生田から教えられた行軍の基礎だ。無事に帰投するためにと生田はそらに言い聞かせた。
『体が冷えれば直ぐに動けなくなる。君の体はまだ小さいのだから尚更だよ。体力を温存して、目的遂行しなくちゃいけない』
「たいりょくは、おんぞん」
けれどいったい何処へ行けば生田に会えるだろう。いやーー彼にはもう会えないかもしれないが、少なくともあの、分室へ戻れば、とそらは思う。
(ばってん、ばしょもわからんけん)
持ち出してきたタブレットだけが頼りだ。そこから、公安のシステムへ入って現在位置から分室へのルートを確かめる。おおよその方角を確認すると、そらはまたそのタブレットをデイバックへと戻した。充電は満タンにしてきたけれど、分室までは何日かかるかわからないのだ。大事に使わなくてはいけない。
デイバックには携帯食料を詰められるだけ詰めてきた。台所の戸棚にいっぱい入っていたそれがなにか、とパパエンデヴァーに尋ねると、ホークスが飛行中にカロリー摂取するためのものだと教えてくれた。
小さくて軽いから、小さなデイバックにもとてもたくさん入った。
(全部もらってきちゃったから、けーごくん、おこるかなぁ)
最後だから許してほしい、と思いながら、再び膝を抱えて外を見る。
そろそろ家では、自分がいなくなったことが判明している頃だろう。きっと、いなくなってくれてよかったと安心してくれているはずだ。
俺が、あの家に居ていい理由なんて何処にもないのだから。
(だって、脳無から生まれた子供なんて、おらんほうがいいに決まっとる)
雄太が見せた動画の中で、パパエンデヴァーやけーご君が戦っていた脳無ーー雄太はそれを、人造ヴィランだと言った。
それが自分の母親であり、けーご君の預かり知らぬところで勝手に生まれてしまった。
憎まれて当然だ。ヒーローであるホークスと、人造人間との子供だなんて。
「ころしたい、って思うやろなぁ」
パパエンデヴァーは、仲良くなってほしいし、けーご君もそうなろうと努力してると言っていた。
だから、俺にもそんなに拒まないでほしい、と。
でも、と膝に顔を埋めたそらは、寂しそうにつぶやく。
「嫌われとるのは仕方なか……俺がぜんぶ悪い」
あのひとを苦しめたいとは思わない。だからあの家を出ていくのだ。
生田が待っているだろう分室へ行けば、なんとかなるはず。
「雨、降り始めちゃったね……そらちゃん、雨宿りしてくれてるといいんだけど」
カット
Latest / 23:13
カットモードOFF
文字サイズ
向き
チャットコメント通知
とりのこ そらの家出シーン
初公開日: 2026年04月19日
最終更新日: 2026年04月19日
ブックマーク
スキ!
コメント