くりんばワンライ二十四回目
【追いかける】
山姥切に畑に呼び出されて告白された。俺が欲しいそうだ。
襤褸布を被らず翡翠の瞳を輝かせて俺の返事を待っている。
「俺は……」
山姥切とは顕現された日が同じだ。審神者にそのままニコイチワンカップとかふざけた名前のペアにされて、同室で当番も共にあるので顔を見ない日はない。いつから俺の事をそう思っているのかわからないが告白されて少しでも嬉しかった自分がいることに寒気がした。
ただ同じ日に顕現されただけ、ただ同室で寝起きしているだけ。丸一日言葉を交わさない時だってあるのに山姥切と同じような、いやそれ以上の感情を山姥切に持っている。
「この気持ちは受け取ってもらえないか」
「あ、……ちが、う……」
絡まった糸の塊のように言葉が絡まっていて口が動かない。イライラと靴の中の指が動き始めて、走り出してしまいたい。
「……大倶利伽羅」
山姥切の翡翠が陰ったのが見えて、俺は走り出した。
畑を抜け、水路を飛び越し、本丸の裏山を目指した。少し遅れて山姥切も追いかけてくる。
だめだ。追いかけてくるんじゃない。今はだめなんだ。
「……伽羅」
溢れて止まらない気持ちを知りたくなかった。気がつかないふりをしていた。山姥切に指を指されて名前をつけられてしまったのだ。
「大倶利伽羅っ」
こんなにも愛しいだなんて。
腕を掴まれて止まった。木の葉の音と互いの荒っぽい呼吸音しかしなかった。
「泣くほど嫌だったか」
「……そうじゃない」
山姥切に掴まれた腕から何か伝わってしまいそうで、体が震える。
「あんたがすきなんだ」
「泣くほどか」
山姥切の翡翠が濃くなって俺を愛しそうに見つめる。ああ、こうなってしまったら止めようがない。
「すき、……山姥切が好きだ」
「俺も大倶利伽羅が好きだ」
襤褸布で俺の涙を拭きながら山姥切は笑った。