王宮にもどって、王妃様の情報を洗い流す。
特に二十年前、殿下の実母様がなくなった頃の王妃様の情報を探す。
誰が王妃様の立場かわからないため、俺たちは慎重に調べた。
殿下は病気で静養中ということになり、ギエム先輩が殿下の身代わりで、領地に行ったようだった。
ギエム先輩自体の立ち位置もまだ不明だ。
ギエム先輩を欠きながらも、第四分隊としての仕事をこなす。
俺は無力な女の子から、戦える女の子になるため、グラシアに鍛えてもらった。
女性というのは基本非力、体力がないことを心の底から理解して、グラシアへの尊敬の念を募らせる日々。
1か月がすぎた。
殿下のことは心配なので、定期的に連絡はしている。
殿下から届く返信はエレナさんのことばかり。
逃避行なのに、楽しんでいるみたいだ。
俺たちは結構ピリピリしながら、証拠を集めていた。
「……これで揃った。証言者もいる」
「殿下と合流しましょう」
「いよいよなんだな」
 アリシオ先輩はこの1か月半でやつれた気はするし、グラシアもちょっと精悍になった気がする。
 俺?うーん。なんていうか女性に板についてきた? 
 嫌だ、そんなの。
「カミロ。胸触らせろ。褒美をくれ」
「じゃあ、私の胸でも触ります?」
「駄目だよ」
「じゃあ、カミロ、」
「アリシオ先輩?」
「わかったよ。わかった!ちょっと言ってみただけだ」
 相変わらずアリシオ先輩は油断すると、俺の胸を触ってこようとする。
 危ない、危ない。
 ☆
 殿下と合流し、グラシアの兄のエレダー様の計らいで、王妃様派ではない騎士を集め、殿下を守りながら王宮へ帰還した。
 王妃の悪事を暴露した時、王は黙って項垂れた。
 知っていたかもしれない。
 本当は。
 王妃様は抵抗したけど、証拠は十分で証言する人も何人もいて、王妃様は流刑になった。
 第一王子は何も知らなかったのだけど、本人の希望では王位継承権は破棄された。
 そしてギエム先輩。 
 なんと……陛下の弟君の隠し子だったみたいで、王位継承を持ちつつ公爵になった。
 本人は結構する気がないから、一代限りの公爵って言っていた。
 こうして、一件落着のはずなんだけど、問題は魔獣の呪い。
 これは、王妃様が王宮から追放された魔術師によって作られた魔獣だったみたい。
 呪いを人にかけると死んでしまうらしく、残された個体はあと一匹。
 どうするか殿下に聞かれて、俺とグラシアは即答した。
 ベルタンさんを元に戻してくださいと。
 そうして、ベルタンさんは元の男性に戻った。
 殿下暗殺に加担したけど、人質を取られたこともあって、数か月の労働で罪は許されることになった。
 二人は王宮で下働きを一年こなして、無罪放免となる。
 殿下とエレナさんは、距離が随分縮まっていて、殿下はここまで計算にいれていたのかと疑いたくなった。
 
 そして俺たちの呪い。
 エレナさんから呪いが解ける可能性を一つだけ教えてもらった。
 古来から最大の呪いの解除方法として伝わっているあれだ。
 
 真実のキス。
 俺は、やっぱりグラシアが好きだから、キスをしたい。
 だけどグラシアは……。
 多分俺のことを好いてくれてると思うけど、グラシアは男性になって楽しそうに過ごしている。
 だから、そんな彼女に女性に戻ってほしいと、キスをねだるのは間違っている気がする。
 俺は毎日、この大きな胸と格闘しながら、騎士としての腕を磨いてるつもりだ。
 まあ、難しいけど。
 グラシアが幸せならいいや。
 二年後、グラシアから結婚を申し込まれた。
 俺は迷った。
 だって、女としてだよ?
 俺が……。
 そしたらグラシアが、子供は自分が産むって言った。
 二年、男性としてグラシアは生きて、十分だって言ってくれた。
 俺は嬉しかったけど、グラシアが嘘をついているみたいで、すぐに返事できなかった。
「……もう仕方ない。カミロ!」
 迷ってる俺になんとグラシアが強引に口づけしてきた。
 なんていうか、メロメロになってしまった俺、
 ぼおっとしているうちに、俺とグラシアの呪いは解けていった。
 俺は男に、グラシアは女になった。
 
「やっぱり恥ずかしい。カミロが女の子のほうが可愛いのに!」
 
 女性に戻ったグラシアが恥ずかしそうに俺から顔を背ける。
「グラシアの方が可愛いよ」
 久々の男の自分の声、違和感を覚えてしまったけど、これが俺の本来の声だ。
 
 元の姿に戻った俺たちは、結婚した。
 一年後、子供にも恵まれて幸せに暮らしていた。
 ブルーム殿下は王になり、俺はなんと護衛騎士になった。
 息子のルイスが二歳になり、俺たちはピクニックに出かけた。
 アリシオ先輩も一緒で、公爵になったギエム先輩も来てくれた。
 そんな時、悲劇が起きた。
 あの魔獣が現れたのだ。
 いないとされたあの魔獣。しかも二体。
 俺とグラシアはまた呪いを掛けられて性別が入れ替わってしまった。
 キスをすれば元に戻れるかもしれない。 
 だけど、俺たちはしなかった。
「グラシア」
「カミロ」
 俺は家庭に入り、グラシアが騎士団に再入団することになった。
 子供が生まれても、訓練したこともあって、グラシアは直ぐに勘を取り戻した。
 グラシアは毎日楽しそうに過ごしている。
 俺も息子とそれなりに楽しく暮らしている。
 
 またまた性別が逆になった俺たちだけど、誰も気にすることなく、受けれいてくれた。
 それは良いことなのか、どうか。
 アリシオ先輩が人妻?になった俺の胸を触ろうとするのは本当やめてほしいけど。
 また呪いを解くことがあると思う。
 だけど、その時期はグラシアに委ねたいと思っている。
 騎士のグラシアは本当にかっこいいから。
(おしまい)
カット
Latest / 47:24
カットモードOFF