そりゃあ僕だって、こんな男、好きで好きになったわけじゃないさ。ああ、はじめの"好きで"は自発的にという意味だよ。そもそもだ、思い出してみてくれ、僕とあれのファーストインプレッションはどうだった?最悪の一言に尽きるだろう。僕の心象的にも、僕がとった行動にしても、勿論あれの心象的にも、だ。聞けばおまえにも心配をかけていたようだが、今思い返すと流石の僕も肝が冷えるな。一歩間違えれば出場停止処分になっていたかもしれないのだから。まあ、昔のことはさておき、僕とあれの第一印象はとにかく最悪以外の何物でもなかった。そのはずなんだ。それがどういうわけか、おまえたちに敗北の辛酸を嘗めさせられてからというもの、あれはやたらと僕を構いたがる。まずはストバスで交流の契機をつくり、僕が実家への帰省に抵抗があるとどこからか嗅ぎつけた挙句、厚意のつもりか知らないが招き入れたマンションで甲斐甲斐しく世話を焼き、終いには胃袋から仕留めにかかる。まったく末恐ろしい奴だ。吊り橋効果も、あれにここまでてきめんに効くさまを見ると、馬鹿にできないなと実感したよ。ああ、話が逸れてしまったな。つまりだ。何が言いたいのかというと、僕はあれの手管にまんまと引っかかったというわけさ。惚れた方が負けとは言うが、先にこちらに惚れたあれに、惚れさせられた僕は何故か勝った気がしないんだ。僕があれに絆された時点で、負けてはいないが勝つこともなかったのかもしれないね。……すまない、どうも話がまとまらないな。とにかく、おまえが言うほど僕の男の趣味は良くないよ。なにせおまえが目にする相棒の姿と、僕がみている姿との間には少なからず齟齬が生じて………どうかしたのか?ああ、トイレに?そうは言っても、おまえ、20分ほど前に離席していただろう?せっかく表情はわかりづらいのに、嘘の内容はいまひとつ、詰めが甘いな。ジョッキの中身の減りも遅いじゃないか。おまえがつついた藪なのだから、出てきた蛇の相手くらいしてほしいな。……うん?蛇どころではない?はは、おまえは本当に、僕も見習いたいくらい冗談が上手いな、テツヤ。
やあ、黒子。飲んでるね。……ああ、まあ、飲まないとやってられないのは、愚弟につかまっていた光景を見て察したよ。すまないね、あいつは自覚無しに酔う上に、よったら酔ったでところ構わず絡みにいくから面倒なんだ。ああ、黒子の次は火神が標的か、気の毒なことだ。いや、むしろ彼にとっては僥倖かな?
お詫びと言ってはなんだが、黒子。ひとつおまえに忠告しておこうか。あいつの前では、あまりあいつの恋人としての火神を話題にあげない方がいい、酒が入る場では特にね。
ああ、それともう一つ。俺も小耳に挟んだ程度だが、たしか黒子はあいつに"兄弟で恋人の趣味が似ている"と言っただろう?
たしかに、おまえの光であり相棒であるという点では、彼らは酷似しているし、同じカテゴリに属するだろうね。でも、俺にとっての青峰と、僕にとっての火神は、立ち位置こそ似通っているがその性質はまったく真逆さ。これに関しては、各々に対する内面を抽象的に表す方が難しいな。わかりやすく具体例を出すと、衣食住はやはりいちばん違いが顕著に見られるだろうか。……それと、最後にもうひとつ。
三大欲求なんかも、彼らはそれぞれかなり異なる嗜好の持ち主だけれど、黒子は知りたいかい?
///
頬にほんのり色をのせた愚弟に為す術なく引き摺られる大男に手を振って、俺は傍らでふらつく旧友に視線をやった。
「テツ、これ歩けないんじゃね?」
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2020.7/28
初公開日: 2020年07月28日
最終更新日: 2020年08月13日
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🏀青赤/火赤 似て非なるふたり