※フリスクちゃんはほとんど出てこない
ハートありがとうございます!
【短編】fellメタフリ
「────お前ぇええええ! 一体何をしているんだこの性犯罪者────ッ!」
 ニューホーム中に響き渡らんばかりの怒号。静かな町の中に突如として湧き上がった大声に驚いたボクは「ひっ……!?」と小さく悲鳴を上げながら声の方向を振り返った。
 ────瞬間、ボクの胸元に炸裂するラリアット。防ぐことも避けることもできなかったボクはその衝撃に呑まれ、勢いそのままに背中から地面に叩きつけられた。
 一体何が起こったのか、どうしてこうなったのか。何もかもわけが分からないままなんとか起き上がると、そこにあったのはいつもの風景。アンダインが握り固めた拳を震わせ、こめかみに青筋を浮かべながらそこに立っていた。今日は黒い鎧を着ているので、プライベートではなく仕事中らしい。
「い、いきなり何……? どうしたの……?」
 ここ最近やたらとアンダインに怒られることが多いボクだけど、最初からこんなに怒られるのは初めてだ。大抵は町中でたまたま顔を合わせて、いくらか会話をしていると突然怒り出す、という展開が多かったから。
「何、どうした、はこっちの台詞だ! お前は一体何をしている!?」
「待って待って待って! とりあえず槍はしまって!」
 繰り出される赤い槍。切っ先を白羽取りで止め、ひとまず落ち着かせようと必死に呼びかける。
 怒りっぱなしなアンダインだけど、ボクが怒られる要素がどこにあるのか。さっき仕事が終わって、帰り道に買い物のためお店に入ろうとしていただけなのに……
「その! 店が! 問題なんだ!」
 アンダインはなおも吠える。なんとか槍を振り払って立ち上がったボクにしっかりと見せつけるように、そのお店の看板を指差した。
「────どうしてお前が婦人用下着の店に入ろうとしているんだ!」
「え? アンダイン、今日が何の日か知らないの?」
 あたかもボクがおかしいような言い方で責めてくるアンダインだけど、ボクからしてみればそれはただの物知らず。でもまあ、地上の人間の文化だからアンダインが知らなくても当然といえば当然かな?
 無知は罪って言葉もあるけど、事情を話せばきっと分かってくれるはずだから今回は教えてあげよう。ボクってばとっても親切!
「今日はね、『メンズバレンタインデー』っていう日なんだよ」
「めんずばれんたいん……?」
 やはり聞き覚えのない言葉だったようで、首を捻るアンダイン。
 ただの『バレンタイン』だったら地底でも知っている者は多い。女の子が意中の男の子にチョコレートを渡して想いを告白する日だ。それに『メンズ』という単語が付くということは、男の子が女の子に告白する日だと察することくらいはできるはず。
 そのメンズバレンタインデーというのが、今日、九月十四日なのだ。
「それならチョコを用意するべきじゃないのか……何故下着店に……!?」
 アンダインの猜疑の目は冷めない。射殺さんばかりの視線はとても恐ろしいけど、ボクだって別に邪な心があってこんな所に来たわけじゃないんだから堂々としていよう。
「人間の『れきししょ』で見たんだ。バレンタインはチョコレートを渡す日だけど、メンズバレンタインは男性が女性に下着をプレゼントする日なんだって」
「!?」
 アンダインが絶句した。うん、最初はそのリアクションでもおかしくはないと思う。ボクもれきししょで初めてその文面を読んだ時は思わず紙面を二度見したから。
「バレンタインデーはチョコレートを渡す日」というのは、どこかのチョコレートメーカーが経営戦略として打ち出したものらしい。そして今回のメンズバレンタインもそれと同じ、下着のメーカーが考え出して……バレンタインと違って全然流行らなかったんだとか。
 ボクもそう思った。正直、ボク一人で婦人用下着店に入るのはとても勇気が要る。けどそこまでしてでもボクはここで下着を手に入れなければならなかった。
「あのね……実は、誰にも言ったことがなかったんだけど……」
 喉の奥から声を絞り出すボク。
 今回このお店を訪れた理由を話すには、前提としてボクのヒミツを告白する必要がある。これまでの話の流れで分かるだろうけど、ボクの意中の相手についての話だ。
 アルフィーにも言ったことがない。正真正銘、初めての告白。
「実は────」
「────実は、ボク、フリスクちゃんのことが好きなんだッ!」
「知ってた」
「え!?」
 はあー、と深く長い溜息と共に吐き出されたアンダインの返答。ソウルが爆発してしまいそうなくらい緊張しながら勇気を振り絞ったのに、まさか、知ってた……だって……?
「むしろ好きでもないのにあれだけストーカー行為してたんだったら気味が悪いわ!」
「ちょ……ちょっと、何回も言ってるけどボクはストーカーじゃないってば!」
「自覚がないだけタチが悪い!」
 言い合いの最中、がつんと一発殴られた。口より先に手を出すのやめてったら!
