石タイルの美しかった大通りは段々と老朽化し、舗装すらされていないところも目立つようになっていく。下へ下へと向かうほど陽樹の光は届かなくなり、ドラム缶での焚き火をする細道もチラホラ見られる。
すると巡回中の兵二名と出会い、待った待ったと止められた。
「あんた、この辺りは乱暴な魚人が多い。人間を良く思わない輩もいるから近づかない方が良いよ。海賊…じゃないな。」
「海兵をしています。」
海兵か、と魚人達は案外普通の反応を示す。話を聞くに、どうやら彼らはそこまで熱心に地上を目指そうとは思わないタイプらしい。確かに憧れはあるが今に不満もないし…と政治に興味のない人間と似たような感じだ。
「珍しいなぁ。海兵か。」
「皆さんと変わりませんよ。上に振り回されて使われる身分です。私は決められた地に送られるだけ。」
「あ〜分かる分かる。こっちでもよ、海上進出の決定されたら行くのは俺らよ。」
そりゃあ王妃は凄かったが…と顔を見合せた二人は、気まずそうにハインへと視線を戻す。
「…分かりますよ。偉業だけれど…昔とは違う。」
「できるなら太陽を見たいが…それより暮らしがあるし。」
ここだってこうだろ?と薄暗い下層から遠い上層を見て彼らは言った。
ーーー以下、新ーーー
薄暗い路地の真ん中で、魚人の兵士二人と話を続けるハインは〈地上も海底も大差なし〉と感じていた。
大差なしと言っても平等的な意味ではない。平等なんて物はこの世には存在しないのだから、求めたところで手に入るわけがない。人間的価値観、魚人的価値観、もしくは種族関係なく個人的価値観がwin-winとなった時に平等だと言えるだけだ。
平等ではないのであれば、一体何が何が大差なしなのか?
それは社会に対する思いだろう。国民として、住人として、一人の人として、地上も地底もそんなに変わらない。国に賛成する者もいる。国に無関心な者もいる。自分の生活で手一杯な者も、疎外感を感じている者も、それを知らずに日々を満喫する者もいる。
相槌をうちながら話を聞き続けるハインは、類似点をひょいひょいと拾い集めて脳裏にメモする。彼らの話は割と共感できるし、想像もできることばかりだった。海軍と言う組織の一員であるハインにとって、兵である彼らの言葉には聞き覚えがあるものも多い。中将以下の声や、新兵達の思いに似ていたのだ。
「天竜人から同意書か何かを貰ってさ、まだ保管されているんだが…。」
「どなたが同意書を取りに?」
「オトヒメ様だよ。あの人は良い人だった。よく街に降りて来て下さってな。」
海軍の記録にはそんな物ないんだが?と不審に感じたが、何となく〈記録されていない〉意味が分かってしまったので黙ることにした。
オトヒメの名を聞いたハインは、また一つ脳裏に覚書を追加する。本人を見たことがないので確信はできないが、彼女の言っていることは概ね正しかった。
一部の人間しか知らずして、性質を決めつけるのは愚かだろう。
そもそも魚人島を訪れる人間はほぼ全員が海賊だ。海賊以外にはいないと断言できる程に海賊率が多い。さらには海軍不在の観光地ともなれば羽目が外れる。海賊の中には、シャボンディで人魚の値段を知ってしまった者もいる。魚人に嫌悪感を抱く者もいる。逆に白ひげ海賊団のように、無法者だからこそ理解している者もいる。
十人十色。一括りにはできないのだが、魚人島を訪れる人間の母数が海賊に占められている環境下、他の人間を見る機会は少なかろう。
だからオトヒメは呼びかけ続けた。
怖い人間ばかりではないと。
「そうじゃないんだよなぁ。」
「?」
「地上に出てどうする?周りには守ってくれるものがないんだぞ?深海だからこれで済んでいるのに、態々出る必要があるのか?」
太陽に憧れ、地上を夢見るのは構わない。魚人島の不遇な歴史を見れば…いや、見ずとも彼らには地上を歩く権利がある。権利と言うよりは当たり前のだが地上を楽園だとは思わない方がいい。新天地、挑戦の地、新たな歴史を始める地、
当たり前だが魚人島には隣国など存在しない。この海底のおかげで孤立もとい独立がほぼ確実に守られている環境だ。他国からの干渉や戦火に恐れる必要なく、自国のみに気を使っていけば良い。
だが、自国ですら彼らの言う通り〈ここだってこうだろ?〉の状況だ。これは王家の視界不足と、また彼らの発言力不足だ。地上で生きる身から言わせてもらえば、何故そうも大きくない自国すらまとめられない?である。自治すら影があるのに、なぜ地上を目指す?と。
まず自国。
地上はその次だろう。
「俺らは兵に就けたからある程度だが、ここに住む家族達は難しいんだ。仕送りができるからマシな方ではあるけどな。」
「生まれの地区が関係するのですか?」
「あ〜…その…。」
気になるなら仕事終わりにどうだ?と片方の兵が言う。
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地底のやつ
初公開日: 2020年08月28日
最終更新日: 2020年08月28日
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