◇sideコネシマ
…最近、誰とは言わないが仲間の1人が可笑しい。
普段からぼぉっとしていて危なっかしい所があるのだけれど、それだとしても食事を載せたトレーをひっくり返し掛けたり、後ろに立っている人物の気配に気付かなかったり、書類を疎かにして何処かに出掛けたり…
明らかに不信点があったので、少し鎌をかけて見ることにした。
「なぁ、エーミール?お前最近様子が可笑しくないけ?」
「…あぁ、コネシマさんですか!大丈夫ですよ?気の所為じゃないですか?」
ふにゃりとした気の抜ける笑顔。
いつも通りに見せているつもりだろうか。
その目が、鋭く俺を睨み付けているというのに…
恐らく無自覚であると結論付け、どうにかしようと考えたがある1つの事実に気付いてほくそ笑んだ。
…成程。
お前がそう出るのならば、俺は手出しはしない。
ニコニコと笑っているエーミールの肩を叩き、耳元に顔を寄せ囁いた。
「……───────、─────。」
「分かってますよ。」
くすくすと楽しそうに笑うエーミールの背中を見送り、ポケットから掠めとったZIPPOをお手玉でもする様に宙に投げてキャッチする。
はぁ…こういう所が詰めが甘いだけれど…
まぁ、きっとアイツのことだ。
1人でも上手くやって帰って来るだろう。
恐らく今頃、ZIPPOが無いと自室出慌てているであろう奴から逃げる為に訓練場へと向かった。
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◆sideゾム
最近エミさんの様子が可笑しいことに気付いた。
何時もは出ないはずの訓練に顔を出して俺らの動きを逐一見て、記録している。
理由を聞けば
「これからの戦闘スタイルの研究や改善に役立つと思って……」
と至極真っ当な台詞を並べるものだから最初は納得したのだけれど、そのデータを俺ら以外にも見せている様子なのだ。
それも、この軍の幹部や兵士じゃない誰かに。
ロボロから聞いた。
エミさんのパソコンに足音が付いていて、それは迷うこと無く俺らの訓練の様子が映し出されている映像データに向かっていた、と。
最初からその情報を狙っていたのだとすれば、探す為にもう少し足跡が付くはずだ。
それなのに迷うことなく真っ直ぐ向かっているとなれば、エミさんが予め仕舞っている場所を教えて、恰もハッキングされたかのように見せかけているのではないか、と。
ほぼ、いや、それは完全に裏切りに相当する行為。
俺とロボロは生唾を飲み込んで、それでも信じたくなかった。
 「……もうちょっと、待ってみぃひん?俺もまだ調べきれてないし…」
そう言って何時もは俺ら幹部には外している面を付けたロボロは、顔を見せたくない、と俺を部屋から追い出した。
ロボロも、分かっているのだ。
もうエミさんが向こう側に着いてしまっている事なんて。
それでも、それでも!
信じたくなかった…!
ずっと一緒にやってきた仲間で、グルッペンに認められた奴ら同士仲良くやって来て……
2人でコンビを組んで
『合わせて4流や!』
なんて笑いあっていた頃が懐かしい。
歩く図書館、爆弾魔、教授、ボマーミール。
様々な矛盾している渾名を付けられたエミさんは、怒りながらもそれでも笑顔で。
それなのに、なんで、どうして…
「俺らを裏切ったんや……エミさんっ…!」
悲しくて、悲しくて。
無性に腹が立って壁に八つ当たりした。
もう何もする気が起きなくて、近くの窓からぼぉっと外を眺める。
青い絵の具に白い絵の具を垂らして、ぐちゃぐちゃに掻き混ぜた今の俺の気持ちみたいな空模様。
ゆったりと流れていく雲に、時間の流れが遅く感じられた。
ふと、下を向けば、見覚えのある薄茶色。
フラフラとした足取りで何処かに向かっている様子だった。
そのまま目線だけを先に進めれば、敵対国の軍服に身を包んだ連中が、敵対国のエムブレムの付いた車の周りに立っていた。
此処が国内だという事も忘れ、唖然としてその光景を眺めていた。
眺める事しか出来なかった。
何故か、身体は動かなかった。
エミさんは敵対国の車に乗り込んで、そして、俺の視界から姿を消した。
「……目を覚まさせてやる。」
腹の底からふつふつと湧き上がるこの怒り。
発散出来るまで絶対に許さないからな。
覚悟してろよ…エーミール。
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◇sideエーミール
ガタガタと舗装もいい加減な道路を進み、車内で揺られがら手に持っている書類を握り締める。
先に車から降りた兵士が扉を開けてくれたので、お礼を言って車から降りた。
恭しくお辞儀をした奴に通されて、向かう道はもう何度も通った道程で。
重々しい、無駄な装飾ばかりが施された扉が開かれて、その先でこれまた華美な装飾が施された純金の椅子にふんぞり返って座る主人。
「只今帰りました。エーミールです。」
