「ホントですってホント! 宇宙人に攫われて改造されかかったところを命からがら逃げてですね──」
「ああもういい。わかったから。お前の遅刻の言い訳など聞くだけ時間の無駄だ。さっさと業務にとりかかれ」
「部長ー! ホントなんですってばー!」
 始業時間すぐのことだ。朝会も終わり皆が慌ただしく動いている中、もはやこれまた朝会と同じ頻度で行なわれる朝の寸劇。
 鋼の事業部長と、それに追いすがる新人の遅刻魔の対決はいつも遅刻魔の敗北に終わる。まあ遅刻している時点で敗北しているようなものだが。
 いつもどおりリングの上で這いつくばるボクサーの姿勢をしばらく取っていた遅刻魔が諦めたように立ち上がる。フラフラとした足取りは頼りなく、本当にどこぞの仮面をつけたバイク乗りのように改造されかかったところを必死で逃げてきたのかもしれない──なんてことは全然思わない。
 律儀にも朝の挨拶をした遅刻魔が隣の座席に座るのを見届け、その肩に手を置く。
「ねえ君、今年何回目の遅刻かわかってるかい?」
 もはやここまでくると治りようがないと半ば諦めつつも、威圧感とともに声をかけることは忘れない。
「す、すみませんリーダー」
「ごめんですんだら警察はいらねえよって、定番のセリフを吐きたいところだけど、君のその遅刻癖と妄言癖は病気レベルだからね。もはや遅刻を見越して朝会を設定しているわけなんだ。つまりそう、これから」
 顔を青くしている遅刻魔の首根っこを掴み、所定の位置へと導く。
 礼儀正しく、素直で、仕事では下手に隠し事をしないいいやつではあるが、ここばっかりはどうも──と、心の中で肩を落とす。
「いやだからホントなんですってば! 部長もわかってるはずなのになんでか」
「そのバリエーションには感心するけどね。えーっとなんだっけ? 先週は突如あらわれた魔王と戦ってとか言って──」
 瞬間、床が大きく揺れた。オフィスの磨き上げられた窓の外には、昔映画で見たような巨大なうろこ肌。大きな口に見合う牙。目がこちらを向いて、皆が何もわからぬまま立ち尽くす中動いた者がいた。
「吾川。就業時間中だが残業だ」
 鋼の事業部長がモニターから目を離さず、親指でくいと外を指す。元気よく飛び出したのは手元にいたはずの遅刻魔だった。
「特別手当もお願いします!!」
「働き次第だな」
 気付けば遅刻魔以外の皆まで、いつも着ているスーツやらTシャツやらではなくやけにごつい衣服を身に纏っていた。街中を歩けるようなファッションをしているのは、事業部長を除けば私ただひとり。
「……おや……?」
 知らぬ間にとんでもないところに就職していたようである。
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即興小説15分
お題:信用のない言い訳
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【書く前】
信用のない言い訳ってことは普段から息を吸うように嘘を吐いていると思われている奴の話で、荒唐無稽な話なんだけど全部実は本当の話とか
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【書いた後】
最後10行くらいは15分越えちゃった。これは現代異能に入るんだろうか
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【即興】世界を救ってきたので遅刻しました 2020-10-20
初公開日: 2020年10月20日
最終更新日: 2020年10月20日
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