パフェ、って、すっごくロックな食べ物だと思う。世間一般的には「カワイイ」に分類されるんだろうけど。作った人のこだわりだとか、そういうのが見て取れて、とても好きだ。人それぞれ、作る人の最良だと思う形があって、そういうのって、とてもロックな考えに近い。私は私。一人一つの、こだわり。……それを中学時代に話したら「かわいーとこあるじゃん」と言われてしまったので、この話はそれから誰にもしていない。カワイイ、と言われるのが嫌なんじゃなくて、何となく、自分の中の好きなもの、信念を、馬鹿にされた気分になったのだ。全然その相手に悪気がないのはわかっているし、パフェは何も悪くないんだけど。だからまあ、無難に今はパフェをみて「カワイイ」という。だって、たぶん、それが正解だ。そう思うことにした。
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隣でキラキラと目を輝かせて、初めてのパフェを見つめるヤオモモをカシャリ、写真に収めた。どうかしましたか、と問うヤオモモに、何でもないよ、と返す。
「それにしても耳郎さん!今日はありがとうございます。こんな素敵なところに連れてきてくださって……!」
「や、いいんだよ、ウチも忙しくて行けなかったし、ちょうど行きたいなって思ってたとこだから」
ロックテイストの店内は、まだ昼前とあって人影はまばらだった。本当はご飯もおいしいカフェなのだけれど……ここのメイン料理はパフェだ。自分の顔ほどもある。少し他とは違う大きさのパフェ。一番底のコーンフレーク、間にかかったチョコレートソース、それから生クリームとイチゴ、最後にどでかくソフトクリーム。その上からまたぱりぱりに冷えたチョコレートソースや、フルーツが乗っけられている、などなど。全部素材にこだわりがあって、他ではちょっと見ない、独創的なパフェが売りのこのカフェの店主は、もちろんロックな人だ。小さいとき、精一杯の自分なりのロックでかっこいいを詰め込んだ服を着て、母親に連れられて恐る恐る店内に足を踏み入れた時、「きみ、かっこいいね!」と言われたのがうれしくて、それからパフェはロックだ、って思い始めたのかもしれない。
「ヤオモモの口に合うかはわかんないけどさ」
「とんでもないですわ!私が連れて行ってほしいと頼みましたのよ!」
こんなにおいしそうで素敵なのに、口に合わないわけがありません!と、パフェスプーンを握りしめ、どこから食べようか迷っている姿を見て、少しほほえましくなった。ちなみにヤオモモはイチゴとチョコレートのパフェ、ウチはチョコミントのアイスがこれでもかと乗っかったパフェ。基本ここのパフェのサイズは大きくて、昔は一人で全部食べるのが夢だったなあ、とふと思った。今はこんなの、ぺろりと行けちゃうけれど。
てっぺんから崩すことにしたヤオモモが、スプーンをしっかり握りしめなおして、ソフトクリームにスプーンを差し込む。店内はそれほど熱くはないけれど、少し溶け出したのを見て、慌てているのが目に見えた。大きめにすくって、ぱくり、それを口に含む。瞬間、幸せそうな顔をするヤオモモを見て、連れてきてよかったな、と思う。負けじと自分もスプーンを手に取って、チョコミントのアイスをほおばる。あ、おいしい。変わらない味、って、難しそう。でもこれが、これを作った人のこだわりだ。新しいメニューももちろん増えていくけれど、変わらないものがあるって、すごいことだ。ウチだって、それなりに変わったし、でも、変わらないものだってある。
「パフェ、素晴らしいですわね……!」
「あ、ほんと?よかった」
「かわいらしい、というのもありますが、なんというか……それよりはロックな食べ物ですわね……!」
ヤオモモの言葉に、驚いてしまった。スプーンを取り落としそうになったのをすんでのところでこらえて、もくもくとパフェを頬張ってゆくヤオモモを見る。
「ロック、かあ」
「ええ、耳郎さんは、そう思いませんか?」
きちんとそれぞれにコンセプトがあって、芯が通っているのはとてもロックですわ、とヤオモモがイチゴを口に入れて、幸せそうに笑う。
「……そんなこと言ってくれたの、ヤオモモが初めてだよ」
「ええ!?そうなのですか!?てっきり皆さんそう思うものかと思っていましたわ……!」
今度はウチ以上にヤオモモが驚いて、こっちを見た。あんまり驚くものだから、少し笑ってしまった。
「ウチもさ、ロックだと思うよ、パフェのこと」
なんて答えようか、ものすごく迷ってそう言った。これが本心だ。確かにカワイイけれど、それだけじゃないのがパフェのいいところ。昔はしっかり言えなかったけれど、たぶん、ヤオモモや、クラスのメンバーの前ではそう言える。それは周囲が変わったのもあるだろうし、ウチが変わったからでもあるだろう。でも、心に秘めてるものはなにも変わってない。昔から変わらないこだわりのパフェのように。
「そうでしょうとも!耳郎さんが好きなものですもの」
素敵なものに出会わせてくださって、ありがとうございます、とヤオモモが言った。それがなんだか無性にうれしくて、どう答えたらいいかわからなくなる。
「……こっちこそ、ヤオモモと出会えてよかったよ」
パフェをロックだなんて直で表現してくれる人、たぶんほかにいないからさ。照れ隠しのように付け足して、チョコミントを掬い上げた。
(パフェとロック/じろーちゃんとヤオモモ)