何故同タイプしかいないのかという話
 さてそんな訳で、スピカ及びマスターと共に『スポット』に向かい、戦い方及び実力を見て貰おう、という事になったのだが。
「何故よりによって……」
「「?」」
 手続きを、手本にする為とはいえ丸投げしたのがいけなかったんだろうか。マスターの鍵、ギルド証を使って部屋中央の扉をくぐった先の光景は……狭い、実に狭い洞窟だったのだ。
 いやまぁ、マスターというか『アベンチャーエール』の冒険者たちにとってはやりやすいのだろう。後ろが取られづらく、一度に向かってくる数が制限されて、かつ距離も取られない。
 それは分かる。の、だが。
「何だ、文句あんのか?」
「言っては悪いが大ありだ。どうやって戦えというんだ、そちらはよくてもこちらは全く良くない」
「…………あっ!? そ、そうね、そうよね!? ごめんなさい!」
「何でスピカキャッツが謝んだ?」
 もちろんそれは、物理近接な戦い方をする『アベンチャーエール』所属一般冒険者の話、であって……魔法遠距離を主体とするこちらの場合、射線は通らない、視界は悪い、隠れるところも逃げ場も無い、はっきりいって相性で言えば最悪の場所だ。
 そう反論した所で、スピカは気づいたようだ。即座にこちらに頭を下げてくるが、不機嫌になったマスターは気づいていないようだ。
「何でも何も……そちらにとって相性がいい場所、という事は、タイプが違う場合は相性が最悪だという事でもある。敵に突っ込むその背中ごと撃てばいいのか?」
「……あー……そうか、しまったついいつもの新人のノリで選んだが、そうだな」
 いつもの新人のノリ……。
 ……『アベンチャーエール』に物理近接しかいないのはこのマスターのせいじゃないか? こんな場所を選んで連れまわされればそりゃ物理近接にしかなりようが無いだろう。つまり、自業自得では?
「……早まったか」
「待って! 出て行くのは待ってぇえええ!!」
 他にもギルドはあるみたいなことを言っていたし……と思いつつすすっと後ろに下がると、スピカががっしとコートを掴んできた。というより、縋って来た。あぁうん、待望の魔法遠距離系って言ってたものな。
 無自覚でやらかしているマスターはともかく、苦労しているスピカには悪いとは思う。思うが、それとこれとは別の話だ。
「とにかく、だ。ここでは働きようが無いから見学に徹するし、さっさと攻略してくれ。で、次は自分で選ばせろ」
「おう、態度のでけぇ新人だな。あん?」
 ……スピカが「誰のせいだと……」と小声で呟いていた。あぁうん、この場所でこの態度で、他の道に進みたい新人が居ても物理近接になるか、このギルドから抜けていったという事だな。通りで同じタイプしかいない筈だ。
 それはともかくとして、握りこんでいた通常弾……ガラスビーズ、透明な、魔力弾となるそれをパチンコにセット。ひょい、とマスターの頭に狙いをつける形で構えた。そのまま撃つ。
「うおっ!?」
「ギャッ!」
 流石に体を右に傾けて避けたマスター。マスターは避けたので、その向こうから大口を開けてマスターの頭にかじりつこうとしていた、巨大な蝙蝠に魔力弾はヒット。ぼとりと蝙蝠は落ちて、三角錐……5面の結晶こと魔石になった。
 後に続く蝙蝠は居なかったので、パチンコを下ろす。
「こういう事になる訳だが、それでいいんだな? 現状唯一の前衛であるマスター」
「ぬっぐ……そうか、遠距離って事はそうなるか……」
「これはマスターの『スポット』選びが悪いわね。……選んだ理由だって、どうせ私や新人さんに格好いいとこ見せようと思ったからでしょ?」
「ぐっ!!」
「こんな狭くて暗い場所じゃ、どうせマスター自身の身体に隠れて何やってるかなんて全然わからないのに」
「ぐっ!?」
 ……そういう理由だったのか。
「……それで実質新人の戦闘スタイルを制限していれば世話は無い……」
「うっぐぅっ!!?」
 どうやら一応自覚はあったようだ。狭い洞窟の中でうずくまってしまった。こちらとしては、実質的に道を塞がれたという事になる。つまり、邪魔だ。
 とはいえ蹴り飛ばして進む訳にもいかず……。結局、しばらくその場で、時々やってくる蝙蝠を打ち落とす仕事をすることになるのだった。
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文字通り世界の皺寄せを受ける話 9
初公開日: 2020年04月25日
最終更新日: 2020年04月25日
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コメント
これは多分現代ファンタジーな感じ。
8の続き。
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