四年半くらい前、この街は一度世界の終わりを迎えた。
アタシのお願いを神様はちゃんと聞き届けてくれたんだ。
前から目に入る神社とか祠とかドーソジン?とかにお願いしてたんだもん。神様仏様どうか一刻も早くこの世が終わりますように、って。一度、草ぼーぼーでろくに手入れもしてない小っちゃい神社で知り合った女のコが「なんで……?」ってきょとんとした顔で見てたけど、「数打ちゃ当たるっていうじゃん」って言ってやったら「そうなんだ」と全然納得してない顔で首を傾げてたね。けどあんな人気もない古い神社でひとり、学校帰りらしくランドセルを抱えてただじっとしてたような子だから、きっとあの子にもきっとフクザツなジジョーがあるのかもしれないけど。アタシよりは少しでもマシでありますように!!
とにかく、祈りが叶った結果、うるさいだけの弟もアタシのことなんてどうでもいい母さんも大嫌いな母さんの恋人も、建物の形すらしていないコーダンジュータクの成れの果ての瓦礫の下で、やっぱり人間の形もなくなった状態で、アタシの目の前からいなくなったんだ。
後になって、この街をしっちゃかめっちゃかにしたのは、近界民とかいう、異世界?からやってきた侵略者だということだけは知ることは出来た。何それ嘘、サイコーと思った。だってそんなのアベンジャーズだっけ?ハリウッドの映画か、弟が日曜の朝によく観ていたテレビの中の出来事みたいじゃないかって。
国と、ボーダーとかいうウルトラ警備隊気取りの連中からの支援とやらで、アタシは無事中学を卒業できたし、諦めてた高校に行くことも出来た。三門第一のセーラー服、着たかったんだ。
でも残念ながらそこに、あの日、アタシを助けてくれたヒーローの姿を見つけることは、三年の間には出来なかったんだけどね。
ふう、と美咲は指先に塗ったマニキュアに息を吹きかけながらぼやいた。
「やっぱりボーダーに入んなきゃダメかなあ」
「なあに、まだ『王子様探し』諦めてねーの?』
「王子様じゃないもん、ヒーローだしぃ!」
クラスメイトに揶揄され、美咲は頬をふくらませて抗議の声を上げた。
とうに授業は終わり、オレンジ色の柔らかい日差しに照らされた教室には、部活動もなく、生徒会やクラス委員の仕事もなく、かといって帰宅部を気取る気にもなれない者たちが、アディショナルタイムのような放課後を堪能していた。
「そんなにカッコイイ人だったの?」
そりゃあもう、と美咲は待ってましたとばかりにぱっと顔を輝かせた。
「きっとあの人だったらボーダーに入ってるんじゃないかなって。恋する女のカンよ」
「でもさ、そんなにカッコイイなら、雑誌とかテレビの取材とか受けてんじゃね? 嵐山隊みたいに」
「チャコ、嵐山隊のめっちゃ好きだもんね」
「だってサトケン良くない? 可愛いし、カッコいいし、その癖面白いし」
「わたしは時枝のほうがいいかなあ。あーゆーのイブシギンって言うんでしょ。隊長の片腕で、派手な働きはしないけど必要なところではちゃんとシゴトする感じで」
「美咲、見た目ちゃらちゃらしてるし、普段はすげえテキトーなのに、ああいうとこだけは一途な」