「ご苦労…さて、その書類を渡せ。」
「承知しました……」
でっぷりと太った指が伸びて、私の手から書類をかっさらっていく。
さて…ここからが本番だ。
随分と主人は私を信用してくれたみたいだ。
兵士や見張り、護衛も居ない不用心な彼に、用心を教えてあげよう。
「所で、こんな言葉を知っていますか?」
「…何だ。」
そう問えば、パラパラと書類を捲っていた手を止めて、低脳はコチラを見てくる。
笑みを形作り、ゆっくりと口を開いて喉を震わし、その言葉を音にした。
「『洗脳』というのですけれども。」
俺の言葉にぴく、と肩を揺らした主人は「なんのつもりだ」とコチラを睨みつけてきた。
まだ授業は始まってすら居ないのに、血気盛んなのは困り物だ。
まぁ落ち着いてください、とジェスチャーと一緒に宥めて、そしてまた口を開いた。
「洗脳とは主に、暴力的な行為や言葉によって相手の精神的な部分を崩壊させると同時にら自分の思い通りに相手を操る事です。」
マインドコントロールと殆ど同じですね。
と言って俺は笑っているのに、主人は益々不機嫌になっていく。
そんな顔しないでくださいよ……
「死に顔がその顔は、嫌でしょう?」
袖口に忍ばせておいた毒針を投げ、主人の首に刺した。
鬱さんの知り合いである科学者特性の毒薬なので、(本人曰く「これならアフリカゾウもサイも1発で死ぬよ!」らしい。)ビクビクと痙攣する暇も、吐瀉物を出す暇もなく、主人…いや、敵は床に沈んで口から泡を吹き出していた。
「お生憎様ですが、私、洗脳されるのは1人と決めてるんです。」
すいません、と謝ったがもう本人は故人だ。
さて、私に新しい自己をくれた彼の元に帰ろうではないか。
『……真実を言うのは、俺だけやで。』
そう言う彼の声の、なんと甘美な事か。
敵を見る絶対零度の眼差しも、同じように見えて優しさに溢れている仲間への目線も。
犬のようだと揶揄される戦場での暴れ具合も、それとは反対に猫のようなしなやかな動きで敵の攻撃を避ける素早さも。
騙されて悔しがっている様も、誰にもバレないよう嘘を自然につく時も。
全て、その全てが美しく、そして私を惹き付けた。
早く帰ろう。
そして今日も魔法の言葉をかけてもらうのだ。
そろそろ、私が裏切ったと思い込んでいる彼らが乗り込んでくる事だろう。
ループタイの留め具に偽装していた、自作の爆弾を仕掛ける。
城から出てネクタイピンを押せば、先程まで居た部屋を中心にして中規模の爆発が怒っていた。
「ふむ……もう少し火力を上げてもいいかもしれません。」
そう呟いた後ろから、見知った気配が近付いてくるのを感じた。
そっ、と後ろを向けば、ビキビキと青筋を立てた黄緑色のフードを被った彼が、獰猛なギザ歯を見せて笑っていて。
ヒュッ、と喉が鳴る。
「エミさん?????????」
「なっ、なんですか?」
「めっっっっっっっちゃ焦ったんやからなっ!!」
そういう彼の目元には僅かながら煌めきが見えて。
末っ子気質のゾムさんには悪い事をしてしまったと少し反省した。
拗ねてしまったゾムさんから通信機が投げ渡され、慌ててそれを受け取る。
耳につければ、直ぐに小さな司令塔の声が聞こえてきた。
安堵の息を吐いた彼は、どうやら全てを調べ尽くして私の状況も把握したらしく、「もうややこしい事せんといてくれ……」と珍しく頼りない小さな声を出していた。
珍しさを感じながらも謝れば、そういえば、とロボロさんが声を出した。
「エミさん何で洗脳効かんかったん?」
「あぁ…私、洗脳予約済なんで。」
笑顔で言い切れば、暫しの沈黙の後、ようやっと声を出したロボロさんから
「……うわ、きも…」
との言葉を頂いた。
「誰がきもいや誰がぁ!」
と言い返す。
なんだか帰ってきた、そんな感じがした。
晴天の空を見上げて、そして彼を思い出してほくそ笑んだ。
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◆Noside
「すみません…洗脳されるのは1人と決めてるんです。」
「洗脳予約済なので……」
今日もそう笑顔で言い続ける彼は、自分が狂ってしまっていると自覚しているだろう。
自覚しておりながら尚、その男に付き従い続ける理由は何か。
それは、彼しか分からない。
「真実を言うのは俺だけやで。」
「エミさん」
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向き
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久しぶりに書くよ。
初公開日: 2020年09月23日
最終更新日: 2020年09月23日
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コメント
久しぶりに書くよ。
ワールド組だよ。
わぁい。