みなさーん、BP、LP消費しましたか??
私は消し炭のようになりました。両方走るのはしんどいのでぼちぼち行きたいです。
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闇オク話を書くのは久しぶりです、2月のブリデの原稿いらいなので3ヶ月ぶりくらいですかね。
調子が戻るのに時間がかかるかもしれませんが、よろしくお付き合いいただけると嬉しいです。
闇オク みかちゃんの乳歯が抜ける話
みかが斎宮家に引き取られてひと月あまり、身を切るような寒さの続く中で今日もみかは宗と共に暖炉の近くで字の勉強をしていた。
「ほら、書いてごらん。み」
「み~」
「か」
「か!」
まずは平仮名の練習から、覚えやすい簡単な字から教えようと思ったが、みかが一番最初に知りたがった文字は「しゅう」だった。
食事の仕方、整容の仕方、着替え方。
綺麗な姿勢、そして文字。
生きる上で大切なことをこのひと月、ぎゅうぎゅうに詰め込んだ。
みかは不器用な部分もあるが、決して勘は悪くない。そして、絶対にあきらめない。
時には叱られても決して物事を投げ出さずに最後までやり遂げようと努力する。
そんなみかの姿が宗にもっともっと、とみかに対して色々なことを学ばせようとする意欲を生み出していた。
そんな状況でまだまだ文字を教えるのは早いと思っていたはずなのに、ここ数日は毎日時の練習をしている。
昨日綺麗に「いつきしゅう」と書けたから、今日はみかの名前を書かせてあげようと練習を始めたところ、みの〇の部分から後ろがどうしても左に寄ってしまう現象が起こっていた。
みか自身何故宗が書いてくれたお手本と違う形になるのか解らないようだ。
「ああ、右に丸を書くのではなく左側に書くのだよ」
何度か宗が目の前で書いてやると、宗の手の動きに合わせて自分も手を動かすようになる。
動きをなぞれば間違える事は無い。
一度ちゃんと書ければ、あとは回数を重ねて書き慣れるまで練習するのみだ。
「そう、上手だよ。もう少し「か」をスリムに書いてみようか」
与えられた鉛筆を、最初は握りしめて書いていたみかも、今ではちゃんと指を添えて持つようになった。
まだ芯はボキボキと折ってしまうけれど、綺麗にとがらせた鉛筆は沢山ある。存分に練習してくれたらいいと思う。
懸命に字の練習をしているみかが、左手で頻りに口を触っていると気付いたのは「み」の字が大分「か」の字と同じ大きさになってきたころの事。
右手は文字を書きながら、左手は前歯を触ってはテーブルに戻し、また少しすると前歯を触る。
手で触っていない間ももごもごと口が動いていて、何やら口の中に気になるものがあるような動きをしている。
自分の体の変調や痛みに鈍い子供の事、宗は「みか」と怖がらせない様に呼ぶと、自分の方に向き直らせた。
「おくち、あーんして」
「あー」
真っ直ぐに宗の方を向いて何の疑いもなく素直に口を開ける。
ざっと見た感じで口の中に異変はないようだが……と、気にしていた前歯をよく見ると右側の前歯が斜めを向いていた。
みかの歯は毎日見ている、前歯は乳歯ながらまっ直ぐだったはずだが……と、そっと触れてみると前歯がグラグラと不安定に揺れ動いた。
最近歯磨きはみかが自分でやっていた、チェックこそしていたものの触って確かめていた訳ではなかったため、揺れている事に気が付かなかった。
「前歯、痛い?」
宗の言葉にみかは首を横に振る。もう一度そっと触れてみると、かなりグラグラと揺れていて抜けるのも時間の問題だろう。
年齢的にとうに永久歯に生え変わっていておかしくない年齢、歯がぐらついていること自体には驚かないが、ガリガリの痩せぎすで、骨と皮ばかりだった子供が、まだまだ細いとはいえ健康的な肉付きになり、歯が抜けると言った成長を見せてくれたことに内心、酷く感動していた。
「これは子供の歯が抜けて大人の歯に生え変わる準備運動だよ、大人の歯が準備が出来たら子供の歯は抜けるんだ。もう一日二日で抜けそうだね」
そう言って口を閉じさせると、みかの髪をそっと撫ぜた。
「これ、このままで抜ける?」
「そうだね、もうすぐぽろっと抜けると思うよ」
「殴れへんの?」
「……は?」
突然のみかの言葉に宗は思わず冷たい声を出してしまった。
みかが随所に織り込んでくる『前のご主人様』の所での経験談や、間違えて覚えた常識は宗から優雅さも格式も全て奪い取る。
