風邪をひいてしまった。起きたら体がだるくて、頭も痛い。寒いから、と体温調節してみようと左側を使って温度を上げてみたら今度は熱が上がった。下げようと思って右側を使えば案の定体温が下がりすぎてしまう。個性の調整すらうまくいかなくなった体にイライラとした。どうしたらいいのだろう。風邪をひくなんて、本当に幼少期ぶりかもしれない。今日は偶然にも休日で、それはよかったと思う。たぶん、眠れば治る。病は気からというし。ただ、この何とも言えない心細さは、目を閉じても、消えてはくれない。
「あ、轟くん」
次に目が覚めた時、すぐそばによく見知った顔があった。心配そうにこちらをのぞき込んでいる。
「みどりや……?」
「うん、僕だよ、大丈夫?」
大丈夫だ、と言おうとして、せき込んでしまう。わあごめん!と緑谷が慌てて水を差しだしてきた。
「飲める?あ、スポーツドリンクのほうがいいのかな」
「のめる、わりい。つか、なんで……ここに」
「君が朝ごはん食べに降りてこないから、心配になって見に来たんだ」
そしたら真っ赤な顔で眠ってるからあわてたよ、と体を起こすのを手伝ってくれながら、緑谷が言った。
「いま飯田くんが相澤先生のところに行ってくれてる。たぶんリカバリーガールも来てくれるよ」
「……そうか、わるかったな」
「もし誰も来てくれなかったらどうするつもりだったのさ」
「……寝たら治る」
「そんなわけないだろ」
こういう時は周りを頼ってよ、と言いながら、緑谷が俺の枕にいつの間にか差し込まれていた氷枕を取り換えた。いったい何時間眠っていたのだろう。時計はあるけれど、頭がぼうっとしてよく見えなかった。
「いや、自己管理できてねえだけだ、って相澤先生は言うだろ」
「うーんそうかも、でもなってしまったものは仕方がないよ」
だから次は頼ってよ。風邪じゃなくても、ピンチの時は。緑谷がそう言いながら笑う。
さみしさは、いつの間にかなくなっていた。
(かぜっぴきさん/とどろきとみどりや)