花吹雪が舞っている。和やかな陽気の中、幸せそうに微笑む二人が今日結ばれた。結婚式である。
「なんか結構良いものもらったな」
「気合い入ってたね」
大学の時に散々BL漫画的展開に巻き込んでくれやがったコンビのうち一組が最終回を迎えた。二次会を担当したのは俺たちではない。ノリのいい涼太の会社の人達が企画と司会進行を担当し、しっかりしとした斗真の会社の人達が予算組みと裏方を担当したので彼ら二人の人生のクライマックスとして最高の盛り上がりを見せたのではないだろうか。
俺の手にも少しだけ重さのある紙袋がある。二次会のビンゴゲームで当てた景品だ。特等という事なので期待していただけにちょっと拍子抜けした気もする。他の奴らが貰ったものが旅行券やご当地グルメ詰め合わせセットだったからだろうか。
「ただいま~」
「おかえりなさい。お風呂ありますよ」
家に帰ると一気に日常感が戻ってくる。玄関をくぐると迎えに出てきてくれる恋人の存在にも慣れてきた。そう。俺にも恋人ができた。言わずもがな巨乳のお姉様……、ではなく年下のイケメン男子である。押しに負けた。
湯船に浸かり人生を振り返る。暖かい部屋に可愛い恋人がいる。それは幸せと言えるのではないか。願った形ではないが良い結末を得た。そんな風に思えるほど俺も歳を食ったんだな。
風呂から上がるとソファに座っていた恋人が振り返ってぱあっと顔を輝かせた。相変わらず俺を見て表情を喜びに変えるのだけが変わらない。これは生涯変わることがないんだろうな。
「先に寝てて良かったのに」
「大丈夫です。明日は遅番なんで」
少しだけ開けてくれた場所に腰を下ろすとますます嬉しそうな顔になる。これが見たくて隣に座るなようになったんだから変われば変わるもんだ。
「結婚式、どうでしたか?」
「良かったよ」
思い返せば様々な出来事があった。知らない女の子とキスをして浮気だなんだで別れの危機をむかえたり、痴話喧嘩ひとつで失踪事件を起こしたり。ハッピーエンドが基本の世界でもハラハラドキドキが目白押しだったよな。あいつらは。
大学時代の苦労話を聞いている恋人は自分もその場に居たかったと拗ねている。まぁ俺らの中では俺だけが恋人が同い年じゃないからな。今回お留守番になったのはそのせいもあるので余計に落ち込んでいるんだろう。誘わなかった理由なんて結婚式なんて結婚願望を煽るイベントの青田刈りを狙う女性陣の群れの中にイケメンな恋人を放り込みたくなかったという俺の都合が十割だと伝えるべきか。
「あ、これカタログギフトなんすね」
「え、どれどれ?」
引き出物を整理してた恋人が薄い箱を開けて一冊の冊子を取り出した。真っ先にグルメ欄を開く姿に俺と付き合うようになってから食いしん坊になってしまった片鱗を感じる。量はそこそこ食うのに食べることに関心がなかった昔と比べて感性が豊かになったのは良いが。ちょっと色んなところに申し訳ない。すまんねうちの龍二くんが。
量を取るかどうせなら普段食べられない号泣品を選ぶかで悩んでどちらにするか聞いてくる恋人から冊子を受け取る。それもいいけど幸せそうな二人を見ていたからちょっと欲が出てきた。
パラパラと他のページを流しみて、とあるコーナーで手を止めた俺に不思議そうな顔をする。恋人にも見えるように真ん中に置いたカタログを指さす。
「俺らも旅行にしない?婚前旅行。どうせなら下見に行こうよ」
一瞬にして真っ赤になってあたふたとしだす恋人の変わらぬ姿にこれこそが俺が手に入れた最高のギフトだよなと頭の湧いたことを考えた。