残り時間は僅かだ。オレの勝負は時計の長い方の針が十二を指すまで終わらない。正味あと5分。
 滅多にこんな長時間ペンを持つことはなく、すでにこの一科目目でペンだこができつつある中指をさする。
 表、裏。ぺらぺらと紙をめくる音が教室に響く。
 先生は言っていた。できる問題から解けと。その教えの通りに最後の問題まで目を通した。
 う~ん、白い! 白いぞ解答用紙!
 時間はあるけど手が出ない。どうして今回証明問題ばっかりなんだろう。裏面の二問とも一行目だけ書いてあとはフェードアウト。完全に白旗を揚げているし、リングにタオルは投げ込まれているのに棄権することはできない。なんて過酷なんだテストってやつは。死に体であっても強制的に戦わせるとはなんという横暴。いっそのこと完全放棄して机に突っ伏したいところだけど、それをやると強制的に起こされるからこうしてかれこれ一時間ずっと考えるふりだけしている。
 きっと我が相棒の田中もそうだろうと思って斜め前の様子をちらっと見る。
 すごい真剣にペンを動かしていた。
 一瞬目を疑ったが、問題用紙のほうに滅茶苦茶書き込んでる。あれは気合いの入ったらくがきだ。
 よし。ひとりじゃない。戦線から脱落して放課後強制的に補習を受けるのはオレだけじゃない。
 鐘が鳴った。試合終了だ。解放された安堵の声が教室中に広がる。
「今回のテストどうだった?」
「すげえ簡単だったから後半ずっとらくがきしてたわ」
 オレは裏切りを知り天を仰いだ。
~~~~~
お題:限界を超えた計算
制限時間:15分
田中は数学得意で国語苦手タイプだったので、普通に問題解き終わって遊んどっただけだった
カット
Latest / 26:26
カットモードOFF
文字サイズ
向き
チャットコメント通知
【即興】裏切りに涙 2020-08-14
初公開日: 2020年08月14日
最終更新日: 2020年08月14日
ブックマーク
スキ!
コメント
即興小説
お題:限界を超えた計算
制限時間:15分