事前準備をしようという話
さて、「冒険者」として祭りがある事を知らされ、それに参加する意思を固めた、と言ってもそれは2・3日先の話だ。スピカに聞いたところ、『スポット』一括化大祭というのは大まかに前半と後半に分けられ、前半はここまでに出現した『スポット』が。後半は期間に入ってから出現した『スポット』が現れるのだそうだ。
で、前半は文字通り多種多様な、普段通りの『スポット』で連戦することになるらしい。まぁこれは聞いた説明通りだから違和感は無い。そして後半はというと、
「……アンデッド祭りなのよ。鎮魂祭(物理)とか、言われるわね」
「ちんこんさいかっこぶつり」
……まぁ、お盆、という期間に発生するのだ。それぐらいの影響は受けるだろう。
「でっ、でも! ユニーク武器とか、特別なドロップアイテムとか、それこそ、対アンデッドの消耗品を一気に補充するチャンスでもあるの!」
「……あぁ、成程。それこそ、堕神とか、呪われた寺とか、そういうのがぽこぽこ出てくる訳か」
「……寂れ切って闇堕ちした教会とかも出るわね。大物になると、邪神に負けた世界線の聖地とかがあったりするわ……」
「それは攻略できるのか?」
「うちでは無理ね!」
まぁ、厄介な特性を持つ相手を倒したら、その特性特攻の武器や防具やアイテムを落とすのは、ゲームではよくある事だ。これは一応現実の筈だが。
いずれにせよ稼ぎ時には違いない。という事で、稼ぎを加速させるためにどうするか、というと。
「深型と浅型の、分かりやすい違いは何か? あぁ、それはもちろん「階層があるかどうか」ね!」
「階層?」
「そう、階層。深型はね、コアエネミーが複数体居るのよ!」
浅型ではなく、深型に探索のメインを移す事だ。……浅型の攻略を止めるとは言っていない。この頃は前衛が居て、補給がしっかりできるようになったから、半日に1個攻略できるようになっているだけだ。
もちろん探索時間そのものは現実では無いに等しい。が、命懸けだと流石に疲れも大変な事になる。それに半日、という意味だ。
まぁそれはそれとして、『スポット』の難易度区分の話だ。浅型と深型の一番の違いとは、と聞いて、帰ってきたのはそんな回答だった。
「浅型は、ウェッジエネミーは居てもコアエネミーは1体だけでしょ? 深型は、コアエネミー自体が複数体居るの。で、全部倒さないと『スポット』が消えないどころか、一番奥のコアエネミーを倒さない限り、他のコアエネミーが復活するのよ」
「うわ、厄介な」
「でしょう? コアエネミーが複数いる分『スポット』の階層ごとに環境も変わるし、奥に行けば行くほど強くなるしで大変なのよ。まぁ、その分の見返りもちゃんとあるんだけど。あとは単純に、深くて広い分だけ時間がかかるわね」
「なるほど」
それもあって危険度が上になるらしい。成程確かにこれは危険度が高い。なお、浅型を放っておくとウェッジエネミーが増え、そのウェッジエネミーがコアエネミーになって深型になるのだそうだ。
そういう場所なので当然、「冒険者」であってもしっかり準備をしなければ危険となる。そんな場所に一般人が紛れ込んだら……まぁ、うん。お察しの通りだ。
「その「何処にもいない時間」っていうのをいい感じにアレコレするのもあって、深型はギルドの本体空間からの挑戦推奨よ。そっちの方が色々なつじつまが合わせやすいって聞いたわ」
「そうなのか」
「そうらしいわね」
空間自体が特殊、という事で、そういう事情もあるようだ。普段は現実と同じ時間が流れているギルドの本体であるこの空間だが、こういう祭りのときは現実から隔絶されて『スポット』と同じ時間の流れ扱いになるようだ。便利だな。
……まぁ、とりあえず今回は一時的に稼ぎを増やしたいんだ。コアエネミーが複数体居るのは、正直、装備の進化をもう一度はしておきたい身からすれば有り難い。
という訳で通行証から深型の物を探していく。……うん、相変わらず数が多い。アンデッド祭りの前哨戦として、骨の館なる『スポット』に挑んでみようか? 黄色のビー玉はしっかり補充してあるし、ちょっと試し打ちしておきたいものもあるし。
「私達のギルドって、とにかく、数が出てくる相手ってホント苦手なのよね……片付けてくれて助かるわー。……本当に」
館ごと吹っ飛ばせたら楽なんだが、とか思いつつ手続きをしていると、一緒に行くつもりらしいスピカが、実にしみじみとこぼしていた。
……苦労しているなぁ。