危険物は色々あるという話
「いやぁ、ほら、色々作ってみた所で、結局使ってみなきゃどんな効果か正確には分からないじゃないっすか。それにその、作るのに失敗したら、その時点で爆発したりもするんでー、それならその、変な話、生き返りワンチャンある『スポット』でやった方が、いいかなー、って?」
「……爆弾狂とマッドサイエンティスト、どっちで呼んだらいい?」
「どっちも嫌っすよ!?」
 という事らしかった。……理屈は分かるが、つまりその「爆発する危険の高い」アイテム作成を頻繁にやっているという事だろう? というか、頻度的にそれしかしてないんじゃないのか?
 とりあえず頻繁に襲い掛かってくる鳥系のエネミーを片っ端から叩き落としていく。谷底に落ちたらどうなるか、なんて、考えるまでも無い。近接組はそれぞれに距離を開けて、間に防御系のスキルが使える冒険者を挟み、じりじりと進んでいる。
 その先頭で会話をしつつ進んでいる訳だが、うん、使うのが一気に不安になって来たぞ?
「そんなーっすー」
「万一うまく飛ばなくて手元で爆発とかしてみろ。詰むぞ」
「あー、それは否定できねぇっすねー」
 という訳なので普段通りの戦い方だ。今の所全部ビーズで済んでいるので、地形に難がある分だけエネミーは弱いとか、そういうバランスの『スポット』だろうか。
 まぁ、あれだけの大荷物を抱えているトルマリル(所業的に敬称を外す)がギリギリとは言え通れるんだ。普通に一人ずつ歩く分には十分だ。戦闘するとなると大変だが。
 後ろの方に目を向けると、そちらはそちらで炎の弾や氷の槍のようなものが飛んでは鳥を撃退しているので、あちらも問題は無いらしい。
「ん?」
「どしたっす?」
「いや何か、ものすごく大きい気配が……?」
「えっ」
 とか思っていると、感知範囲、スキル外スキルとでも言うべきか、その端に何か引っかかった感じがした。とりあえずすぐそばまで迫っていた鳥型エネミーの一団を叩き落とし、少し考えて鉄のパチンコ玉を強く握りこむ。
 これも熟練度的な物があるのか、今まで直接見た相手は「あぁあいつか」という感じで分かる。のだが、こいつはさっぱり分からない。つまり、少なくとも一度も直接遭遇はしていない、という事だ。
 何だこれ、と思いつつ、まだ遠く動きのないその気配を窺いつつ足を進める。すると、ちょいちょい、とコートの空の袖が引っ張られた。
「シューさん、シューターさん。何すか、ものすごく大きい気配って」
「直接見た事があったり、倒したことがある相手は何となく分かるんだ。が、それがさっぱり分からない、かつ、大きさが……マスターにしか通じないが、あの大平原『スポット』の大鷲ぐらいある」
「おい待て」
 怖々、という感じで聞いてきたトルマリルに応えつつ、手の中でパチンコ玉がパキリと音を立てたのを確認する。早くなったなぁと思っていると、先頭をこっち2人に譲って進んでいたマスターから声がかかった。
「シューター、お前まさか、こういう断崖絶壁な『スポット』って来るの初めてか」
「初めてだな。冒険者歴半年弱の新人に何を言っているんだ」
「おめぇのどこが新人だ! あぁくそ、で、今まで叩き落とした相手の中にゃぁ正体不明は居なかったんだな?」
「新人じゃなかったら何なんだ。……、そういえばそうだな? 今まで出てきた奴は全部、少なくとも一回は叩き落としたことがあるな」
 そうだな? と同意を返し、首を傾げる。確かに、鳥型エネミーは大体一通り叩き落としたはずだ。それに今までの経験上、似たような奴を相手にしていれば「何となくあれみたいなやつ」って分かるな。
 とか思っていると、マスターが立ち止まって額を叩いて天を仰いでしまった。よほどこの謎の気配はヤバいらしい。
 ……あれ、そうだな? 鳥型エネミーは大体一通り叩き落としていて、それこそあの大平原『スポット』のコアエネミーだった大鷲も「猛禽系のでっかいの」ぐらいは分かってたよな? それが大きさ以外は、全く、一切、何もわからない相手……?
