タイトル通りの特殊設定ってやつ
腕の中で、もぞもぞと動く気配に目を覚ます。暗い中でもわかる小さな頭はあっちを見たりこっちを見たりと忙しない。
「…どうしたの?」
そぅっと囁くと腕の中の子どもは大きな瞳にアッシュを映した。その瞳がゆらゆらと揺れて、こぼれ落ちそうになっている。
「怖い夢でも見ちゃった?」
問いかけに首を振ると胸のあたりに縋り付いてくる。何かに怯える子を守るように抱きしめると、少しだけ緊張が弱まった。寂しいのか、不安なのか。きっと自分の心を満たす感情の正体がわからないのだ。
何にせよ、アッシュがすることは変わりない。
「大丈夫。僕がいるよ」
とん、とん、とん。呼吸に合わせて背を叩く。弟たちがぐずったときによくこうしていたのを思い出す。そして、養父を喪った時、ドゥドゥーにしてもらったことも。
「あの、ね」
「うん?」
落ち着いたのか縋り付く力が弱まる。言葉を選びながらゆっくりと話す子を急かさないよう頷く。
キョロキョロと目を動かした後、じぃっとアッシュを見つめると、泣きそうに顔を歪めた。
「どうしてお母さんがいないの?」
「……」
「みんな、お母さんがいるのになんでぼくはいないの?」
その問いかけにアッシュは答えることができない。そもそも、この子の母親も父親も誰なのか、それはアッシュもドゥドゥーも知らなかった。ある朝、宿場の扉の前に刺繍のされたおくるみと共に捨てられていたのだから。何の言葉も残されておらず、ただ丁寧に刺された色とりどりの刺繍以外は何の痕跡もなかった。きっと、愛されてはいたのだろう。何らかの理由で捨てざるを得なかったということは繊細な刺繍から察せられた。
だが、その話をしてもきっと意味はない。この子の求めている答えは何故母が側にいないのか、何故捨てられたのかなのだから。
「ごめんね。……僕が代わりになってあげれたらいいんだけど」