さていよいよ今日は夏コミ前日。しかし夏コミに突入する前に終わらせておきたい仕事が残っているので朝から書いていきますよ。
そう、実はまだ終わってなかったんですよね例大祭新刊レビュー。夏コミ出発前までには終わらせておきたいと思ってたらいつの間にか出発当日。なんかもういつまでたっても宿題に追われる小学生気分です。
・ムガムビル11(薬味さらい)
幻想郷の社会やキャラクターに独自の視点で鋭く切り込む作風、そして毎回の総集編描き下ろしが魅力のサークルさん、通算11巻目の総集編です。総集編で2桁行くのってなかなかないですよね。このまま末永く続けて頂きたい。
今回は既刊5作+描き下ろしの全6作収録。それでは収録作品ごとに感想を書いていきましょう。
・魔縁事変
「魔縁」とは天狗の別称。
作中では厳格な組織構造を持つ天狗社会において、組織には属さず個人として自由に振る舞うはぐれものをそう呼びます。
その魔縁のひとりが人里で子供を殺傷するという大事件が発生。本作はそんな事件を発端とした、自由と不自由の物語。
作品の感想でほかの作品の名前を出すことは基本的に避けていますが、本作を読んでて強く「劇場版 機動警察パトレイバー」および「劇場版 機動警察パトレイバー2」を思い出しました。いやこれは単にパトレイバーおじさんバイアスであることは重々承知の上ですが。
一連の事件の直接的な原因である魔縁はすでに捕縛されており、作中で具体的な行動を起こすことはありませんしセリフもなし。そして作品の中核となるのは事件の犯人たる魔縁の動機や生い立ちではなくその行動がもたらした社会への混乱のほうが話の中核であるものの、その中で翻弄される今を生きる個人の思惑もまた話の中核であるという。
本サークルさんの作品では、文は一貫して天狗社会という組織にありながら組織の一部であることを良しとせず自由を志向するキャラクターとして描かれてきました。そこへ「東方虹龍洞」にて天狗社会の組織側に属するキャラである飯綱丸龍が登場したのなら、ふたりを絡ませない手はないという。
本作では一見、龍は自由を志向する文に対置されたアンチ文というべきポジションに思えますが、彼女は彼女で「権力」という形での自由を手に入れている。だからこそラストでかつての知己であった魔縁に対して表向きは追放、実質的には恩赦という形での自由を与えることができている。「大きな権力があるので広い範囲で自由な采配ができる」=「他者に自由を与える」は文には決してできない方向性の自由へのアプローチだったと思います。
そしてラストページで東方世界における最大級の爆弾を残していくというのもまた文にしかできないフリーダムだったと思います。やりたい放題すぎる。テロじゃねーか。
・タイタニア
東方二次創作における古典的テーマのひとつである「先代巫女」を取り上げた一篇。
「反則探偵さとり」の連載分の方で先代巫女が明確に登場したという噂は聞いてますがわたくし人形使いはコミックス勢でしかも買うのが遅れてるので早々に明確に登場したという先代巫女を確認しておきたい。
「タイタニアが来るよ」という妖精たちの不気味な囁きから幕を開ける本作は、謎の存在「タイタニア」の復活、そしてその正体を巡る物語。
本作はマンガというビジュアル主体の媒体の魅力を最大限に活かした伏線回収とミスリードを見事に設定した作品でした。
冒頭で「タイタニア」のシルエット、そして血溜まりに倒れ伏す見覚えのある巫女服の袖という「出題」をして、ラストでちゃんとその場面の「回答」をしてくれるという。
読んでて最初はタイトルとシルエットで連想したのは当然大妖精もしくはラルバでしたが、まあそんなバレバレの答えが出てくるはずはない。それにぶっちゃけ表紙が霊夢なので霊夢が関係することは間違いなかろう。でもどう関係するんだ? といろいろ考えながら読んできましたが、ここで回答を導く要素として「先代巫女」を組み込んでくるのがさすが。
そしてこれまたビジュアル主体の媒体であるマンガの特徴を最大限に活かした「妖精を強く想起させる『蝶の羽根』のシルエット、実は巫女服の袖でした!」というアンサーがとてもはなまる。
そしてラストにも東方二次創作の古典的テーマのひとつである「博麗の巫女の代替わり」を組み込んでいるのに作劇の巧みさを感じました。
本サークルさんの東方二次創作作品は、限られたページ数に要素をうまくまとめて組み込んで破綻なく作劇しててすごいなーと毎回思ってます。
・メメントモリヤ
本サークルさんの東方二次創作の最大の被害者と言っても過言でも華厳でもない諏訪子、今回は子育てチャレンジだ!
