、冬を迎える。
「そろそろ肌寒いし、冬服でも買いに行きてぇな」「去年の服を下ろさないのか?」
「あるにはあるけど、生憎俺一人分の冬服しかねぇんだよ。去年は一人だったしな。今年はアンタがいるし、冬服も準備しておきたい」
そう言って、ダンテは苦笑した。
ああ・・・とバージルは納得する。確かに、この事務所で一緒に暮らすようになってから初めての冬を迎えるのだ。夏服と秋服は買ったが、まだ冬服を揃えていない。
服を買いに行く。
言葉にすれば何とも他愛のないものだが、ダンテやパティに誘われて大型ショッピングセンターに行き買い物をするという行動は、バージルにとって何もかもが刺激的だった。
広すぎる建物の中に密集された小型店舗は様々な商品や服が売られていて、どの店から行けば良いのやらまるで分からない。一人では絶対に来ないような店にでも、酷く楽しそうに連れまわされた時は目が回ってしまった。
特に服屋に連れて行かれた時は、ほぼマネキン人形と化していたが。
特に意味が分からないのが「バージルがユニ○ロ着てる!でもかっこいい!腰細いし足長いし嫌味かよ!?」とダンテに悔しがられたり嬉しそうに触られたりと、どう反応を返せば良いのか困ったものだが。
そして、気がつけばこちらを好奇心に満ちた顔で覗き込んできるギャラリーに気付いて辟易した。
特に顔を赤らめている女をちらほら見かけるのは何なのだ。
服を買って店を後にした後、不意にそう愚痴るとパティが吹き出した。
「だって、ダンテも言ってたけどあなたってかっこいいんだもの。そりゃあ誰だって振り向きたくなるわよ」
「・・・そうなのか?」
意外だ。バージルは驚いた。
「アンタって意外と自分の容姿は無頓着だよなぁ・・・」
そんな兄の反応にダンテは呆れながら言う。
「お前とて俺と同じ顔だろうが」
「そうだけど、アンタの方がちょっと背が高いし何つーか体の線が細いんだよ。何来たって似合う自覚はあるか?」
「そう言われてもな」
今までそう思ったことはないし、聞かれても困る。服は服だろうと、昔からファッションにそう関心はない。
ただし。
ふとバージルはダンテを頭から足先までじっと眺め回す。急に真面目な顔で見つめられ、ダンテは奇妙な恥じらいを覚えてむず痒くなる。
「な、何だよ。急に見つめてくるなよ」
「俺には散々かっこいいだの何だのと触っておいてよく言う」
「・・・急に見られると恥ずかしいんですが」
「お前の今の格好を見ているが・・・」
「あ、何?カッコいいとか言ってくれるのか?」
少し嬉しそうにダンテは笑う。
ダンテは今、普段の赤いロングコートを脱いで珍しく私服を着ていた。パティ曰く、ネイビーホワイトのカジュアルスーツに白のスウェットパーカーを組み合わせた、程よく抜け感のある仕上がりらしい。
抜け感とやらはよく分からないが、伸びた髪を後で括っているダンテは歳若く愛嬌があるように見えた。
「俺は可愛いと思うが」
そう素直に感想を述べると、ダンテは「へ?」と酷く間の抜けた声を上げた。
パティの顔に喜色満面な笑みが広がっていくのと同時に、ダンテはふるふると肩を震わせながら何かを必死に堪えているかのような赤ら顔で唇を噛み締めていた。
(終)