黒々とした分厚い雲に覆われた空からは、夕立のような強い雨が降り注いでいた。うるさいほどに強く窓を叩く雨粒は海軍本部の広い廊下に響き渡り、雷鳴はうねる荒波の砕ける音すらかき消した。
髪の先から垂れる雫を払いつつ、ハインとシスターは人気のない廊下を並んで歩く。海賊をガープとコビー達に任せ、雨から逃れるように本部内へと駆け戻った二人は、エニエス・ロビーへ行こうとしていたメコンを捉えた後に〈海軍諜報防諜局〉へと向かっていたのだ。
道中メコンはありったけの力を振り絞り脱出すると、これだから軍人は!と文句を叫んで研究所へ走って行った。最初からそうしろと言う話ではあるが、何せメコンは思いつきのままに動き回る。
「まず魚雷を終わらせろって、前々から言ってあるのですけど…。」
「聞き流されてると思うわよ。」
「今度は博士の顔に要件を書いてみましょうか。仕事を終わらせろって。」
まぁいい…とため息混じりにとある一室の扉を開ければ、そこは膨大な量の書類や海図、書籍に機械類が並んでいた。会議室だったのだろう大きな部屋には海兵達が動き回り、中央に広げられた地図に書き込みをしている。
「ここが情報局本部です。」
「お片付けはしてるのかしら?」
「あ、触らないでください。整頓した結果がこれなんですよ。」
積み上げられた本に手を伸ばしかけたシスターを止め、ハインは部屋の隅にある休憩スペースへと歩いていく。
情報局は今、後半海域の把握に手一杯なのだ。ましてや通常業務である前半海域の情報処理まで抱えている。これ以上仕事を増やすとやらかす可能性も出てくるので、遠くから見ているだけにした方が良い。
貴方はお手伝いしないの?と言うシスターの視線に首を振って答えたハインは、棚からタオルを二枚手に取った。
役割の違いだ。
彼ら本部局員は、支部や末部から送られてくる情報を整理して書類へと書き起す。それをハインへ上げて、今度はハインからの指示を送り返す。時に各自の判断で海域のサポートをすると言うわけだ。アラバスタのような状況下では、ハインをサポートしてくれる心強い者達である。
すると局員の一人が一枚の紙を手渡してくれた。
「…メコン博士からです。この波のせいで船も出せないし、海列車も止まってるから司法にいけないじゃないか、と。」
「あらあら。諦めてなかったのねあの子。」
ハインはポイッと紙を机の上に投げ捨てると、髪を解いて拭き始めた。しかしすぐに手を止めて立ち上がり、今度はハサミを手に戻って来る。
そして無言のまま、絡まった毛先をチョリキと切った。シスターは、その様子を見るなり慌ててハサミを取り上げる。
「女の子がハサミで髪を切るものじゃないわよ。」
「解けなかったので。先だけですよ。」
「ケアしてる?この前プレゼントに送ったでしょう?」
「本部にいませんでしたから、まだ封すら開けていません。子供達には感謝しているとお伝えください。」
まぁ毛先だけですからいいでしょうとシスターを宥めていれば、勢いよくドアが蹴り開けられる。タックルでもしたような勢いで転がり込んできたメコンを見た瞬間、ハインは眉間に皺を寄せて唸り声を発した。
「やっぱり鉄板二十五ミリ!!」
「魚雷は?探知法と回避法、対応策。」
「探知は心当たりあるんだがね、回避は軍艦だと難しい!対応策は一通り案が出揃った!選り取りみどりさぁ選んでくれたまえ!」
新たな茶封筒を投げ渡し、メコンは情報局をぐるりと見渡す。そして部屋中央にある海図に狙いを定めると、満面の笑みを崩さず駆け寄ろうとした。
その瞬間、ハインは自分の髪を綱のようにまとめて捻り、メコンの首に引っ掛ける。力の加減をすることなく締め上げると、背負う形で釣り上げた。逃がさないようにしっぽまで出して、拘束しての締め上げに流石のメコンも大人しくなる。
「…大丈夫ですよシスター。そのうち起きますから。廊下に置いとけば問題ありません。」
「慣れた動きだったわね。毛綱に使うから長くしてるのかしら?」
「隠し芸です。」
メコンを廊下に運び出したハインは、疲れた様子で椅子に座り直した。暫く無言で聞き耳を立てていれば、物音と共に文句の叫びが聞こえてくる。ふわりと蛾の目の風が流れ始め廊下を進み、逃げ帰るように走るメコンを追いかけ回していた。
港で言った通り、メコン博士は鉛中毒の治療薬を開発した。さらにはつい最近、とある菌の治療薬も開発している。
「菌?未知の?」
「ポリューション諸島という島の凍土から出てきた古代菌です。」
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変毒為薬
初公開日: 2020年08月13日
最終更新日: 2020年08月14日
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