先生と私って、親戚かなにかだったりします…?
ええと
急にどうしたのかな
いや、その
そのー…その
えと… よく… そう、その、他校の生徒なのに、すごく、気にかけてくださるので、はい もしかしてそうなのかなーとか
少し分かりやすくしすぎたかな…
え?
いや、なんでもないよ
君たちそのものが星座みたいなものだ
は?
犠牲になるべきというのであれば……
その…
それは、先生もそうあるべきってことですよね
それは嫌だなあ
先生のこと大好きだもん!
だから、犠牲になることで、先生が悲しんだり苦しんだり、死んだりとかするのは嫌だなあ
だから、一生懸命お願いすると思う! お願いして、お願いして駄目だったらお金を稼いで、欲しいものがあれば頑張って手に入れて、そうやって、その資料を譲ってもらえるように努力するよ!
戯言だ。
何故だろう。
理想論だ。
人間の卑怯さを、世界の醜悪さを知らぬ知らぬ幼い子どもの戯れ言だろう。
でも何故だろう、目が離せなかった。具体性の無い馬鹿げた言葉の一つ一つがまるで、作りたての料理が並んでいるような。重労働に、与えられた水のような。
ええ!? なんですか急に?
私は自分を犠牲にするつもりはないから、それは勘弁したいなあ
では、どうする?
が…頑張って…お願いする。
君らしいね。
まただ。君らしい。彼の中にある私らしさとはいったいどこから持ってきたものなのだろう。親戚でもない、知り合いでもないという事実は今彼の口から示された。らしさという概念を構成するためには個人のエピソードや人となりを理解する必要があるだろうに。ホントに謎だ。
そればかり返されるのも気になるし。そうなんだとか、へえとかじゃなくて、君らしい。それほどに私が私であるという事実が彼にとって印象深いことなのだろうか。たかが教え子の友人であるというだけの私が。
まあ…でも
私は先生のことよく知りませんし
先生の言う私らしいがどこから来てるのかも分かんないですけど…
私も、ラファウ先生らしさを少しは見つけようかな
え
なんですかね うーん ブラックコーヒーばっかり飲んでる! ……とか?
……なんだか浅すぎやしないかい。
何言ってるんですか まずはこういう、分かりやすいところから分かっていくのが大事なんですよ
あとはーうーん 星を "愛してる" ところ!
より深い感情を指す語彙を当てはめてきた彼女は、屈託のない顔で笑っていた。
全く君らしい。思いがけない言葉ばかり人に与えて突発的な興奮と信頼を与えてくるところ。ラファウはそうだねと肯定しながら、記憶のなかにいるそれより少し大人びた顔つきの彼女を眺めた。体の部位が骨の成長に伴って長くなり、丸かった顎の輪郭はすっきりと女性らしい。女性らしさを象徴するために伸ばしていた髪はまるで解放された喜びを現すかのごとくすっきりと涼やかだ。そして、星や数学など数字を使うものより、人や社会の内にある目に見えない概念的ものについての研究に携わっている。
君がちゃんと見つかって、よかった。
あとイラついたとき笑顔のまま1秒くらい固まりますよねとあまりよくない方向についての指摘も現れたところで、ラファウは店を出ないかと提案した。