装備の強化にも発見があったという話
唐突だが、ここで装備の強化と進化について説明したいと思う。
装備の強化については、魔石を押し付けて砕く事で経験値が入り、レベルが上がる。レベルが上がると性能が上がる。当然のことながらレベルが上がる程必要な経験値が増える為、だんだん上がり辛くなる。
進化というのは、装備のレベルが一定値に達した状態で行える「特別ボーナス解放」というのが一番しっくりくるだろうか。その内容は、性能にボーナスが付いたり、「装備品スキル」というのが付いたり、別途魔石と素材を消費する事で属性や特性を付けられるようになる「付与枠」が解放されたりと、多岐に渡る。
そして装備には進化限界という物が存在する。つまり、1つの装備を強化、進化するには、限界がある、という事だ。まぁ、武器版のレベルキャップと考えれば間違っていない。
まぁその限界を突破する手段もあり、レベルキャップに到達したからと言ってそれ以後の経験値(魔石)が無駄になる訳ではない。なのでガンガン強化すれば良いのだ。普通は。
さて何故今そんな事を唐突に説明し始めたかというと。
「進化限界?」
「はい。そうなります」
あっさり。至極あっさり、パチンコ以外の装備がその限界を迎えたからだ。
いや、まぁ、スピカから聞いてはいたんだ。現実から持ち込んだ装備は、装備限界も能力値も低い傾向にある、と。
しかし、進化が5回で終わるとは思っていなかった。パチンコはハートアームで、例外的に限界が存在しない専用装備だ。そのパチンコの進化回数は、現在合計で27回。少なくともほぼ同程度に強化してあるコートのレベル余りが大変な事になっている。
「えぇと……確か、限界を超えるには、合成が必要なんだったか」
その限界を超える手段について、カウンターの中の係員に確認を取る。まさかこんなに早く限界を迎えるとは思ってなかったから、詳しい話を聞いていない。
「はい。合成のルールを説明いたしますか?」
「一応頼む」
「分かりました。
合成とは、装備品を使用して新たな装備品を作り出す操作です。
合成には、1つの装備品を元として別の装備品の特性、能力値を加える「強化合成」、2つ以上の装備品を用いて全く新しい装備品を作成する「装備合成」、特別な組み合わせと素材を使って通常では手に入らない装備品を作成する「作成合成」の3つが存在します。
ここまではよろしいでしょうか?」
進化限界を迎えた装備を引き続き使いたい場合、行うべきは「強化合成」だ。「作成合成」は大変難易度が高いと聞いているし、「装備合成」は不良品が余った時に行う、実質博打と聞いた。
確認されたのでとりあえず頷き、続きを促す。
「注意事項として、合成できる装備は同カテゴリの物に限られます。合成には必ず2つ以上の装備品を使用します。合成に使用した装備品は失われます。一度に合成できる装備品の数に上限はありませんが、それは完成装備品の能力値を保証するものではありません。
合成方法ごとの注意事項として、「強化合成」を行う場合、前回追加した装備品の合計レアリティより大きいレアリティの装備品を使用しなければなりません。「装備合成」を行う場合、元の装備品より能力値が低い装備品が合成される可能性があります。「作成合成」を行う場合、素材の質や属性によっては大失敗が発生し、装備品が作成されない上に全ての素材を失う可能性があります。
説明は以上です」
「ありがとう」
装備品が失われる、といっても「強化合成」の場合は生まれ変わると言った方が正しいんだが。
さてそうなると、「強化合成」で使う同カテゴリの装備が必要となる。……手袋、靴、ベルトはまぁ分かりやすいとして、コートはこれ、何カテゴリになるんだ?
と思って確認してみると「マント/ローブ」というカテゴリだった。ちょっと特殊系の、この2つのどちらにも属するカテゴリらしい。つまり、どっちも使えるという事だ。
「まぁ使える幅が多いのは良いことか。どちらかというと、マント方向だが」
合成によって新たな装備品になったら、カテゴリが変わる可能性があるな……マント2、ローブ1の割合で合成するか。比率そのままで数を増やせば、合計レアリティは増やせるんだし。
「そろそろ大体の山分けは終わったか?」
「あん? シューターお前、まさかまだ取り分取って無かったのか?」
「タイプが違うからな。残り物には福があると言うし」
「急げよー。そろそろマスターが纏めて換金する時間だぞー」
ようやく騒ぎが収まり、大体の冒険者が仮眠や宴に移動して静かになった「おたから箱」の前に移動する。リストを眺めて何かしら唸っていたマスターに声をかけ、大分横線でアイテム名が消されたリストを受け取った。
そのままばらばらと見て、横に控えている係員に欲しい物を告げていく。基本的に欲しい物は宝石だ。宝石が使われた装飾品も含む。現金なんじゃない。武器というか火力になるから欲しいんだ。
時点で布装備を探し、それも手に入れておく。いくらかは減っているようだが、布装備を欲しがるのは『アベンチャーエール』ではスピカぐらいだ。結構余っていた。
「……?」
そうして一通りリストを眺めて欲しい物を告げ終わる。リストをマスターに返し、袋詰めされた取り分を受け取った所で、もう一度ふたが開いた「おたから箱」と、その前に山積みにされた、主に軽かったり魔法的だったりする装備品、つまり取り分で誰も取らなかったアイテムを見て、ふと違和感を覚えた。
「マスター」
「何だ?」
「リストには、あんな枝は無かったと思うんだが?」
「あん?」
眉間にしわを寄せてもう一度リストをめくって確認するマスター。……しわが深くなったところを見ると、見間違いでは無かったらしい。
係員に許可を取って、まだ山になっているアイテムの中から、その枝を引っ張り出す。みずみずしい葉っぱの付いた、その辺の街路樹から折り取ってきたような、30㎝ほどの何の変哲もない枝だ。
「……それっぽい物はリストにゃ無ぇな。シューター、他にはあるか」
「ちょっと待て、今探す」
マスターも引っ掛かったらしく、そんな確認をしてきた。それに、山をガサガサと探りながら返す。
最終的に、葉っぱ付きの枝が3本、薪のような木の棒が2本、石で作った木の実のようなものが5個、錆びた金属製の食器がいくつか見つかった。何だこれ?
「リストには載って無ぇみたいだが、こりゃなんだ?」
「これらは「強化素材」ですね。装備品に使用することで特殊な能力を付与したり、施設に使用することで機能が解放されたりします」
「!?」
…………なんかまた大層な物が出て来たな。
というか、何で今まで気づかなかったんだ。脳筋だからか。脳筋だから細かい事はスルーしちゃってたのか?