話は剛欲異聞の事件の後。のんびり暮らしていた諏訪子。そんな諏訪子の前になんかちいさくてかわいい饕餮が出現! 地母神としての心が刺激されたのか、諏訪子はそのちいかわな饕餮を世話することにしたのですが……。
東方には数多の本物の神々が登場しますが、本サークルさんの作品における東方の神々は神だからといって決して万能の存在ではない。それぞれの属性や神格に応じた行動を取らざるを得ない、ある側面では人間よりもよほど不自由な「役割に縛られた存在」として描かれている印象があります。
本作における一連の事件は、すべて饕餮の残滓と血の池地獄の怨念が混ざり合って生まれた饕餮の分霊とも言える赤子を「安全に処理」するためのプロセスでした。諏訪子も単に母性を刺激されたというだけでなく、地母神としての役割を果たすためにあえて「茶番」を演じていた――はずなのに、最後の最後で子どものケンカに手を出してしまうというのが、神としての領分を超えた親心を感じさせられます。人間的な、あまりに人間的な行動ですよ。そして最終的に地母神の持つ「もうひとつの役割」を果たし、子のケンカの責任を取るという。
そしてラストの〆方も好き。子は親が作ってくれたご飯の味をいつまでも覚えてるんですよね。
・ふえるようむちゃん
なんかもう妖夢を出せばどんなトンチキやっても許されるという風潮がありますが、原作や関連書籍でもあんな感じなので仕方ない。
というわけで本作は本サークルさんのギャップが楽しめるギャグに全振りした作品です。
神霊病で説明もなく4つに増えてたりアビリティカードで増えてたりしてなんかもうえらいことになってた妖夢の半霊が人里で養殖された挙げ句に野良半霊化して大変なことに! 騒動を鎮めるべく、魂魄妖夢が走る!
まず言わせていただきたいのが、本作における咲夜さんほとんど怪人では?
本サークルさんの作品において妖夢の次くらいにアレな人という印象がある咲夜さんですが、本作ではなんかこう完全にタガが外れてしまった感じの八面六臂の大活躍で腹筋に悪い。誰なんだよ十六夜咲蔵って……。
また、東方二次創作においては半霊はしばしば和菓子扱いされるものですが、本作ではガッツリ団子の素材にされててわろた。もしかして今回のモグモグ要素ってここなの!?
あとばんきちゃんヘッドもたいがいおもしろアイテム扱いされてて本当に気の毒。
そして最後はみんな大好き紅魔館オチ。
妖夢のヨウムはぬいぐるみ化も果たした祟り神諏訪子ちゃんに続く本サークル発のマスコットになってほしいですね。ほんとうにひどい話だった……。
・オールド/オッド ウィッチ
これまた東方二次創作で数多く書かれてきた古典的テーマのひとつ、霊夢と魔理沙の幼少期の話。
まさに「枚挙にいとまがない」ってくらい描かれてきたテーマだと思いますが、未だこの鉱脈が尽きることはないんだなあ……と改めて実感しました。
幼い魔理沙が足繁く通う魔法の森。そこにはひとりの魔女が住んでいた。幼い霊夢はすでにその才覚を発揮し、幻想郷の調停者としての力を身に着けていた。
魔女は、人外の道に落ちたとして博麗の巫女の誅滅対象として選ばれ……。
「霊夢と魔理沙の幼少期」だけでなく「博麗の巫女としての霊夢と人の身を捨てて種族魔法使いになった魔理沙のたどる結末」もまた東方二次創作の古典的テーマのひとつですが、本作はこのふたつのテーマを半分ずつ盛り込んだ作品と言えるでしょう。
本作のこの魔女、「あり得たかもしれない魔理沙の姿」と感じました。魔道を志すも届かず、人の身のまま、老いて死んでいった魔理沙。
さらに言うなら、この魔女は「先代の魔理沙」とも言えるかもしれません。
