想定外は続けて見つかるという話
 割と強い、大物アンデッドである特大骨玉を倒したから安心。
 そう思っていた時期もありました。
「まさかの連続発生とか聞いてない……」
 今までの感じ、体感の経験則だと、一度仮称異世界を……攻略したら? ボスを倒したら、しばらくの間そこに仮称異世界は出来ない、筈だった。……まぁ、「最初」から数えてもまだ半年足らず、分かっていない事の方が多いのは確かなのだけど。
 それでも、昨日攻略? したところでその翌日に、ほとんど同じ所に仮称異世界が出来ているのは初めてだ。……コートを始め、「装備一式」は条件反射で装備できるようになったから、対応力は上がっているのだけど。
 結晶を使う事で内部の空間をぐっと拡大した、ベルトに下がるポーチへと買物袋をとりあえず入れておく。代わりに左手でパチンコを持って、右手はコートの内ポケットの近くへ。そこまでやって、ようやく周囲を確認すると。
「……んん?」
 ようやく、違和感らしい違和感に気付いた。
 この仮称異世界にはエネミー的な奴らが存在し、こいつらにやられてしまうと現実で「居なくなって」しまう。そして一番危険度が高いのは、この仮想異世界にやってきたばかりのタイミングだ。
 ……何せ、いきなり囲まれているとかが普通にあり得るから。まずその最初をどうやって逃げて隠れるかが肝だ。そして、大抵の場合、そこで逃げ切れずに捕まる。ジ・エンドというやつだ。
「…………」
 なのだが。今この近辺には、何もない。何の音もしないし何も落ちてない。……うん。グロやホラーへの耐性は大変と高くなったと思う。主に「先に巻き込まれて捕まった誰か」の、痕跡や悲鳴という意味で。正直、そんなのに慣れたくは無かった。
 さて仮称異世界の突入事情はともかくとして、今はこの状況の謎だ。もう一度周りを見ると、どうも昨日攻略? したばかりの仮称異世界とほぼ同じ……というか、もしかしてそのものではないだろうか?
 何となくだが、廃ビルの配置や形に覚えがあるような気がする。
「……、特大骨玉以外にも、居る?」
 しばらく考えて思いついたのは、付いたはずの決着がついていない、という可能性だ。ボスみというか主っぽさとしては特大骨玉は十分だったし、実際非常に上等な結晶を落としたからボスだと思っていたが、もしかしたら中ボス的な奴だったのかも知れない。
 となると、特大骨玉と同格の奴が複数いたりする可能性もあるし、特大骨玉以上の「何か」はほぼ確実にいるという事になる。……特大骨玉が中ボスだとすると、それを「作る」系統だろうか?
 そこまで考えて、顔をしかめた。
「面倒な……」
 主に相手の戦力的な意味で。だって下手したら無限湧きとかあり得る。こっちはとてもよく効く範囲攻撃の弾が、それこそ昨日の今日で減ってるって言うのに。
 ……が。ここで時間をおいて、一般エネミーや特大骨玉が再度現れると流石に消耗がシャレにならない。結局あの特大骨玉、しっかり「力を溜めた」黄色のビー玉を何発撃ち込んだことか。しぶとかった。
 流石に連戦は勘弁願いたい。物量で圧し潰される。そしてそれを避けるためには、こちらからその大元となっている奴を探して倒す必要がある。
「……面倒だなぁ」
 他の誰かに丸投げしようにも、本当にいるかどうかも確認していない。
 結局そう言いながらも、自分で何とかしなきゃいけないのはよく分かっているのだ。だから何だかんだと言いつつ、時々命の危機に陥る事に怯えながらも、この半年弱の間頑張っている訳で。
 もう一つだけ息を吐いて、面倒な事と厄介な事を、仕方ないと諦める。そして諦めて……ひとしきり探索をした筈の仮称異世界を、もう一度探索し始めるのだった。
 結論から言うと、推測は正解だった。つまり、親玉が別に居た。
 ただ予想外だったのは、親玉が居る場所を見つけてそこに向かう間に、「別の誰か」が先に戦闘を仕掛けていた事だ。
 ……欲張って他にも居た特大骨玉を仕留めてる場合じゃ無かったかな。
「えー、と……。うーん、ファンタジー……」
 乱入していいものか、と悩みつつ、少し離れた廃ビルの5階から戦闘模様を眺める。普通に見える辺り、たぶん何か補正がかかっているんだと思う。現実では無理だから。
 そして眺めている戦闘模様は……ローブと王冠、身長ぐらいのゴージャスな杖、黒いオーラっぽい物と、「リッチ」と言って大体想像する感じのいかにもなアンデッドが、ほいほいと普通ガイコツを黒いオーラっぽい物から出して物量攻めをしている。
 それに対して……こう、大変言い辛いんだけど。その……上半身裸に、ベルトを巻いて、両手ででっかいハンマー……打面が尖ってるから、多分痛いじゃすまない……を構えた、筋骨隆々という言葉はこの人の為にあるんじゃなかろうかという体格の、スキンヘッドに右目眼帯をした、たぶんおじさんかな……? が、無双ゲーな勢いでガイコツを薙ぎ払っている。
「……テンプレなパワー戦士……?」
 ボディビルとかやってるのか、という感じの……男性は、下半身はしっかり、皮のズボンに、鉄の……前掛けみたいな? 時代劇に出てくる甲冑の、腰の部分の……そうだ、草摺。そう、大河で出て来たやつ。あれを着けてる。流石に足元までは良く見えないが、本人の筋肉含めたあの重量でかなり動いてるから、たぶんしっかり固めているんだろう。
 吹っ飛び、砕け、バラバラになっていくガイコツは見ているだけならいっそ爽快だ。ワンマンアーミーかな。これこのまま押し切れるんじゃなかろうか。
 ……とは思ったのだが、流石にそう上手くは行かないらしい。さらに数分経過しても、えー……仮称、ハンマーおじさんが薙ぎ払う数は、仮称リッチが召喚する数を上回らなかった。
「というか、あれ、ヤバいな」
 どころか、周辺をきれいに囲まれつつある。ほぼ退路を断たれた状態で、一斉に突撃されると……何か、周囲を一気に薙ぎ払う感じの必殺技があったとしても、厳しいだろう。
 ここで改めて考える。
 さて、ここで乱入をするべきか、否か?
「ま、ここで見捨てられるようなら、色々アレコレ慣れる程戦ってない」
 考えた所で、その答えはとっくに出ている。黄色のビー玉を右手に持って、思い切り握りこむ。「力を溜める」。パキパキとヒビの入る音がするまで握って、パチンコにセット。思い切りゴムを引き絞る。
 狙いを特につける必要はない。あれだけ数が居るのだから、どれかに当たればそれで構わない。敵味方識別付きの範囲攻撃ばんざい。
「骨しかない奴だけに伝染してけ……っ!」
 そこに居る敵は、仮称リッチを含めて全部ガイコツなのだから、ガイコツだけを一掃すればいい筈だ。
 だからそう条件付けをして、割と離れたその場所から、骨だけを一掃する(筈の)雷を、ボスエリアへと撃ち込んだ。
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文字通り世界の皺寄せを受ける話 4
初公開日: 2020年04月08日
最終更新日: 2020年04月08日
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これは多分現代ファンタジーな感じ。
3の続き。
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