ハウェルズ氏と共に孤児院に篭って『緊急強行』を凌いだ鳥子小冬は、ルークが『第柒民栄』に回収されたことをハウェルズ氏伝いに知った。なんでも連絡があったそうだ。
あれほど栄えていて、学校まで向かうまでの道も様変わりした。
かつては『白峰の旗』が掌握して長かった地点だっただけに、いろいろ塗り替えられたり、看板や張り出された兵庫が変わっていたりした。
人々は毎日夜になれば楽しく酒を飲む大人であふれていたが、ここが戦場だったことを砕けた壁やアスファルト、刀傷の残った柱や弾痕が痛烈に訴えかける。
平然と進む日常に違和感を覚えざるを得なかった。
学校は戦争において不可侵の領域であるため、傷一つなかった。
教室にいる顔ぶれが違うのは、先の戦いで死んだ人がいるからだろうか。
死んだ、人。
そう思うとすれ違っただけの彼や、彼女を一瞬だけ思い出して。
トイレに駆け込んで何度も吐いた。
気付けば保健室、気付けば自室。
学校で勉強をして見ようだなんていう高尚な思いはどこへやら。
鳥子小冬を襲った大きな倦怠感と空虚な思いはやがて彼の足を鈍らせた。
ある日学校から帰ると、自室には先客がいた。
ベッドに横たわり大きく深呼吸。
何かを堪能するように身もだえしながら、主の帰宅を待つ少女は――
「あは、ようやく帰ってきた!」
「壬生、鴇依ッ!」
小冬は鴇依を掴みかかると、そのままベッドに強く押し倒した。
「今日は大胆だね!今までそんなことしなかったく・せ・に」
「うるさい…ちょっと黙ってろ」
「私にそんな口を利けるように教え込んだつもりはないんだよねぇ」
鴇依は挑発的な態度を続けながらも、小冬の股間を服の上からなぞる。
あの日。
鳥子小冬は、壬生鴇依に犯された。
あの雨に濡れた少女がこの壬生鴇依だったことに気付くのはそれからしばらく後だったが、彼女が自ら壬生鴇依と名乗ったこと、それに屋上ですれ違ったときの整髪料の香りが鮮烈なあの夜の初体験に紐づいてしまい、認めたくはなかったが体が覚えていたという事実に目をそむけたくなった。
「教えろ」
「何を?」
「世界のすべてを」
あまりにも唐突な発言に鴇依は思わず笑いだす。
「ばっかじゃないの!自分が知らなかっただけでしょ?で、手近な存在を捕まえて教えろ?代償もなく?今君の生殺与奪を握ってるのはあたしだよ?はーなきそ。涙出てきた。おもしろ」
強く襟元を絞め、もう一度押し倒す。
やわらかいベッドに強く沈む小さな体躯の鴇依。それより30㎝程度背の高い小冬。
小冬の力が強くないにしても、鴇依の身体でその押さえつける力を受け止めきるには難しいものがある。
「教えろ」
「はっきり言わなきゃわかんないようだから教えてあげる。私は世界のすべてを知っているような顔をするのが得意なだけ。それに貴方は何も知らない。貴方という存在に価値を見出しているのは私だけど、貴方が何か知っているならとっくにもう飼い殺しにしているのよ鳥子小冬」
不利な体勢でありながらも尚、饒舌に。
そして今まで見たこともないような挑発的な態度。
最初に出会ったあの幼女は演技とはいえ、まったく真逆のスれた彼女の言葉には迫力があった。
その一瞬のゆるみに鴇依は足を滑り込ませ、みぞおちあたりを深く足で押し込んだ。
人の足の力を早々押しのけられるような体幹をしている人材は稀有だ。
小冬は何せ軍属でもないのだから、虚を突かれればそれくらいで体勢を崩すこととなった。
鴇依はそのまま起き上がると、大きく深呼吸。
「あたしは、キミが何から何まで覚えているのか聞きたい、世界のすべてを教えてと問いたい。記憶喪失だなんて嘘、いつまで吐くの?」
叫ぶわけでもなく、つぶやくわけでもない鴇依の言葉が小冬に悪寒を走らせた。
はっきりとクリアに聞こえたその言葉を理解した小冬の耳に、
「あの火事の日、貴方の家はなぜ燃えたの?」
孤児院に入る前のことを突き付けられた小冬は、瞳孔を徐々に開きながら。
高速で思考し。
そして何かを思い出すようにうわごとを早口でつぶやき続けた後。
気絶した。
硬い壁と床の方に揺れて倒れようとする小冬を慌てて掴み、ベッドに引き込むと。
鴇依は大きくため息をついたのだった。
今から十年近く前。
とある大豪邸が大火に見舞われる。
その家に住んでいた家人の名前が「鳥子」であった。
当時の新聞記事やニュースなどでは電気火災ということになっていたが、不可解な点が多すぎた。
大規模ではないにせよ、住み込みのメイドもいたとされる大豪邸。
そんな中で火元は
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小日向葵
コメントは見てますんで、なんかあればどうぞ
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向き
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でぶりーふぃんぐのーと を りあるたいむで かくよ
初公開日: 2020年04月26日
最終更新日: 2020年04月26日
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負債1