「え?由喜乃姉ちゃん?!」
眩しい光に目を閉じて、再び開けるとそこにいたのはカッコいい男の人。
魔法使いみたいなコスプレして、コミケ会場にでも飛び込んだのかと思った。
カッコいい男の人は、私のことを「由喜乃姉ちゃん」と呼んだ。
私には弟はいない。
従兄弟も。
だけど、一人だけそう呼び子に心当たりがあった。
一年前に突然いなくなった近所の男の子。
短大に通うため、アパートとで一人暮らしを始めて、数か月後に出会った男の子。
隣に住んでいる子で、一人で歩いている姿をよく見た。
お母さんの姿はあんまりみたことなくて。
お風呂にもあんまり入ってなさそうで、私が持っていたお弁当をよだれが垂れんばかり見ていたから、家に招いた。
6歳くらいの男の子だから、いいかなと思った。
私も一人暮らしして寂しかったかもしれない。
そうして、時たま彼は内に遊びにくるようになった。
一人で帰すのも可哀そうかなあとお母さんが来るまで、いていいよと言ったら、お母さんが夜ではなくて朝方に帰ってくるようになった。
さすがに酷いと思って、翌日文句言いにいったら、逆に有喜くんが怒られた。
それから、お母さんに文句いうのをやめた。
アルバイトのない日は、有喜くんに家にもらうことになって、なんだか一緒に暮らしているようなおかしな状況になった。だけど、以前より笑うようになって、肉付きもよくなったので、いいかなあ。
そう思っていたんだけど、ある時、有喜くんにお迎えがきた。
突然、お母さんとそのお父さんみたいな人がやってきて、有喜君を連れて行った。
彼は泣いたけど、お父さんは有喜くん、そっくりだったし、お父さんには間違いなくて、私は何もできなかった。ただ、何かあったら私を思い出してと、身に着けていたイヤリングの一つを渡した。
彼のことが気になったけど、私は学校に通い続け、卒業。
就職もなんとかできて、いよいよ明日からっていうところで、私はおかしな状況に巻き込まれた。
「由喜乃姉ちゃん、そっくりだけど、そんなわけがない。だってもう十五年も経ってる」
目の前のかっこいい男の人は、ぶつぶつとぼやいている。
状況を確認しつつ、男の人を観察していたら、その耳である物が揺れていることに気がつく。
藍色の雫のような形をしたイヤリング。
私が一年前に久流斗くんに渡したイヤリングと同じだ。
「も、もしかして有喜くん?」
そんなわけがない。
一年六歳くらいだった男の子だ。
だけど、よく見たら顔だちも似ていて、思わず聞いてしまった。
「……やっぱり由喜乃姉ちゃんなの?!」
そう問い返されて、私は彼が一年前六歳くらいだった有喜くんだったことを確信した。
★
「お茶どうぞ。紅茶だよ」
「あ、ありがとう」
成長した有喜くんは、お茶をいれてくれた。
そうして落ち着いたところで、二人で状況確認してみた。
どうやら、ここは魔法がある異世界。
時間の流れは日本の十五倍くらいらしい。
というのは、当時八歳だった有喜くん。今は二十三歳の魔法使い。
王宮に仕えているということ。
私が日本で1年過ごしている間に、この世界は十五年経ってみたいだ。
六歳くらいだと思っていた有喜くんは、実際は八歳で、十五年後の今は二十三歳。
私より年上だ。
気まずい。
「両世界に対となるものがあり、それを同時期に擦ったら、異世界転移するって仮説。正しかったんだ。お父さんに謝ろう」
優雅にお茶を飲みながら有喜くん。
彼はハーフだったのはわかっていて、お父さんの見た目は生粋の西洋人だった。
日本語ペラペラだった気がする。
お父さんは異世界出身だったのかな?
「由喜乃姉ちゃん。混乱してる?どうにか帰る方法探すよ。仮説は立ったから」
「うん、ありがとう」
有喜は随分変わってしまった。
前はよく泣いていたけど。
それは六、いや八歳だったからかもしれない。
なんとなく寂しく思ったけど、そんなことより元の世界に戻ることが大切だった。