「最初」に巻き込まれたのは、正確に言えば4月8日だ。もちろんよく覚えている。流石に忘れる事は出来ない。
なので、月1ペースで『スポット』を攻略するパターンとしては、月の半ばに『スポット』を探し、そこから月末までが探索。月の頭に決着をつける、というサイクルだ。
だからあのハイリッチが居た『スポット』で、マスターと出会ったのは8月の2日。夏休みは7月の半ばから始まって、宿題は頑張って7月中に終わらせたので、現在は自由の身だ。
「……『スポット』一括化大祭?」
何か話したい様子のスピカと掲示板の周囲にある席の一つに移動し、それぞれ飲み物を頼んだうえで聞いた話に出て来た単語を、思わず繰り返した。何だそれ。
しかし、こくり、と頷いたスピカは真剣そのものだ。という事は、知らなかっただけで「冒険者」としては普通に行われてきた行事……? なのだろう。
「そうなの。ほら、お盆って元々、死者がこっちに遊びに来るとか、境界が曖昧になるとか、そう言われるじゃない?」
「まぁ、言われてるな」
「で……その、ポータルも、人の移動が起こると、活発に使われるじゃない?」
「……まぁ、使われるだろうな」
スピカの話によると、その辺をアレコレいい感じにフォローするのも、やはり神様仏様をはじめとした「明確な人外」のお歴々の仕事らしい。が、流石に今でも十分忙しい彼らが、通常の物とは言え仕事が増えれば倒れる可能性が出てくる。
という訳で、お盆の期間及びその前後、具体的には8月の10日から16日の1週間は「世界の意思」が出張り、その時点で存在している、及びその期間の間に発生する『スポット』を、全て一か所に集めるのだそうだ。
で、その集められて一つになった巨大な『スポット』を、全ギルド総出で攻略するのが、『スポット』一括化大祭、という事らしい。
「…………、それ、本当に攻略できるのか?」
「コアエネミーを倒すという意味なら、まぁ、無理ね」
「無理なのか」
「うん、無理。だっていないもの」
「いない?」
どういう事かというと、「世界の意思」が出張って無数の『スポット』をかき集めたものなので、巨大になったとはいえ攻略自体はいつもの『スポット』と変わらないのだそうだ。単に、コアエネミーを倒しても、すぐに他の『スポット』と統合されたり、別のコアエネミーが湧いたりするだけで。
……だけではない気がするが、まぁつまり、あれだ。
「コアエネミーを纏めて狩るチャンスだな?」
「そういう事ね! それに『スポット』を潰すのを加速させる為にだと思うけど、女神様がもう少し頑張ってくれるのよ!」
『スポット』には、滞在の時間制限がある。もちろん魔石を砕いて延長することはできるが、その時間制限を生き延びきったら、『スポット』に入る前の場所、時間に戻る。
これは『スポット』というのが世界の皺であり、その中で「力の流れ」が淀んで溜まっている為、時間軸も一緒に狂っているから……という理屈があるらしいのだが、まぁとにかく、『スポット』内で過ごした時間は、ほとんど現実には影響しない、のだ。
実際は、完全に経過時間をゼロにすることは出来ない。滞在時間を延長すれば、それだけ現実で「何処にもいない」時間は増える。
「一回数時間の、普通の『スポット』でもそれでしょう? で、「何処にもいない」時間が伸びると、それはそれで不都合があるのよ」
「まぁ、あるだろうな」
「だからこの『スポット』一括化大祭では、まず10日ぶっ続けで『スポット』とギルド本体の行き来で時間を過ごすのね?」
「ん? うん、うん?」
「で、その10日が終わったら、現実でまた10日過ごすのよ」
「……、うん?」
……どういう事だ? といくつか質問しながら起こるであろう現象を整理する。
しばらく考えて、どうやら『スポット』内部で「冒険者」として戦闘している自分と、通常の空間で普通に1週間過ごす自分が、空間違いで同時に存在することになる……らしい、と理解した。
…………なるほど。1週間平和に過ごせるわけだな? その間は『スポット』を探したり探索したり攻略したりしなくていい、そもそも浅型の『スポット』に巻き込まれる事が無くなる、という訳だな?
「なるほど。それは確かにありがたい」
「でしょ!? だから、現実に影響が出ない事だし、ギルド本部の施設は使えるから普通の暮らしは出来るし、是非参加してほしいなって……」
「あぁ、なるほど」