寝ぼけてシャロにうにゃうにゃフニャフニャ甘えて、何でおはようのちゅ~してくれないの?
ってべそべそしてたら貿易社だった…って話を書きます。
+ + +
さらりと髪を撫でられる感触に意識が急速に浮上する。
頬に硬い感触がして、うっすらと目を開けると見慣れた艶やかな黒髪が見えたから安心して再び目を閉じた。
ちゃんとジャケットまで着こまれた肩に流れる艶やかな黒髪。
煙草の匂い。
書類を捲る音と僅かに揺れる空気。
ソファーの上で、シャーロックの肩に凭れて眠ってしまっていたようだ。
書類を読んでいる筈の彼が時折空いている方の手で髪を撫でるのは、もはや無意識の癖のようなもの。
ブルックリンの狭いソファーの上で何度も繰り返されたその優しい手つきに甘えるように、彼の首筋にスリスリとマーキングする猫のように頭を擦り寄せた。
「起きたか?」
普段より潜められた声はウィリアムの眠りを妨げないための配慮。
目は開けないままに凭れている彼の腕に両腕を絡めた。
「まだ眠いよ」
「寝ぼけてるな、リアム。起きたならちょっとこの書類を一緒に見て欲しいから目ぇ開けろって」
呆れたように苦笑しながらも甘やかすように髪を撫でる手。
普段であれば寝起きには沢山キスをしてくれるのに、今日はそれが無く、無粋に書類を見て欲しいなんて言うものだからウィリアムはムッと頬を膨らませた。
「なんで、今日はキスしてくれないの? 僕より書類が大事?」
ぎゅうと掴む腕に抱き着く力を強めれば、普段のシャーロックならすぐにキスをくれる。
それなのに聞こえてきたのは溜息で、なんで?どうして?と不満は募っていくばかり。
「リアム、起きろって」
― 後でいっぱい構ってやるから
囁くように告げられて、少しだけ機嫌を上向かせたウィリアムはやっと微睡から抜け出して瞼を持ち上げる。
そう言えば、どうして眠っていたのだったっけ……と、考えたところで、自分たちはブルックリンではなく英国に帰って来ていたのだと思い出し、とろとろと半開きだった瞼はパチンと途端に叡智を取り戻した。
ビクッと跳ねた体は、シャーロックに甘えて凭れていた体勢からシャンと背筋を伸ばし、足元をきちんと揃える。
内心で冷汗をだらだらと流しながら、自分の置かれた状況を再確認するべくサッと部屋を見回した。
そこはMI6の応接間兼作戦会議室で、正面に当たる席に弟の姿は見当たらない。
その事に先ず胸を撫で下ろして、他の人の気配を探る。
シャーロックが髪を撫でたり、慌てて起こす気配が無かったから、醜態を仲間に晒してはいないとは思いたいが。
それなりの広さのある部屋の中、あからさまに何も聞いていませんと言った表情でティーセットを片付けるマネーペニーと、部屋の隅で花瓶の花の差し替えをしていたフレッドの耳が赤い事からそれは叶わぬ願いだったと伺い知れて、ウィリアムは思わず両手で顔を覆った。
「シャーリー、なんで起こしてくれなかったの」
「いや、起こしただろうが。何回も」
「あんな風に髪を撫でられたら、向こうにいた時と勘違いしてしまう」
「俺のせいかよ」
ウィリアムの照れ隠しの八つ当たりをさらりと流してシャーロックは書類を最後まで読み切るとウィリアムの方にポンと投げてよこした。
「これ、目ぇ通してくれよ。あと、リアムはちょっと疲れてるみてぇだし俺がとびきり苦い珈琲を淹れてやるよ」
いくら慣れ親しんだ場所で、シャーロックが隣に座っていたからとは言え、このような場所でウィリアムが寝ぼけるほどに寝入ってしまうのは疲れが溜まっているのか、英国に帰って来た事で気が昂っているのか。
どちらにせよ、常とは違う様子を感じ取ってシャーロックはウィリアムのためにキッチンへと向かった。
部屋に残っているのがマネーペニーとフレッドならば、変に彼をからかったりすることもウィリアムが気に病む事も無いだろう。
英国に帰って来てから、シャーロックは221bに、ウィリアムはこの貿易社に住むようになって一緒に居る時間は格段に減った。
仕事の話で会う事は多いけれど、一緒に住んでいた時のように彼の生活の全てを傍で支えている訳ではない。
久しぶりに肩に凭れてきたウィリアムの重みや匂いに、他に人がいるのに髪を撫でてしまったのは自分の落度だ。
つい、NYでの生活を思い出して距離感を誤った。
肩口からふわりと香るウィリアムの香水の香り。
勝手知ったる貿易社のキッチンで珈琲を淹れるためにお湯を沸かしながら、シャーロックはこの後どう言い訳をしてウィリアムを一晩連れ出すか……と、その優秀な頭脳をフル回転させるのだった。
おわり
本当はルイス君を出したかったんですけど、ルイス君が出てくると刃物が出てきて収拾がつかなくなるのでやめました。
ボンド君も出す予定だったんですが、ウィが滅茶苦茶照れてしまって拗ねて口利いてくれない方向になりそうだったのでこれまたボツ。
滅茶苦茶無難な道を選んだら、しぬほどさらっとしたお話になりました……
さじ加減難しいです。
ご覧くださりありがとうございました!!!!
アーカイブ残して欲しいと事前にご希望を戴いておりますので、こんな拙い話ではありますがアーカイブを残したいと思います。
嬉しいですありがとうございます^^
短いお話でしたら沢山書けますので、また配信したいと思います!!
ありがとうございました❤