※こんばんは!えふご夢SS書きます。
お題は随時募集中。コメントで投げていただけたらめちゃくちゃ喜びます。
お題
○これで最後
○親殺しのパラドックス
○物の怪
○最高の夏
○カタリナの車輪
○モラセス
○これで最後
▼往来で女に口付けをする様な、思慮に欠け世間体をかなぐり捨てた男では無かった筈だ。彼はいつも飄々として笑顔を振り撒き、誰にでも気安い英霊だ。マスターである彼女にはいっとう優しく甘い言葉をかけて労っているのを何度か目にした事がある。墨色の嫋やかな髪は丁寧に櫛が通されていて、こんなにも乱れた所は終ぞ見たことが無かった。
籠手を嵌めた大きな手が、彼の目の前を通り過ぎようとした私の手首を不意に掴み驚く間も無く中性的な尊顔が降ってきて私の唇へと柔らかい感触が齎される。
悲鳴が聞こえる。絶叫では無く息を飲む様な。見たく無いものを見てしまった時の様な引き攣った声だ。筋肉に覆われた見事な上体を屈めて私に口付けする姿を、声の主達は見たくは無かったのだろう。
ぷは、と空気を求めて口を大きく開いたと同時に拘束から解放され、口元に手の甲を当てながら一歩退く。いつもの笑顔は形を潜め、長い睫毛に覆われた瞳は獰猛な光を宿している。
「なんで、」
「なんで?こっちが聞きたいね。アンタはあの夜俺のものになったんだろ?それなのにどうして別な男に気安く触らせるんだ?」
「あんなのはその場のノリというか…別に私は貴方の恋人じゃ無いし。」
人目のある場所で痴話喧嘩をする趣味は無い。一刻も早くその場を去りたかった。けれども彼はそれを許さず、私の前に躍り出て行手を阻む。きつく睨めつけられながら、私も彼から視線を逸らさない。彼に誘われて一度閨を共にしただけの関係であり、普段軽薄な態度を取っている割には存外重い男の様だ。
「兎に角此処で言い合いを続ける気はないですから…!そこを退い、」
押しのけようと彼の身体に手を添えた瞬間に、はらりと降ってきた生温い水滴に目を剥いた。液体は彼の瞳が溶け出したもので、彼は眉根を寄せて泣いていたのだ。
「アンタ好きって言ったじゃん!俺もかわいいと思って抱いたのにさぁ!酷い…。」
駄々を捏ね泣き喚く様はまるで子供である。無頼漢は何処へやら、流れる涙は止まる事を知らずぐずぐずと泣き続ける。其の泣き声を聞いて彼のマスターが走り寄り状況の説明を求めてきたので渋々事の経緯を話すと、彼女はため息をついて静かに言った。
「それは#name2#さんが悪いです。」
「はい…。」
「確かに燕青は軽薄そうに見えるかもしれないけど、本当は一途で純情なんですよ。」
「でもね藤丸さん。」
「でもも糸瓜もありません。#name2#さんは責任を取るべきです。」
献献と説教されている途中に彼を仰ぎ見れば、真っ青な籠手に包まれた両手で顔を押さえてひくひくとしゃくり上げている。純情というかこれじゃあ女子中学生の様じゃ無いか。
※今日はここまで。寝ます。おやすみなさい。