宗が冷たい声を出す時は自分が間違ったことを言ってしまった時だと覚えてしまっているみかは、身を縮こまらせて小さな声で「ごめんなさい」と謝った。
宗が何に怒っているのかはわからないが、間違えてしまってごめんなさい……と謝るのだ。
「何度も言うようだけれど、君に怒っているのではないよ。その、何故歯が抜ける事と殴る事が結びついたのかな?」
子供には子供の言い分がある、自分の常識だけで相手を非難するのは凡俗のすることだ。
宗はみかが何故そう考え、何故そう話したのかをいつも丁寧に聞き取る。
みかは小さな声で、説明を始めた。
曰く、歯が抜ける時はいつも誰かがご主人様に殴り飛ばされた時だったこと。みかはあまり殴られたり蹴られたりと言った暴力は激しくは受けていなかったが、一部の子達は身体が吹っ飛ぶほどに強く殴られたり蹴られたりしていたのだという。
そして血まみれの顔で、口から折れた歯がポロポロと零れる。
みかの知っている歯が抜ける……は、そういった状況ばかりだったから、歯が抜けるのならば殴られないといけないと思ったらしい。
宗はみかの話を終始穏やかな表情で聞いていた。ここで怒りをにじませては目の前の罪のない子供をまた怖がらせてしまうからだ。
しかい内心では怒りの感情がマグマのように渦巻いている。
― ああ、もどかしいね。今すぐにでも零たちにご主人様を引っ立てて連れてこさせたいくらいだ……
みかの髪を撫でながら、話を聞きながら、顔も知らないみかの前のご主人様を何度頭の中で八つ裂きにしただろう。
「君が健康になって、成長したから小さな歯から大きな歯に代わるんだよ。君が今まで見て来た歯の抜け方はイレギュラーだ」
「いれぎゅらー?」
「想定外とか、予定外とか……つまり、運が悪く予定より早く抜けてしまったんだよ」
だから血が沢山出ただろう?ちゃんとしたタイミングで抜ければ血も出ないし痛みも無いからね。
そう告げると、みかはまたぐらつく歯を触って首を傾げた。
「この歯、いつ抜けるかなぁ?いま引っ張ったらあかん?」
違和感があるのだろう、いじりそうになる手をそっと押し留めて、宗は首を横に振った。
「せっかくきれいに抜けそうなのだから、もう少しだけ我慢してごらん。そして歯が抜けたら今度は大人の歯が元気に生えてくるように妖精さんにお願いをしないといけないからね。抜けた歯は大事に取っておくんだよ」
妖精さんにお願い、と聞いてみかは瞳を輝かせる。
絵本を読み聞かせる中で、妖精やお化けなど未知の物に興味津々なのだ。
「おれ、妖精さんにお願いする!大人の歯がちゃんと生えてきますようにって」
そわそわとするみかをひょいと抱き上げて、宗はみかの手を包む。
「では、あまりお口を触ってはいけないよ。歯が綺麗に抜けなかったら大変だ」
「うん、さわれへん……」
気になって触ってしまいそうになる手をグッと自分で抑える。
歯が抜けたら、必ず知らせるようにと言い聞かせて、その日はそれ以上歯を気にしない様に新しい絵本を読んでやることにして気を逸らした。
そんなやり取りから2日後、まだ斎宮家の家族と食事をするにはみかは人慣れしていないため二人で夕食をとっている最中。
みかが「あっ!」と口を押えた。舌でも噛んだかと宗が慌てて腰を浮かせると、みかが手の中に小さな白いものを吐き出した。
「お師さん、歯ぬけた」
きらきらと目を輝かせて手のひらに乗せた歯を見せてくる。
満面の笑みを浮かべるその顔は美しく整っているのに、前歯が一本欠けていて子供特有のいじましさを覗かせる。
「おや、綺麗に抜けたね」
出血はしていないようだと素早くチェックして、宗はみかの手のひらに収まる小さな歯を、ポケットから取り出したレースのハンカチの上に置くように促した。
「寝る時に妖精さんに強い大人の歯が生えますようにってお願いするからね、無くさないように包んでおこうね」
大切に包まれたそれは、みかが無くさないように宗が預かる事となった。
「スースーする」
歯が抜けた事で違和感があるのだろう、最近では癖のようになってしまった口を触る動きをしてきゃらきゃらと笑う。
この家に来た時には目を合わせる事すら困難だったこの子が、こんなにも無防備な笑顔を向けてくれることを嬉しく思う。
「さぁ、ご飯を食べて、お風呂に入って寝る準備をするよ」
みかに正しい生活習慣を身に着けさせるために、宗も随分と規則正しい生活を送るようになった。
