『傷だらけの愛を』の続きを書いていきたいと思います。交流する座布団です。
③の続き
個展が終わったのは十九時半。片付けはまた明日時間があるので、今夜は手伝ってくれた人や場所を貸してくれた大家さん、見に来てくれた商店街の人などを巻き込んだ打ち上げがある。
大倶利伽羅に声をかけられたのは店に移動するかとぞろぞろ歩いていた時だった。
「国広すまない遅くなった」
「大倶利伽羅」
大倶利伽羅はボロボロだった。汚れたパーカーにジーンズ、髪もぼさぼさでよく見ると髭まで生えている。
「どうしたんだその恰好」
「ライブの準備抜けだしてきたんだ」
「じゃあ時間がないな。御手杵、後から追いかけるから抜けてもいいか」
「おお、わかった」
「大倶利伽羅行こう。見せたいものがある」
商店街に戻り、並び立つビルの間にある急で狭い階段を使って二階に上がる。ガラス戸のカギを開けると個展会場だ。真ん中に壁があり、左右に分かれて御手杵と俺の展示がしてある。
個展会場は誰もおらず、コンクリートの壁に二人分の足音が響くだけだった。久しぶりの大倶利伽羅はなんだか眠たそうだ。仮眠もとれていないのかもしれない。
「これはずいぶん昔の俺のスケッチだな」
入り口の絵をみた大倶利伽羅は久しぶりに口を開いたかのように小さい声で言った。
「大倶利伽羅、奥で待ってるから順に見てくれるか」
「ああ」
絵を見る大倶利伽羅を置いて奥の一番大きな絵のを見ながら待つ。
これを見て大倶利伽羅はどう思うのだろうか。歌仙は気が付かないはずがないとのことだったが本当だろうか。
ゆっくりした足音がして止まる。しばらくするとまた足音がして、大倶利伽羅が近づいてくる。何度か繰り返して、大倶利伽羅は俺が見て描いてきた絵の大倶利伽羅をなぞってきた。
「国広、これは……」
「俺が今まで見て感じたあんただ。これが大倶利伽羅に対する俺の想いで、す」
「そうか……満足いくように描けたんだな、俺も好きだ」
「……俺も好き……」
「よかった」
「ああ」
大倶利伽羅のポケットからバイブが鳴って電話がかかってきた。ため息をついて端末を出した。
「……ああ、今行く」
電話を切ると、手のひらで目をおおって深呼吸した大倶利伽羅は俺を見た。褐色の肌がどす黒くなるほどの隈、キリっとした目は瞼がほとんど閉じていて今にも寝てしまいそうだった。それでもなお大倶利伽羅は美しい。
「三日後大学公園で野外ライブがあって、そこで国永とプロジェクションマッピングをする。よかったら来てくれ」
「ああ、楽しみにしている」
会場に鍵をかけて、大倶利伽羅を見送る。駅まで送ると言ったのに店と反対方向で、あんたと離れがたくなるから遠慮すると一人で歩いて行ってしまった。御手杵に今から行くことをメッセージして、店まで歩く。
よかった、伝えられて。しかも大倶利伽羅も俺のことを好きだと言ってくれた。打ち上げも楽しみだが、今日見た大倶利伽羅をスケッチしたいなと考えながら店のドアを開いた。
③終わりです