【プロット】
付き合って結婚するまで。
【本文】
[プロローグ]
「ごめんなさい、わたし、よく、分からないんです」
 以前に比べて回らなくなった舌をどうにか動かして言うと、目を見開いた先輩がなにかを言いかけて、つらそうに唇を噛んだ。
 そんな顔をさせたいわけじゃないのに、笑って自由に過ごしてほしいのに、私の役立たずな脳みそでは気のきいた言葉ひとつですら出てこない。
「気にしないでください、わたしは大丈夫ですから」
 そう笑ってみせたのに、先輩はつらそうなままだ。泣くのを我慢しているように眉間にシワがよっている。
「小エビちゃん」
 ささやくように搾り出された呼び掛けに返事をすると、とうとう堪えられなくなったのか、大粒の涙がこぼれ落ちた。そんな姿でさえ好きだと、わたしは場違いな方向に思考を走らせる。
 目の前にベールがかかっているかのように、ぼんやりとしか物事を知覚できなくなってしまった。そんな私が自信を持って言えるのは、もう、先輩を好きだというこの感情だけだった。
[1]
 私がこの世界に着て三度目に訪れた、初夏のころ。実習をほとんど終えて余裕のあるらしいフロイド先輩に、私は告白された。
「ねぇ、俺と付き合おうよ」
 語尾にハートマークが付きそうな、高めで甘い声。
 暑さと少しの空き時間を理由に、中庭のベンチに隣り合って座り、棒アイスをなめていた時のことだ。きつい日差しを遮る木陰と、穏やかで絶え間ないそよ風。気温は高いものの不快指数は低めで、私はフロイド先輩にご馳走してもらった、冷たいアイスに夢中だった。
 かじらず舐める派の私がちまちまと食べ進めている間、早々に食べ終わってしまった先輩は、残った棒を噛んでいた。私はひたすらアイスを舐めているので会話はなく、先輩もぼんやりと風に揺れる木々を見るでもなく眺めている。と、思い込んでいた。
 最後の一口を棒から滑らせて口内におさめたときだった。
 ごろん、となんの予兆もなしに先輩がベンチに寝っころがったのだ。座っていた私の太ももはちょうど枕にされ、自力で立ち上がるのは不可能な状態になってしまった。
 ギョッとして見やると、仰向けになって私を見てニヤニヤと笑う先輩と目があった。あまりに絵になる光景に心臓が跳ね、なんだかいたたまれなくなって目をそらすと足置きにされた肘掛けが支配に入る。相変わらず長い脚だ。
「どうされました?」
 なんとかアイスを飲み込んで言うと、至極楽しそうな表情のまま言われた。
「ねぇ、俺と付き合おうよ」と。
 何をいっているんだ、と思った。私の密やかな想いを死っての発言だろうか。
 いままで、フロイド先輩にはあくまで「可愛がられている後輩」としてしか接されていない。確かにスキンシップは多めだったと思うが、それはジェイド先輩やアズール先輩と比べても大差ないくらいの頻度と度合いだったはずだと記憶している。構われ具合だってエースとほぼ一緒だと思う。わたしには、フロイド先輩が私に交際を申し込む理由がわからなかった。
 ーーーでも、これは千載一遇のチャンスだ。あと数ヵ月で卒業してしまう先輩の、単なる気まぐれであっても、なんだったら卒業までの遊びでもよかった。はじめて誰かと付き合うなら、それは私が好きな人がよかった。
「いいですよ」
 願望のままに答えると、先輩は嬉しそうに笑って私にてを伸ばしてきた。大きな手が私のうなじから後頭部を撫で上げて、最後にのばしている髪をさらってすいていく。
「じゃあ、小エビちゃんは今から俺の彼女ね」
 そういってギザギザのはを見せて笑った彼は、ゾッとするほど美しかった。
[2]
 交際は、予想していたより順調だった。自由奔放な先輩に引きずられるかたちで、男女交際においてのセオリーをクリアしていった。
 先輩はあまりにも積極的で、私がきんちょうで慌てている姿でさえ楽しんでいたように思う。
 デートをして、手を繋いで、キスをして。わたしの心の準備なんてお構い無しで進められていく関係に、私はついていくのに必死だった。恥ずかしがるわたしの反応も楽しいようで、慣れるまではひかえめにして欲しいという私の意見は何度も即時却下された。
「小エビちゃんのペースにあわせてたらなんにもできないでしょ?」
 先輩の主張はもっともで、奥手も奥手な私は連れだって歩くだけで緊張してしまう。いままでは先輩後輩の関係の時は普通に振る舞えたのに、今では手を握られただけで挙動がおかしくなる。こんな私にあわせていたら、スキンシップ当たり前の文化圏出身の先輩からしたらとてつもなく物足りないだろう。
「それはわかってます。でも急過ぎて、心臓もたないんです」
 フロイド先輩にあわせたい気持ちはとてもあるが、でも男女交際など生まれて初めてな私はいっぱいいっぱいだった。すこしは私にあわせてくれてもいいんじゃないかと思って先輩を睨むが、それに対して余裕綽々というか、なんだかとても楽しそうだ。
「結構あわせてあげてるじゃん。まだダメなの?」
「ダメです、もっとゆっくりがいいです」
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フロ監♀ 原稿 冒頭部分
初公開日: 2021年04月26日
最終更新日: 2021年04月26日
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コメント
エアブーに間に合わせたいので、とりあえずで飛ばしてた冒頭部分書く。
フロ監♀ 未来(とても)偽造
人によってはムナクソに感じるかもしれないので気を付けて。
女監督生の固有名:ユウ
書いてる人:光葉(ハピエンを目指している)
【注意】
好き勝手書いてるので読み手の好みを選びます。
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