※現パロのマーロマ(どうせいしてる)
お題:そういうところも大嫌い
「あーあ……」
マーリンの嫌いなところ。
ひとつめ、ロクデナシなところ。
でもこれは、最近それほど気にならない。誤解されたいわけじゃないんだ、と言って、女の子のいる飲み会にはもうあまり行かないことにすると宣言したのは、同じ部屋に住み始めて少しした頃だった。
ふたつめ、だいたいなんでもそつなくこなすところ。
器用なんだと思う。いつもスマートに物事をすすめている。なにかができなくて困っているところなんて見たことがない。だから、自分がこんなに恋愛で苦労するなんて、と言っていたのは、付き合うことになるほんの少し前のこと。
みっつめ、それでいて大雑把なところ。
ロマニの前だけだよ、なんて甘言に騙されるとでも思ったか。
派手に散らばった食器だったものの欠片を前に、ロマニは立ち尽くした。
一人での食事を終えて、片付けようとキッチンに立ったところまではよかったものの、なにかかたいものに躓いて、食器を手放してしまったのだ。
茶碗はなんとか難を逃れたものの、家に二枚しかない白い丸皿がバラバラになってしまった。
「やっちゃった……」
躓いた右足の指も痛いが、目の前の悲惨な光景の前ではかわいいものだ。ロマニは大きくため息をつきながら、躓く原因となったものを振り返った。
マーリンの、大きなスーツケースだった。
ここに置いてあるのは知っていた。こんなところに置くなよと注意もした。けれどもマーリンは、あとで片付けるからと言って、そのままだ。
海外から今朝帰国したばかりで、荷物を置いてすぐに忙しなく出かけて行ったから、なにか重要な用事があるのなら仕方がないと思っていたが、もっときちんと注意をすればよかった、と今更ながらに反省する。
スーツケースと、粉々になった皿を前にしばらくぼんやりとしていたが、ロマニにも時間はなかった。今日はこのあと夜勤なのだ。まさか、皿を割って遅刻しました、なんて言えるわけもなく、慌てて食器だったものを片付け、袋にまとめて玄関に置いた。次の燃えないゴミの日は、明後日だ。
出かける前に念のため、とマーリンに連絡を入れた。皿を割ってしまったから、もしかしたらまだ破片が残っているかもしれない、注意してくれ、と。ついでに、スーツケースを片付けろと一言添えて。
同じお皿、まだ売ってるといいけど。そう思いながら、ロマニは仕事へ向かうのだった。
その日の仕事はこれといったトラブルもなく、ただただ平穏に時間が過ぎて行った。時間と心に余裕があると、ふと割った皿のことが脳裏に浮かんでしまう。よくないなあと思いながら、普段は触らないところまで念入りに掃除をしたものだから、同僚から不思議に思われた。
そうして翌日、帰宅は昼前だった。家の鍵はかかっていて、マーリンはまた出かけたのだと知る。彼もまた忙しい人だから、それ自体はさして珍しいことでもない。ロマニの夜勤が続くとなかなか会えないこともあって、そんなときは、たまに平日の昼間だろうが家にいるけれど。
シンとした部屋に入ってすぐ、見慣れない箱が置いてあるのが目についた。白くて、薄い箱だ。見慣れないけれど、どうしてかロマニにはその中身が手にとるようにわかる。白い丸皿。ロマニが割ってしまったものと同じものだった。
「早……」
思わず口からこぼれてしまったのは、昨日の今日で一体いつ買いに行ったのだという早さだったからだ。確かこのお皿は、電車で少し行ったターミナル駅にあるショップで買ったものだったはず。二人で買いに行ったから、よく覚えている。
箱にはメッセージカードが添えられていて、開くと、謝罪の言葉と、愛の言葉がすらすらと書かれていた。
「ほんとにこいつは……」
ロクデナシで、そつがなくて。
「そういうところも大嫌いなんだよ!」
今日の夕飯は、マーリンの好物を作るとするか!
おわり