博麗の巫女が代替わりしていくように、魔理沙のように人の身でありながら魔道を志す人間がほかにいてもおかしくありませんし、本作では魔理沙はこの魔女の志を継ぐ形で魔法を学んでいます。そしてなによりこの魔女は、先代の博麗の巫女と戦っていることがほのめかされている。
本作は霊夢と魔理沙の過去話であると同時に、それより前の博麗の巫女と魔女の話でもあり、さらには霊夢と魔理沙の、これからあり得るかもしれない未来の話としても読めると思いました。
・泥の蝶
毎回本サークルさんの総集編を読む時は、描き下ろしの直前でいったん手を止めて既刊をまとめた描き下ろし部分がいったいどんな展開になるのかを想像するのが大きな楽しみ。
しかし今回は、タイトルから「タイタニア」の事件が中心になるか?とは思いましたがなかなか収録作からの予想ができませんでした。
そして読み終わって思ったんですが、本作は実質的に先代対決ですね。
行方知れずとなった先代巫女たちの怨念が形をとった泥の妖精の軍勢に対し、魔理沙はかつて魔女になれなかった老婆から学んだ瘴気を操る魔法でもって浄化を図る。
そして、魔理沙がついぞ博麗の巫女に手が届かなかった老婆の無念を晴らすがごとく泥の蝶となった先代巫女の怨念を見事打ち倒したのと同じように、霊夢もまたあえてその身に先代巫女の怨念を取り憑かせたうえで祓い清める。そう考えると本作は、霊夢と魔理沙のコンビネーションによる魂鎮めの儀式だったと言えるかもしれません。
あとやっぱり咲夜さんはヘンで半霊の扱いはひどい……。
・あいかわらずへんかなし(まりおねっと装甲猟兵)
例大祭新刊レビューの最後を飾るのは、恒例のこのサークルさん。
今回は最新作である錦上京も出たので、新キャラ(特に3ボス)がどんなひどい扱いを受けるかを楽しみに読ませて頂きました。
それでは恒例の全ツッコミ行きます。わからないネタは潔くスルーしているので識者の方は援護射撃してください。
・5ページ5コマ目:同じ内容を本当に8週続けて放送したという「涼宮ハルヒの憂鬱」のエンドレスエイト。
・7ページ目4コマ目:吉良吉影。とあとデスノートのキラもかかってるか。
・8ページ2コマ目:故・鳥山明先生の著者近影。そしてそのコピー芸。
・10ページ3コマ目:魔界塔士Sa・Gaの能力から。そういやパチュリーの本にはすべて「◯へんか」の魔法がかけてあるって公式設定があったよな。
・同4コマ目:STGにはしばしば自機が進化する作品があります。ここで挙げられてる以外だと「サイヴァリア」や「マーズマトリクス」も自機が進化するタイプだったっけか。
・同5コマ目:みんな大好き倫理観ゼロガンナーなラグナロクことR-9Ø。
・11ページ2コマ目:説明不要の超サイヤ人。
・12ページ4コマ目:つげ義春「石を売る」。
・13ページ1コマ目:「ダンジョン飯」のマルシル。阿梨夜もデザイン細かいから骨のところとかポキポキ折れそう。
・14ページ1コマ目:「仮面ライダー剣」のセリフ。
・同2コマ目:ネタではないですが「ゴロツキのもとじめ」の語呂が良すぎる。ゴロだけに。
・16ページ2コマ目:「でしたらこれでどうですか?」じゃないんだよな。「ごんべえのあいむそ〜り〜」とか分かる人読者の5600万分の1くらいしかいないと思います。
・17ページ3コマ目:セーラームーンを知らない人でもこれは知ってると噂される「ムーンライト伝説」。
・同5コマ目:アルコールではない方のストゼロの春麗の挑発フィニッシュ。
といった感じで今回はわりと年齢制限に引っかかりそうなネタは少なめな感じでしたがやっぱり「ごんべえのあいむそ〜り〜」はさすがにマニアックすぎると思います。
というわけでこれにて第二十三回博麗神社例大祭新刊レビュー完了!
次は夏コミ新刊レビューでお会いしましょう! 俺たちの戦いはこれからだ!