報酬タイムに発見があったという話
カカシというか、ファンタジーの訓練所にある打ち込み人形と言うか……まぁそんな感じの相手を、上空に浮かぶ時間制限表示がゼロになるまでひたすら倒し続け、現れた扉にマスターがギルド証を使う事で『アベンチャーエール』の本体空間に戻って来た。
さてここからはお楽しみの報酬タイムだ。それは全員分かっているのか、空気がそわそわしている。
「よーし一回も狙われなかったな、次もこれで行くぞ!」
「それはいいが、流石に重いんだが?」
「はっはっは! すまんすまん!」
全く悪く思っていない様子のマスターにはそれ以上言わず、普段は鑑定カウンターと買取カウンターの中にいる係員さん(人外)達が用意してくれた台の上で、ずっしりと重く感じるポーチを開けた。
勢いをつけないと取り出せないので、がしっと掴んでそのまま半ば放り投げるようにして「おたから箱」を取り出す。台の上に半分落ちた「おたから箱」は、ずずん……っ、という感じの、非常に重量のある音を立てて小さく空間を揺らした。
それで相当な量の報酬が入っていることを察したのだろう。半分飲みに入っていた冒険者全員が視線を「おたから箱」に集中させる。
「こいつぁ期待出来るなぁ……! という訳で、いつも通り頼む」
「分かりました」
……ちょっと不安になったのでスピカに確認を取ると、鑑定と仕訳をして、リストにするまでをやって貰うのだそうだ。お代は鑑定後、全員で山分けして残った中から支払うとの事。なるほど、杖とか本とかあっても誰も使わないもんな、このギルド。
まずまっさきに仕分けられたのは球魔石だ。ちょいちょい間にウェッジエネミーも含まれていたし、何より最後のボーナスステージで結構な数が出ていたらしいから、どっさりとした量を受け取った。
どうやらこの大祭で纏められた『スポット』は、元の大きさを参照して枠が増えるらしい。なので、ここで一人前とされる20個まで一気に枠が開いた。とりあえず、以前取ろうとして迷った『ドロップ強化:』スキルを5つ入れる。
「真球の魔石は無かったから、枠を1つは空けておくとして……いや、次もこの調子なら埋めてしまって大丈夫、か?」
枠が30を越えてから増やすには1000の『スポット』攻略が必要となる。流石にそこまで行くと大祭でもなかなか増えないらしいが、逆に言えばそれまでは大祭なら簡単に上がるという事だ。
しばらく悩みつつスキル一覧を眺める。……そして追加で取ったのは『収納強化』という、『アイテムバッグ』スキルを強化するスキルと、『命中強化』及び『貫通強化』という強化スキルだ。
あと2つ、どうしたものか……と更に悩みつつ、つらつらとスキル一覧の、半透明の画面をスライドさせていく。と。
「……ん?」
あるスキルに目が留まった。一見戦闘には関係なさそうだし、『ドロップ強化:』ではない。どうやって使うのか、想像は出来るが今までそれらしいものは見た事が無い。そういうスキルだ。
なので素直にスキル習得カウンターの係員に質問してみた。
「この『採取』というスキルは、どうやって使うんだ?」
「はい。このスキルを持った状態で『スポット』へ向かわれた場合、採取ポイントを発見、探索できるようになります。また、一部エネミーのドロップが追加で入手できるようになります」
…………。
なんと?
「……じゃあこっちの、『解体』は?」
「はい。このスキルを持った状態でエネミーを倒された場合、一部を除いてドロップが追加で入手できるようになります。また、このスキルを持った状態でのみ手に入るドロップが存在します」
「それは、その……ナマモノ系?」
「いいえ。ドロップはドロップです。ナマモノは干し肉などに加工された状態で、液体は壺や瓶に入った状態で、非実体の物は実体を持たせた状態でドロップします」
「腐った奴とかを倒した場合は?」
「詳しくはお答えできかねますが、その存在を構成しているものがそのままドロップすることはありません」
………………なん、だと?
ちょっと、待て。これ両方取れば、全てのエネミーでドロップが追加されるって事じゃないのか。って事は、『アイテムドロップ』スキルとほぼ同じ効果だな?
待て。待て! 何気に重要スキルなんじゃないのかこれ!? 何でこれについては言及が無かった!? とりあえず習得だ、残りの枠は2つ、ギリギリ足りる良し!
「あれ、シューさんどうしたの?」
「スピカ。……『採取』と『解体』というスキルを知っているか」
「あー……確かあれって、モノ作りする人用のスキルよね? 専用の場所でアイテムが取れるようになるらしいって聞いたわ」
どうやらアイテムの分配に入ったようで、喧々諤々の騒ぎから抜け出してきたらしいスピカに早速聞いてみる。その回答は、うん、大体分かってた。
「……枠に余裕はあるか、スピカ」
「え、うん。今日の攻略で1個追加されたわね。次はちょっと無理だろうけど」
「さっきのスキルについて、説明だけでいいから聞いてこい。いや、聞いてくれ」
「?」
首を傾げつつ、場所を入れ替わるようにしてカウンターの前に立つスピカ。説明を聞いている様子を見ていると……あ、固まった。声が震えつつも詳細の確認をしている。内容はさっき聞いたのと大差ない。
……横からでは見えないが、何かスキルを習得したな。何となく分かるが。
「……シューさん」
「何だ」
「教えてくれてありがとう。これ、ヤバいわね」
「だろう?」
「ちょっと全員に枠の空きがあるか確認してくるわ!!」
だっ! と喧々諤々、一部で殴り合いが起こっている騒ぎの中にスピカは走って突っ込んでいった。この後の事は予想できたので、スキル習得カウンターの前から逃げ……移動する。
さて、次は装備の進化といくか。