少し前までは夕食を食べてから友人たちと舞台やオペラに繰り出したり、夜の方が元気な友人は夜中にパーティーを開いたりしていたものだが、みかを引き取ってからはすっかりと縁がなくなった。
そんな事よりも、この子と過ごす時間の方がよほど大切で、有意義なのだと言えば友達は何と言うだろうか。
皆、驚きながらも笑って受け入れてくれる気がする。そういう仲間だ。
みかの手を引きながら、久しぶりに友達に手紙でも書こうかと思案しながら食後の読書のために先ずはみかの部屋へと向かった。
すっかりと眠る準備を整えて、最近はみかが寝付くまでは宗が隣に添い寝をして眠ったら部屋に戻るようにしているためみかの部屋のベッドに二人で腰掛ける。
フリルがふんだんにあしらわれた枕を一つ持ち上げると、ハンカチに包んだ抜けた歯をそこに置いて枕を元に戻す。
「こうして枕の下に抜けた歯を置いておくんだよ、妖精さんにお願いしながらね」
宗の言葉にみかは両手を合わせて枕に向かってむにゃむにゃと拝む。
「妖精さん、大きな大人の歯を生やしてください……大きいのがいいです」
と聞こえて来たので、大きな前歯を想像して少し笑ってしまったのは秘密だ。
「そう、これで明日の朝に歯の代わりにプレゼントがおいてあれば妖精さんがお願いを聞いてくれた証だからね」
「お願いも聞いてくれるのにプレゼントもくれるん?!」
みかが大層驚いている。なにくれるんやろ~?!と瞳を輝かせるみかに「なんだろうねぇ」と返しながら、もう寝なさいと布団に促した。
冷えないように、肩までしっかりと布団をかけて添い寝する。
「妖精さん、きてくれるかなぁ」
「来てくれるよ、みかはとても良い子だもの」
歯の抜けた唇のあたりをちょんと突けば、みかがへにゃっと笑った。
最近よく見せてくれるようになった笑顔は、今日は歯抜けでいつもより幼さが増している。
「んへへ……おやすみなさい、お師さん」
「おやすみ」
毎日たくさんの事を吸収して頭を使っているみかはすぐに夢の世界へ。
起きない事を確認して枕に手を差しこむと、ハンカチに包まれた小さな乳歯を手に取った。
「さて、どんなプレゼントをあげようかな」
「おしさん!おはようございます」
「おはよう、みか」
朝、いつものようにみかの部屋に起こしに行くと、既に起きていたみかがベッドの上で手の中に抱えたものをじっと見つめていた。
宗に気が付くと手に抱えた物を大事そうに掲げながら走り寄ってくる。
寒い季節なのに素足で走ってくる子供を抱き上げると、ベッドに腰掛けて膝の上で向き合った。
「足が冷えるよ」
「ごめんなさい、でもな、はよ見て欲しくて…」
みかが見せたのは昨晩歯を包んでいたレースのハンカチ。
その中身をそうっと開くと、そこには白い小さな歯の代わりに琥珀色に輝く石をあしらった小さなボタンが包まれていた。
「妖精さんがお願い聞いてくれた!綺麗な石やねぇ」
みかは後ろのボタンホールに気が付いていないようだったため「多分ボタンじゃないかな」とそれとなく教えてあげた。
「ボタン?こんな綺麗な石が?」
「この間君にあげたぬいぐるみの瞳と同じだね、あれもこういう石がはまったボタンだよ」
と告げれば、みかは素早く宗の膝から降りてぬいぐるみを置いてある棚に向かう。
先日宗が手作りして与えたぬいぐるみの瞳には桜色や紅色の石があしらわれている。
「わあ……!おそろい」
「そうだね、これから沢山歯は生え変わるし、色々な色のボタンが集まれば色々な瞳のお人形が作れるね」
そのころには自分でぬいぐるみを作れるように、お裁縫の練習を頑張ろうね。と告げると、みかは瞳を輝かせてこくこくと何度も頷いた。
「さぁ、お着替えをして朝食にしよう」
みかは琥珀色のボタンをぬいぐるみたちの棚に大切に乗せる。いつか、この石がぬいぐるみの瞳となって輝くように。期待に胸を膨らませて。
「ようせいさん、ありがとぉ」
無邪気に笑うその笑顔は、欠けた前歯が愛くるしく、宗は思わず抱き締める腕に力がこもるのだった。
おわり
5000文字くらいですかね、思ったよりは長くなりました。
ずっと書きたかった乳歯話、お付き合いいただきありがとうございました!!
宗君がみかの乳歯大切に保管してるとか、ボタンだけじゃなくてリボンとかくれる時も有るとかまよ介さんと話していたのが1月頃ですか……大分遅くなってしまいました。
楽しかったです!!
ありがとうございました!!