強敵に挑むという話
今回ばかりは攻略途中で「おたから箱」を開けて、中の魔石やドロップ品を先に分配した。出来る物は、と頭に付くが。例えば弾になる宝石とかな。魔石も、装備を強化できるだけしてしまえ、という事だ。
進化に必要となる球の魔石だが、どうせこの後ごっそりと手に入る事が分かっている。それなら、少しでも性能を上げる為に今使ってしまった方が良い、という事だ。スピカから聞く限り、20連戦を越えた辺りから割と安定して真球の魔石も出るとの事だし。
「相手が単体の時は、飛んでても何とかなるのよね。被害は大きいけど。問題は、連戦が30を越えたら取り巻きが湧いてくるって事なのよ。それで処理が間に合わなくて、っていう感じね」
「……成程。最高記録の時は飛ぶ相手がほぼ出なかったのか」
「分かっちゃった?」
「分からいでか」
とりあえず時間さえあればワイバーンまでなら何とかなる事が分かっている。そういう意味でも前より行けそうだ、と、スピカは気合を入れていた。はいはい、ちゃんと仕事をするとしよう。
「おぉしお前ら! 目指すは50連戦だ!」
「「「応!」」」
「コンディションは最高に近いし規格外の遠距離担当が居る今はチャンスだ!!」
「「「応!!」」」
「そんじゃいくぞぉおおお!!!」
「「「応!!!」」」
規格外ってなんだ、いや、爆弾とか火薬庫とかよりはいいが。
と、思っている間にマスターが骸骨の取っ手を掴み、力任せに近い力の入れ方で手前へと引いた。真っ暗で見通せない闇の中に、道中と同じく一塊となって突っ込む。
然程進むことなく勢いは緩み、後方で扉の閉まる重苦しい音が響いた。それを合図としたように、周囲に明かりが現れる。
「……成程、ボスラッシュ、か」
そこに広がっていたのは、先程コアエネミーと戦った場所……直径50mほどの円形広場だった。周囲は朽ちかけた木の柵で仕切られ、その合間に髑髏を乗せた棒が立てられている。その髑髏の目が青白く燃え盛っていて、それがこの奇妙に明るい原因のようだ。
そしてその柵の外には、まるで戦場跡のような光景が広がっていた。盾が、鎧が、剣が、斧が、ボロボロに朽ちた戦いの道具たちが、隙間もないほどびっしりと大地に転がり、突き立てられている。
最後に、改めて広場の奥、入り口と反対側の端に目を向ける。そこにあったのは……先程通って来たものと似たように重苦しく、悪寒がする、その彫りこまれた模様だけが全く異なる、巨大な扉だった。
「補助いくわ!」
「対巨大コアエネミー戦闘用意!!」
彫りこまれているのは、悪鬼羅刹、或いは百鬼夜行。そういう、化け物達がこちらを睨み、得物を構え、威嚇する様子が描かれていた。取っ手らしきものは無い。それはそうだ。あれは、こちらから開ける物ではない。
スピカを筆頭としたヒーラー達によってステータス上昇の魔術が全員へ発動する。その上で、重装に盾を持ち、機動力をある程度犠牲にして防御力を上げたタンカー冒険者が並び、その後ろに火力特化冒険者が控える。
ここに入った時点で好きにしていいとの言葉は貰っているので、適当に離れた所で気配を消した。さて弾の配分を考えなければな、と思っているその目の前で、ゴゴン、と、小さく地響きを伴い、巨大な扉が開く。
「当たりだ! 消耗してんじゃねぇぞ!?」
「「「応!!」」」
そこから出てきたのは、赤黒い肌を持つ鬼だった。3mオーバーの身長に、ほぼ同じぐらいはありそうな棍棒を持っている。……が、物理攻撃でやりあう相手なら、マスターが即座に指示した通り「当たり」だ。これは、出番は無しでもいいかも知れない。
「……まぁ、取り巻き掃除か、空飛ぶ相手が出てきてからが本領発揮だしな」
盛大に殴り合いを始めた『アベンチャーエール』冒険者達の様子を見つつ、とりあえず体力と弾の温存を優先的に、この後の動き方を決めるのだった。
~投稿時はここで話数を区切るかも~
「Gyhaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!」
ズドン、と重い衝撃が通る音がして、高高度を旋回していたワイバーンが地面へと叩きつけられた。すかさず間合いを詰めたマスターのハンマーが振り下ろされ、その首が鋭角を描いて跳ねる。
流石に落下の衝撃に加えて首の骨を叩き折るどころか粉砕してしまえば、亜竜と言えど死ぬらしい。ぶわ、と光の粒になって消える巨体から視線を剥がし、開きっぱなしの巨大な扉へと視線を向ける。
「スピカ、今ので何体目だ!?」
「丁度30体! 次から取り巻きが出るわ!」
「了解した、掃討を重視して動く」
30体の内今のワイバーンを含めて飛行能力持ちは6体ほど。地上に居ても遠距離攻撃手段があったのが5体ほど。3分の1ぐらいは働いているし、その負担はかなり重い。
とはいえ、それ以外を正面から撃破しているマスター達前衛組の負担が軽いという訳は無い。むしろ、よくまだ瓦解していないものだ。もちろん、それを支えるヒーラー達の努力あってこそだが。
マスターの確認に、スキルのクールダウンや補助魔術の残り時間に加えて倒した相手の数も数えているスピカが応答を返す。それを聞いて、軽く手を上げてひらひらと振りつつ、何が来てもいいように心構えをした。
「と、は、言え……大分温存出来てるっちゃぁ出来てるな」
「全くね! シューターさんのお陰ね!」
「出来ない事はあるし限界もあるから頼るのもほどほどにな?」
僅かな戦闘の合間に汗をぬぐったり水分補給をしたりしながら、それでも警戒は緩めない。次から取り巻きが出てくることは分かっているのだ。最悪無限湧きと考えると、それこそいつかのハイリッチを相手にした時のように、不意打ちで一掃する必要があるだろう。
うん。本当に、敵味方識別ができて良かった。同じギルドで動いている限りなら、ギルド証を持っていない奴、という条件付けで識別できるからな。同じギルド所属の面々で動いている間は。
そうして僅かな時間で出来る限りの疲労を取り、傷を癒し、装備を修理して、四川を向けた先に出てきたのは。
「…………。20秒くれ」
「応、分かった」
装備まで全く同じ、いつかのハイリッチだった。
フラグを立てたつもりはないんだがなぁ?
!ありがとうございました!