「……シューターの戦歴とこの地形を考えたら間違いねぇ。ワイバーンだ……!」
「ひえっ!?」
「ワイバーンだと!?」
 深く考え込み、何となくヤバさに察しがついてきたところでマスターからの答え合わせが来た。トルマリルが悲鳴を上げ、何事かと小走りになってやってきたブレイクさんも気色ばむのを見て、あ、これアカンやつ、と察する。
 ブレイクさんの指示でトルマリルが信号弾を打っているのを横目に、マスターからの説明を聞いたところによると。
「ワイバーンってのは、まぁ大体イメージ通りだ。腕を翼にしたトカゲって見た目の奴で、亜竜っつー種族になる。竜の一番下だと思ってもいい。けどだな、竜って奴自体がバケモノだから、準備無しに相手にしたら、初見だと大体一回は死ぬ」
「登竜門と言うか、洗礼的な?」
「と、思うしかねぇ相手だな。飛んでる上にそこんじょそこらの下手な亀系や盾持ちより硬いし、ブレスは吐くし尻尾から棘は飛ばしてくるし普通に噛み付きもやるし翼の爪で斬り裂いてくるし、つーかあのでかさで体当たりされただけで普通は死ぬ」
「それはひどい」
 つまり硬くて速くて痛くて近寄っても離れてもダメな上に飛行がデフォ、と。
 何度かパチンコ玉から音が聞こえるのを確認しつつ、つまり理不尽か、と理解する。そしてそんな奴が、この足場最悪の『スポット』に出てくるのが現在の状況。なるほどそれはヤバいな!
 後方からわちゃわちゃと騒ぎが聞こえる辺り、シルマリーさんが最後方からこちらへ移動してきているらしい。まーこの状況でせめて牽制しようと思うと、あの人位の火力は必要か。
「マスターの攻撃が胴体にクリーンヒットしてもダメ?」
「そこまで行けば一応瀕死になるが……ブレイク?」
「そうだな、どっちかでもまともに入れば流石に痛いじゃ済まん筈だ。逆に言やぁ、俺達以外だと火力不足だが」
「なるほど」
 一応の確認を取ったタイミングで、一際高い音が右手から鳴った。ぱ、と開いてみてみると、パチンコ玉がヒビだらけになっている。これはこれ以上「力を溜め」たら弾けてしまうな。
 なのでパチンコにセットして、ゴムは引かずに気配の方を確認する。まだ動いて……あ、いや、動いた。シルマリーさんは、うん、あれちょっと間に合わないな。つーかはっや!?
 うーわこれは苦戦するわけだ……と思いつつ、気配の方へパチンコを向けて思い切りゴムを引き絞る。その仕草で動きがあったことを悟ったのだろう、マスターとブレイクさんが、後方へと防御指示を出していた。
「耐衝撃防御態勢ー」
 フードの下の目を細めて、遠くにぽつっと見えた灰色の点を凝視する。あれがワイバーンだろう。見る間に大きくなるその点を、有効射程範囲の半分ほどまで引き付けて……。
 おそらくは過去最高威力となるパチンコ玉を撃ち出した。
「Gyhaaaaaaaaaaaaaaaaaa…………!!!」
 直線で突っ込んできていたワイバーン(推定)が、一応避けようとしたのか、頭ではなく胴体の真ん中にパチンコ玉を食らってそのまま墜落していった。先に感知してすぐ溜めだしたからというのもあるが、何とかなったな。
 しかし、あれだけ溜めて思い切りゴムを引いたパチンコ玉が直撃しても即死しないのか。成程理不尽と言われるだけはある。今回の場合、谷底に落ちたらまぁ助からないから、地形にも助けられたか。
 そして、悲鳴を上げて谷底へ落ちていくワイバーンを、顎が外れそうな勢いであんぐりと口を開けて見送っていたマスターは、ようやく思い出したようだ。
「…………そういやぁそうだったか。ゴーレムを壁にめり込ませられる物理火力があったんだったな」
「マジか」
「マジだ」
 ブレイクさんが「は?」と顔に書いて聞き直しているが、マスターは真顔で頷いている。まぁね。しかもあれからパチンコも手袋も進化を重ねたし、あの時は2筋しかヒビが入って無かったけど今回は目一杯だ。
「いや、驚いた。ちょっとしたビルぐらいある鬼より硬いのか、あれ」
「んだそいつは……あれか? オーガ系の上位種か? ……まぁ、そうだが……そん時はどうなったんだ」
「パチンコと手袋は進化前、チャージの程度は今回と同じで、胸のど真ん中に風穴空いたな」
「その時点で色々とおかしいんだよおめぇは……!!」
 マスターが頭を抱えてしまった。ブレイクさんも「なるほど火薬庫……」ってどういう意味だ。
 ……無事に済んだんだからいいじゃないか。なぁ?
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文字通り世界の皺寄せを受ける話 27
初公開日: 2020年05月16日
最終更新日: 2020年05月16日
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コメント
これは多分現代ファンタジーな感じ。
26の続き。
心の底から清々してます!! 12
乙女ゲーム世界への転生を果たした悪役令嬢。多分他には転生者も転移者もいない……筈なのに! 同タイトル…
竜野マナ
心の底から清々してます!! 11
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竜野マナ
心の底から清々してます!! 10
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竜野マナ
ワンドロ
テニヌ幸村夢ワンドロ
むん