雨に打たれ、腹を満たすこともできず、とうとう終いを覚悟した時だった。顔から雨粒が拭われ、ふかふかとしたタオルが押し付けられた。
最初に目に入ったのは、その少女のスカートだった。地面と平行になるように広がったそれは、腰で絞られ、肩で再び広がっていた。手には長いステッキのようなもの。なんとまあ奇抜な格好の天使もいるものだ、まさか悪魔じゃあるまい。
俺の視線に眉をひそめ、ステッキで地面を二回ほど小突いた。
「ほら、お立ちなさいな。全く、こんなところで餓死でもされようものなら商売上がったりですわ」
透き通るような紫髪の少女に腕を引かれ、派手な色合いのテントに連れ込まれた。
少女は立派な背広姿の男の前でようやく歩みを止めた。その男はじっと俺を見つめるだけで、何も言わないのがひどく気味が悪かった。男の後ろにかかっているカーテンの奥で、ドタバタ走り回る音が聞こえる。俺の腹も鳴った。しかし、その男の周囲では音が遮断されたように無反応だった。
「そうですね、まずは人に見せられるようにしなくては」
チェコ、と呼ばれたその少女がまたも俺の腕を引っ張って適当な箱の上に座らせた。作法も何も知らないものだから、しかし少しは礼儀正しくいようと、体を縮こませた。背広の男は俺に関心をなくし、カーテンの奥へと姿を消した。
しばらくして、チェコと見知らぬ女性がパンを一つと大量の布を持ってきた。俺は立たされ、口にパンを詰め込まれた。
「そうね、イタちゃんのは少し小さいわね。スペインちゃんのでも借りましょうか」
当てられた布は上等なもののようで、その女性は丁寧に畳んでまたどこかへ消えてしまった。
「ハンガリーが帰ってくる前にさっさとその汚れを落としなさい!」
チェコは俺を押しながらテントを出て、外のドラム缶の横に俺を立たせた。いつの間にか雨は上がっていた。