「……でも、ボク、まだフリスクちゃんにちゃんと言葉で「好き」って言う勇気が、まだ出ないんだ」
 話を戻す。苦虫を噛み潰したような顔のアンダインにどうにか納得してもらおうと、ボクは胸中を告白した。
「だから今日、フリスクちゃんに下着をプレゼントして……もしもフリスクちゃんがメンズバレンタインのことを知ってたら言葉にしなくてもボクの想いが伝わるし、知らなかったら知らなかったでプレゼントを喜んでくれるだけだから、悪い結果にはならないんじゃないかって……」
「いやいやいやいや家族でも恋人でもない男に突然下着をプレゼントされて喜ぶ女はいないと思うぞ」
「そう、そこがボクの唯一の懸念なんだ!」
「唯一か!? 他にも色々と懸念する場所はあるだろ!」
【10分ほど休憩します】21:40
【戻りました】21:51
 これは下着に限らず、プレゼントを贈る者全てが直面する問題だろう。「果たしてこのプレゼントを、贈る相手が喜んでくれるのか?」という点だ。
 テレビや舞台の演出で女性らしい服装をしたことはあるけど、それは上辺だけ。さすがのボクでも女性用下着なんて身に付けたことはないし碌に障ったこともない。アルフィーが脱ぎ散らかしていた服を拾って洗濯する時くらいだ。
「お前、アルっちの下着に触っ……!?」
「────そうだ! ねぇアンダイン、ボク、とっても良いことを思いついたよ!」
 今のボクの閃きをイラストにするなら頭の上にピコンと電球が浮かんだ状態。ナイスアイディアが降ってきて、ボクはアンダインの手を取った。反射的に振り払おうとするアンダインだけど、逃げられてはかなわないので絶対にその手は離さない。
「キミ、フリスクちゃんと何度かお泊り会をしたことがあるんだろう!? ということはフリスクちゃんが普段付けている下着もキミは見ているはずだし、彼女の好みも下着のサイズも知っているはずだ! それならボクと一緒にプレゼントする下着を選んではくれないかい!?」
「……………」
 今の今まで騒ぎ立てていたのに、突如として沈黙するアンダイン。無言、ということは肯定だろうか。まったく頼もしい、まさかこんなところで旧知の仲の女の子と会って、意中の相手へのプレゼント選びにアドバイスを貰えるなんて!
 フリスクちゃんの喜ぶ顔が目に浮かぶ。それにプレゼントした下着を気に入ってくれたら、ボクと遊びに行く時にはほぼ間違いなくその下着を身に付けて来てくれるってことでしょ!? ボクのプレゼントがあの子の大事な部分を守ってあげられるんだと思うと、これほど嬉しいことはないよね!
 そうと決まれば早速行こうと、掴んだその手をぐいぐい引っ張る。────しかし。
「……あれ? アンダイン?」
 まるで銅像のように動かない。無言で俯いて硬直したままだ。
 自慢ではないけど、ボクの腕力はとても強い。地底世界で五本の指に入るといってもいいだろう。そんなボクがわりと本気で引っ張ったのだから、少しよろけるくらいのことはあってもいいはずなのに……アンダイン、一体どうしてしまったんだろう?
 不思議に思い、もう一度「ねぇ、アンダイン?」と返事のない彼女の名前を呼ぶ。────名前を呼び終えるのと、ほぼ同時。
「────今日という今日は殺してやる! このロリコンのスクラップが────ッ!!」
 ぐい、と逆に手を引っ張られたかと思うと、刹那のうちに天地が引っ繰り返る。上下が逆さまになって何が何だか分からなくなり────あ、これ、背負い投げされてるんだな、と気付いた瞬間には脳天から舗装されている固い地面に叩き落とされていた。
 頭から足の先までを貫く衝撃。地面に追突した瞬間、目の前が真っ暗になる。────頭が地面にめり込んでいた、と聞くのは、気を失ったボクがアルフィーのラボで目覚めた時。
 そしてボクの頭を開いて人間でいう脳にあたる部分を改造しようとしていたアルフィーとそれを必死で止めるフリスクちゃんの姿を見るのも、また後程の話である。
【書き終わりました。しばらく推敲タイムになります】22:11
【推敲終了したので閉めます。お越し下さりありがとうございました!】22:18
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fellメタフリ短編執筆
初公開日: 2020年09月14日
最終更新日: 2020年09月14日
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コメント
Twitterでシリーズ化しているストーカーfell㌧シリーズ第四弾
fell㌧が相変わらず気持ち悪いです
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現パロchi夢バデ山とキス部屋(完!)
全てを変える───。(もしよかったら、チャット欄で話しかけてみてね!)
ぱな