面差しにはまだ幼さが残る、少年と言ってもいい歳格好の上級天使はしかし、その背に背負った巨大な偽翼のもたらす光背(ホロー)効果によってか「偉大な指導者」としての強烈な印象をもたらしていた。
 そしてなによりもその異貌。
 見るものに否応なく神秘性とカリスマ性を印象付ける、輝く金色の髪。
 神への道を見据えていると噂される、深く紅い瞳。
 今や外見などどうとでも変えることができる時代の中であっても、否、だからこそこれこそが本物だと見るものを惹きつけずにはいないその異貌が、上級天使に圧倒的なカリスマを与えていた。
 その白金の髪と真紅の瞳の異貌に視線を集め、上級天使は宣言する。
「我らが教団が擁する神、創造維持神。その御言葉(ダァバール)は未だに得られていない。なぜか? それは、我々と神とのあいだの媒(なかだち)となるものがなかったからだ」
 壇上の傍らから、黒白(こくびゃく)の偽翼を持つ教団第二位の偽装天使・天導天使がストレッチャーを押して壇上に上がった。ストレッチャーの上には純白のシーツがかけられており、その上にはひとりの……否、ふたりの少年が乗せられていた。
 二人の顔立ちは鏡写し。一卵性双生児だ。
 左側の少年は眠っているのか目を閉じて静かにシーツの上に身を横たえており、右側の少年は困惑した顔つきで、壇上から居並ぶ偽装天使の群れを見下ろしている。
 ベッドに身を横たえているので彼らは偽装天使の証である偽翼を背負っていない。彼らの偽翼は、ストレッチャーのヘッドボードにかけられている。
 その偽翼は、ふたつの偽翼が横に連なったものだ。それぞれの偽翼に翼は左右一枚ずつ。見るものに「比翼の鳥」の言葉を連想させる偽翼だ。
 つながっているのは偽翼だけではない。
 教団員の誰もがまとっている純白の教団服。ストレッチャーの上の双子もまた、同じ教団服を身に着けている。しかし唯一、他の教団員と異なる部分があった。
 双子の教団服は、腰のあたりでつながっている。すなわち、その下にある彼らの肉体も――。
「古来より、双子の誕生はしばしば忌むべき凶兆とされてきた。曰く、一度に複数の子供を産む多産は人間よりもむしろ動物に近い存在である。曰く、男女の双子は母親の胎内で行われた近親相姦の結果生まれたものである」
 上級天使はそこで、ちらりとストレッチャーの上の双子の片割れに視線をやった。紅い瞳の奥にどんな感情を読み取ったのか、双子の片割れは怯えた顔で視線をシーツの上に落とした。
 視線を正面に戻し、上級天使は続ける。
「だが別の考え方もある。地上で暮らす通常の人間が『下の人』であるなら、双子は神や精霊ではないものの神のおわす天上の世界とつながっている。双子は鳥である。天と地の狭間である空をその住処とする鳥である」
カット
Latest / 54:06
カットモードOFF