話題にされるという話
 乱戦がしばらく続き、マスターとハンマーをぶん回していた大柄な男性が拳をぶつける事で収束。そこからは何故か時々殴り合いの喧嘩が起こる飲み会になだれ込んだ。いや、何でだ。
「……ブレイクさんって言って、『スポット』黎明期にマスターとパーティを組んでいたうちの1人で、『アースハンマー』ってギルドのマスターで、大親友で、飲み友達なのよ」
「つまり?」
「類は友を呼ぶの実例ね」
 納得した。つまりこの乱戦からの飲み会は恒例行事と言う訳か。
 あぁ見えて『アベンチャーエール』の冒険者たちも、最初に見て感じた通り必須スキルである『アイテムボックス』は持っていた。『アイテムバッグ』は『アイテムボックス』にもかかるのだそうで、それで一見何も持っていないように見えたらしい。
 なお、「おたから箱」は『アイテムボックス』に入れているとうまく機能せず、回収ロスが発生するとの事。ポーチに入れても発生はしているらしいが、そちらなら誤差なようだ。
「おい、シューター! ちょっと来い!」
 という話を聞いていると、大笑いしながら実に楽しそうに宴会をしていたマスターから声がかかった。何だ、と思いながら寄っていくと、がっ、とフード越しに頭を掴まれる。何をする。
「こいつだよこいつ。っとに、爆弾だと思って拾ってみたらとんでもねぇ、火薬庫かっつーの!」
「わっはっはっは!! いやぁ、あのガンツがとうとう遠距離をメインにするやつをギルドに入れたって聞いたからどんなかと思ったら、ひょろっこい坊主だなぁ!!」
「痛い」
 何だか随分な言われ方をしていたらしい上に、マスターが頭を掴んだままぐらぐらと振り回してくるから首が痛い。しかしこの酔っ払い、力が強い上に放す気はなさそうだ。
 で、その姿勢のまま自慢なんだか愚痴なんだかよく分からない話をしている。ブレイクさんはゲラゲラ笑って聞いているが、何かツボにでも入ったのだろうか。それとも酒が入れば何でも面白くなるタイプの酔っ払いか。
「だから、シューター、おめぇはもう少し、加減を覚えろ! いいな!!」
 最終的に、何故か怒られてようやく解放された。数歩離れた所で首をさする。痛かった。というか、何故酒の肴もとい話のタネにされた上に怒られなきゃならんのか。
 まぁ、酔っ払いに理屈は通らないか……。と思ってすっかり宴会で出来上がっている周囲を見る。少し離れた所で、スピカと、見覚えのない誰かが数名で固まっているのが見えた。
 スピカはこちらの視線に気づいたのか、周りを見て手招きしてくる。これ以上被害に遭うつもりは無いので、さっさと移動した。
「という訳でー、向こうでうちのマスターが散々大きな声で喋ってたけど、新人のマジックシューターさん。念願の遠距離魔法職さんよ!」
「どうも」
 どうやらこちらでも紹介される流れらしい。ばっ! という感じでスピカが手を広げたので、それに合わせて軽く頭を下げる。いえいえこちらこそ、という感じであちらも頭を下げてくれた。
「でー、こちら、『アースハンマー』所属の魔法職さん達。右から順番に、シルマリーさん、ダイヤさん、コバルティさん、トルマリルさん。一緒に行動する時は大変お世話になっているわ」
「シルマリーです」
「ダイヤでーす」
「コバルティです」
「トルマリルっす」
 シルマリーさんは、白い三角帽子に白いマント、白いローブと、白一色の魔女という格好で、顔の上半分を覆う白い仮面をつけている女性。
 ダイヤさんは、銀色の板を張り合わせた特殊スーツのような物ですっぽり全身を覆っている。声的に恐らく男性だろうか。
 コバルティさんは、濃い青の燕尾服を着て白い手袋を付け、魚を模したらしい帽子をかぶっている男性。執事っぽい、という印象だ。
 トルマリルさんは、大きなバックパックを背負い、ベルトや首にまで色々な物を引っ提げている上に大きなゴーグルに黄色いヘルメットを被っている。多分女性。
「本当はもう1人、チブニーさんって人がいて、5人で大体一緒に活動してるんだけど……」
「彼、どうしても日付変更線付近に抜け出せなかったみたいで。ごめんなさいね?」
「まぁこの先会う事もあるだろうし、その時に改めてね」
 この応答を見ると、シルマリーさんがリーダー的な存在のようだ。そして、もう一人いるらしい。……しかし、個性が激しい4、いや、5人組だな? そのチブニーという人がどんな人かは知らないが。
 こちらでも随分話題になっていたようだ。主にスピカが助かったとか『採取』や『解体』の発見という話で。
「いやー、あーしは持ってましたがまさかそこまで効果があるとは思わなかったっすわー。ここから先はこれまで以上にペース上げていかんとダメっすねー」
「トルマリルさんは他にもアイテムドロップが増えるスキル一杯持ってるから、気付かなかったんだよねー。他のスキルの効果と被ってー」
「っすなー」
 へらりと笑ってトルマリルさんが言うと、そこにダイヤさんも便乗する。どうやらあの2つのスキルの詳細はかなりの衝撃だったようだ。しかし、誰も詳細を聞かなかったのか?
 ……いや、聞かないか。見た感じで効果が大体想像できるもんな。習得しても採取ポイントが見えれば、そういう効果かとそこで納得するだろう。『解体』に至っては、不要(ナマモノ的)なドロップが入る事を嫌って更に人気が下がっていそうだ。
「これからは、スキルの説明をもうちょっと聞こうと思ったわよね」
「全くねぇ……」
 うんうんとスピカが頷くのに、シルマリーさんも同調している。まぁそういう事らしい。……存外、説明書を見ずに家電を使う人は居るらしいからな……。見た方がいいと思うんだが、ボタンなどの表示が良くなったから、何となくで使えてしまうらしい。
 うん。とりあえず一通り、説明書には目を通して使い方はちゃんと調べた方がいいと思うぞ? 誰にでも何にでもいえる事だが!
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文字通り世界の皺寄せを受ける話 25
初公開日: 2020年05月14日
最終更新日: 2020年05月14日
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コメント
これは多分現代ファンタジーな感じ。
24の続き。
心の底から清々してます!! 12
乙女ゲーム世界への転生を果たした悪役令嬢。多分他には転生者も転移者もいない……筈なのに! 同タイトル…
竜野マナ
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