射的して名前を貰うという話
さて『スポット』に突入し、まず最初に寄って来た数体を叩き落として少し移動。生えている草が膝より低い、ちょっとした丘のように盛り上がっている場所まで来た。
通行証に書いてあった通り、全方位大変見晴らしの良い、地平線まで草原が広がる場所だ。さっき行ったのが狭苦しい洞窟だったのもあって、開放感が素晴らしい。
「ほんっとに大丈夫なのかぁ?」
「ダメなら撤退すればいい」
「それはそうね!」
諦め悪く未だに渋っているマスターだが、あっさりと言い返したのにスピカも同意してくれたので、ただ唸るだけにとどめたようだ。
そんなマスターを横目に、丘の上からぐるりと空を見回す。そして遠く、今はゴマ粒のような影が見えたのを確認して、じゃらっとガラスビーズを纏めて手に取り、握りこんだ。
指ぬき手袋を進化したことで、より多くのビーズに同時に「力を溜める」事が出来るようになったのだ。そしてそれを個別に撃ちやすくなった。つまり、連射速度が上がったという事だ。
「さて、射的開始だ」
さっそく飛んできた鳥型エネミーに向けて、ガラスビーズをセットしたパチンコを、思い切り引き絞った。
1時間後。
「何だ、もう終わりか」
鳥型エネミーをそれなりに叩き落としたところでヘリコプターぐらいはありそうな巨大な鷹が飛んできた。バカスカと風の砲弾を撃ち込んでくるのを避けつつ、トルコ石のビーズを撃って、特大の氷の槍で胴体のど真ん中を貫いてやったが。
そうすると、そこを境にぴたっとエネミーの襲撃が止んだ。どうやらあの特大の鳥型エネミーがコアエネミーだったらしい。少し周囲を探して一般エネミーの魔石を拾い、砕くことで周辺の魔石を回収すると、そこに球の魔石が混じっていたから間違いないだろう。
以前はもっと時間がかかった、というか、そもそもコアエネミーを見つけるまでに大変時間がかかったんだが……と思いつつの感想が、先程の呟きだ。
「……おめぇがデタラメに強ぇーってのは、よぉーく分かった。この新人詐欺め」
「誰が詐欺だ」
「んなもん詐欺に決まってんだろうが!? これで冒険者になって半年足らずだとか誰に言っても信じねぇわ!!」
「えぇ……」
マスターは天を仰いで呻いていたが、反論すると突然怒鳴って来た。しかし、詐欺と言われても困る……というのがこちらの正直な感想だ。実際、来月末でようやく半年というのは本当なのだし。
「そもそも、そこまでバカスカと何でも撃てる奴を聞いたこと無ぇってんだよ! 何だあの種類は! 逆に何なら撃てねぇんだ!?」
「ビー玉やビーズに無い色の属性は撃てないんじゃないか?」
「結局ガラス玉だろうが! あんなもんちょっと顔料の配合変えるだけで何色だって作れるだろうが!?」
「まぁそれはそうなんだが……」
……プラスチックはダメだったが、陶器や木製のビーズは撃てたというのは黙っておこう。あれはあれで、パチンコ玉とは違う方向に特殊だったし。
「閃いた!」
と、そこまでをひとしきりマスターに怒鳴られていた訳だが、ずっと黙っていたスピカが突然声を上げた。何が、というか、冒険者名をずっと考えてくれていたらしい。
まぁそれが目的でこの『スポット』を選んだのだが。そして思いっきり射的したんだが。楽ではあったな、確かに。前衛が居ると落ち着いて構えられる。
さてそんな訳で、戦い方は一通り見せられた筈だ。その上で、どういう名前になるのだろう、と、構えていると。
「マジックシューター、っていうのはどうかしら!」
思ったより良さそうな名前が出て来た。
「ほほぅ、中々いいじゃねぇか」
「マスターは何でもそういうじゃない……。ね、ね! どう!?」
「悪くない」
「あ゛ぁ!?」
素直に答えると、スピカ贔屓のマスターが威嚇してきた。まぁすぐその当の本人であるスピカの一撃が入ってうずくまる事になるのだが。
けどまぁ確かに、悪くない。戦い方からすれば大変的確と言えるだろう。
「ちょっと長い気はするが、うん。悪くない」
「それを言ったら、私だってスピカキャッツじゃない」
「……それもそうだった」
「普段はシューターさんとか、シューさんとか縮めて呼べばいいわよ!」
「シューまで縮めると何のことか分からないな……」
「でも一番名前っぽいわよ?」
それは確かに、と納得する。しかし、うん。まぁ、悪くない。
そうしてその日から、「冒険者」としての名前は正式に、「マジックシューター」と、なったのだった。