[前提]
水麒(すいき):一期一振。王を選ぶ神獣だが、普段は人の格好をしている。
五条:鶴丸国永。水国の王。
一期:一期一振。水国の麒麟(オス)
字名(あざな):本名を軽々しく呼ぶのは失礼にあたるという文化のため、本名とは別に付けられたあだ名。
即位から数年して、一期が他国の麒麟交流を持とうとする章。
★以下本文★
予兆はあった。
国境付近にポツポツと難民が現れるようになってから、約三年。
ついに水国の西の隣国の王、紫王(しおう)が崩御したとの知らせがあった。
反対の隣国である緑国とは違い、俺の即位後の交流はほぼ無いが、数年前から妖魔が出現するようになったという噂から考えるとよく持ったものだと賛辞を送りたい。
聞くところによると、紫麟(しりん)が失道の病にかかってからは立て直そうと躍起になったが、重篤化してからは諦めたそうだ。崩御するまで自身が亡くなったあとの民のために出来うる限りの対策を行い、そして死んだそうだ。
鶴丸が即位してから七年。王になって初めて体感する、他国の王の崩御だった。
ようやく水国が立ち直りはじめた矢先のことだった。
軍人上がりの女王で、四十年ほどの在位。一度会ってはいるが顔は朧げにしか覚えておらず、気の強そうな女性だなぁと思った記憶しか残っていない。
紫麟は気難しそうな気質のようだったが、互いを思いやっている様子は伝わっていた。
そんな二人でも、四十年。
おれは一期を気に入っている。
無条件に俺を慕う様子もあるが、してはいけないことをしそうになると諌められるし、俺の嫌いなところはハッキリと主張する。そういう、俺を全肯定しないところも可愛らしいと思う。
七つの時出会った彼ももう十四で、青年に近付きつつある少年だ。
あどけなさは日々無くなっていはいるが、可愛いものは可愛いのだ。
俺は、俺を選んでくれたあの優しくも厳しい麒麟を、この世界から損なわせてはならないと思っている。
俺の王としての期限はいつなのだろうか。
そんなことをぼんやり思いながら、これから押し寄せてくるだろう紫国からの難民をどうするべきか、知らせを持ってきた鶯丸に訪ねるのだった。
紫王崩御の知らせから約一年数経ったある日のこと。当日分の職務を一通り終わらせた一期がその日の報告をするために俺の執務室を訪れた。
いつも通り口頭で簡単な伝達を受けたあと、神妙な顔をした彼が言いにくそうに告げた内容に目を見開く。
「蓬山へ?」
「はい、許可を頂きたく」
いきなりの申し出に驚く。急に蓬山に行きたいと言い始めたとこに、ではない。少し遠出をするのに態々俺の許しを得ようとしに来たからだ。
「別に構わんが…」
無意識に語気が弱くなったのを、渋々了承したのだと勘違いした一期がしゅんとなって俯いたので、慌てて訂正する。
「一期、確かにお前は水国の麒麟で宰輔だが、なんでもかんでも俺にお伺いを立てて服従しなければならない、なんてことはないんだぞ。
君は任せていることをほっぽり出したりしないだろうし、少しどこそこに行ってきます、という宣言ぐらいで充分だ」
麒麟は必ず宮中にいなければならない、という決まりもないし、これからつくるつもりもない。放任主義というのだろうか。俺は一期に窮屈な思いをしてほしくないし、職務さえきちんとこなしていれば特に外出に文句をいうつもりもない。
もっとも、一期は麒麟という慈悲の生き物故なのか、元来の性格なのかは知らないが、自分がやるべき仕事に手を抜かないし、勉学もおろそかにしない。職務放棄することはないだろう男なので、恐らくこれからも外出を咎めるなんてことは起こり得ないとは思っているが。
「あの、ですが...」
自分が望んでいることとはいえ、私用で外出することに罪悪感があるのだろう。蓬山へは、いくら麒麟の足が早いとは云えど往復で二日はかかる。それに加え、用事を済ませることを考えれば、最低でも三日以上が必要になるだろう。
思い返せば、即位から纏まった休暇などもらっていないはずだ。一期ももう十五歳の青年。健全な男であるし、鬱憤が溜まっていてもおかしくない。
なにかを言おうと口を開いた一期を手で制す。
「蓬山だけと言わず、そうだな、十日ほど休みをやるから、好きなことをして羽根を伸ばしてくるといい。君は真面目で根を詰めすぎる質(たち)だからな。国内も落ち着いているし、いい機会だろう」
それに、と未だ迷っているらしい一期に言葉を重ねる。
「麒麟は民意の化身というだろう。麒麟を大切にできない王は、民も大切にできないと思っている」
俺は民に、ただ仕事や役割を全うするだけの人生であってほしくない。それは一期に対しても同じで、その生が終わるまで、一生は楽しむためにあると信じている。
一期も俺の言わんとしたことを察したようで、先程までの後ろめたそうな表情ではなくなった。
「明後日から、一期に十日間の休暇を与える。好きに過ごすといい」
「拝領いたします」
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【原稿】十二国記パロ いちつる
初公開日: 2020年04月20日
最終更新日: 2020年04月20日
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コメント
とうらぶ いちつる の十二国記パロ。
話の都合上、男士が女性になってたりします。
夏コミ新刊になったはずの原稿です。
今書けてるものの一部を抜粋して続きやっていきます。
2時ぐらいまでやる予定。
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