さてそんな訳で、晴れて(?)独学でちまちまやっていた一般人から、組織のバックアップを受けられる正式な「冒険者」になったのだが、特にやる事が変わった訳じゃない。
説明に続いてマスターに連れられて、バーのバックドア、調理場に続くのかな? と思っていた扉をくぐると……そこにも酒場があった。ただしこちらは部屋が丸く、壁にずらりとカウンターのようなものが広がっている。
そして中央に、飲んで食べて騒いでいる(たぶん)「冒険者」のテーブルに囲まれるようにして、三角に組まれた掲示板のような物と、その真ん中にででんと立っている扉があった。
「ここがギルドとしての本体だ。今ここにいる奴はほとんど同じギルドの仲間だな。中には他所から来て酒盛りに場を借りてる奴もいるが」
「…………明らかに建物に入らない部屋に見えるんだけど?」
「そりゃギルドとしての恩恵の1つだからな」
『スポット』にならないように空間をいじっているのだそうだ。すごいな。
さてそれはそれとして、あの壁に並んでいるカウンターのような場所がそれぞれ、魔石の換金、装備の強化や進化、色々な効果の付与、スキルの習得や変更を行う場所らしい。働いてる人? ……人間に見えるけど、うん。神様とか神様の使いだったりするらしいよ。
で。あの豪華なリッチ、マスター曰くのハイリッチが居た『スポット』は、浅型にしては難易度が高かったようだ。なので、特大骨玉……外見を伝えると、どうやらアレはビッグ・ボーン・ランプというらしい……の落とした球の魔石が丁度装備の数と同じく5個だったので、その進化をした。
ら……見た目が、ちょっと豪華になった。なお、現在の装備は、パチンコ、スーツコート、靴、指ぬき手袋、ベルトだ。正しくはベルトに着けているポーチも含むのだが、これはベルトを強化すれば一緒に強化されるらしい。付属品扱いとかで。
「1個100円? 何それ美味しい」
「いや、普通はあれだけ数がいりゃ圧し潰されるからな? あんな数を文字通り一掃できるのはおめぇぐらいだからな?」
何より嬉しかったのは、ごそっとちょっとした山になる程数が手に入った、一般エネミーの立方体な魔石が現金になった事だ。お年玉の総額ぐらいが手に入って、お財布がとても暖かい。
ぐるっと部屋を壁……カウンター? 伝いに一周して、その合間合間にマスターに紹介されて自己紹介をしたりしつつ、最後に向かったのは掲示板っぽいものと大きな扉だ。……扉だけが、部屋の中央に堂々と立っている。
「で、だ。これが近隣にあってこのギルドで集められた『スポット』の情報、兼、通行証になる。外側が未攻略、内側が攻略中だ」
扉の前になって見える面が内側、この部屋に入った場所から見える面が外側らしい。なるほど。外側にはびっしりと、びっっっしりと、何かこう、ゲームの依頼表みたいなB5ぐらいの紙が張り付けられている。
対して内側は、それこそ数えるほどだ。いや、攻略中、となると、これでも十分なのだろうが。
「……思ったより湧いてたんだ」
「そりゃそうだ。あのポータルって奴がどんだけ稼働してると思ってやがる。今たしか家庭用のを開発中とかだったか? そうなると更に増えるぞ」
「うわぁ」
……便利には違いないんだけど、なるほど。この状況ならクソ発明とも言いたくなるか……。
「『スポット』に行きたい時は、行きたい通行証をここから剥がして、あっちのカウンターに持って行って認可印を貰う。そんでそれをどこでもいいから内側に張り付けて、さっき渡したギルド証を鍵穴に入れてひねればいい」
「……、あ、この歯のない鍵ってそういう」
「ちなみに帰りも、どこでもいいから扉の形した物にギルド証を使えば戻ってこれる。んで、家にいても旅行に行ってても、それを使えばギルドとしての本体であるこの空間に来れる」
「便利」
「だろう?」
ちなみに、見た目は銅で出来た歯のない鍵だ。頭の所が平たい四角になっていて、そこに剣とビールジョッキが交差している柄が浮き彫り? にされていた。たぶん、この柄がギルドのシンボルマークみたいなものなのだろう。
首から下げる紐も一緒に貰ったので、もうすでに首から下げてコートの下だ。それを引っ張り出して、へー、と改めて部屋の中央の、非常に大きな扉を見る。
「……この、ギルド証? の移動は、『スポット』にならないの?」
「あぁ、聞いた感じはポータルに近いからか。詳しい事は俺にもよく分からんが、こっちは神や仏や、それこそ「世界の意思」の不思議な力で移動してるから大丈夫なんだと」
「へー」
ポータルはダメでこっちはいいのか。
……ポータルの代わりにこっちを普及させればいいんじゃないの? まぁ、やってないって事はそれはダメなんだろうけど。
「さて施設と仲間への紹介はこんなもんだな。で、攻略に行くなら付き添うが?」
「え、帰って寝るけど」
付き添うが? じゃないんだよなぁ。夜に呼び出して長話されて、全部大事な話だったから一生懸命頭を使って、大変眠い。帰るに決まってるじゃないか。