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以下メモ
谷地が頑張りすぎて熱中症気味になる話
みんなのスクイズボトルを持って、水道に行く
洗って、水道水でスポドリの粉を溶かして、ジャグをいっぱいにして
スポドリだけだと甘くて飲まなくなる人がいるから、麦茶も作って
冷えすぎないように氷も入れて
ええとそれから
考えながら水道で手を動かしていると、急に影がさした
影の方を振り向くと、そこには黒尾がいた
(えっと、たしか音駒の主将さん……)
もしかして、邪魔だったか!? あ、睨んでる気がする怖い!!と思っている間に、谷地の顔を見て、ギョッと目を見開く黒尾
「はひぃ!?」
「あ、ごめんごめん。驚かせちゃったね。まずはえーっと、烏野のマネージャーの」
「あ、は、や、谷地、です! すみません!」
「そうだった、ごめんね覚えてなくて」
よく謝る人だなあ、と自分のことは高い高い棚に上げて思う谷地
「谷地さん。とりあえず手止めて、一旦座ろう?」
「え」
え? 意味がわからなかった。座る? なぜ???
頭の上をはてなが飛び交ううちに、谷地の様子を見にきた清水がやってくる
「何してるの」
黒尾に向けられた警戒の言葉、谷地に何か悪いことをしているのではないか、という棘のある言葉と目つきだったが、黒尾は振り返り、その顔を見てホッとしたように息をついた
思っていた反応とは全く違って、清水がびっくりしている間に、黒尾はまた谷地に向き直る
「ほら、清水さんきたよ」
「仁花ちゃん、どうかした……」
清水は黒尾の背中で隠れていた谷地の姿をようやく見た
そして、真っ赤っかな顔をみて、最後の「の」は消えてしまった
「仁花ちゃん、大丈夫!?」
谷地の頭の上はずっと????でいっぱいだった
自校の先輩、他校の先輩が揃いも揃って怖い顔をしていて、谷地は泣きそうになった
泣きそうな谷地に気付いて、先輩たち2人はまた、揃いも揃って眉を八の字に下げた
違う、心配、している?
「日焼けしてる、とかじゃないよな? いや、それでも心配だけど」
「うん。みんな日焼け止めくらいは塗ってるし、違うと思う」
谷地が反応を返せない間に、頭上で会話が続く
仁花ちゃん、ちょっとごめんね
なんか今日はよく謝られるなあ、と谷地が思っている間に、清水の手が頬に触れる
ひんやりとしていて、気持ちがいい
「やっぱり熱いね」
黒尾がガラガラとジャグを揺らす。麦茶をいれたばかりのやつだ。
「これ飲んでいいやつ? 足りなくなったらウチの分けるわ」
谷地が口を開く前に、清水が答えた。
「うん、大丈夫。先生が車出せるから」
紙コップを手に取り麦茶を入れるのをじっと見ていた。そんなに喉乾いてたのかなあ。
ぼーっとしていると「はい」と差し出された。
「……へっ!?」
まま、とりあえず座って座って。と促されて、一段上がっている水道の石段に腰掛ける。
いつの間にかタオルを引いてくれていたらしく、戸惑っていたが有無を言わさず座らされる。
飲めと言われたので仕方なく飲む。なんか「俺の酒が飲めないのか!」ってこういうことなのかな、お酒飲んだことないけどとか思う。
張り付いたのどが離れていくのを感じる。漸くのどの渇きを自覚した谷地。
「ひぇっ!?」
「あ、ごめんね」
急に首筋にひんやりしたものを当てられて、谷地は悲鳴を上げた。
ごめんね、と言いつつ、こちらも有無を言わさぬ空気だ。清水がタオルを当てていた。多分、氷を巻いているんだろう。
うーん、と黒尾がうなった。
「多分だけど、もっと涼しいところで休ませた方がいい。あと、誰か……清水さんはついてた方が良いと思う」
清水が硬い表情で頷く。
さすがに谷地も追いついてきた。私の体調を心配しているのだと。
「だ、大丈夫っ、元気です!」
黒尾の咎めるような顔が向けられる。怖い、本格的に泣きそうだ。
「だ、だって、だって、私、一人分の仕事もできてないのに、皆さんにこれ以上ご迷惑を……」
仁花ちゃん。清水が声をかける前に、黒尾がしゃがみ込み、谷地の顔を下からのぞき込んだ。
「谷地さんは、ここで今日1日休んで、明日から頑張るのと、今日このまま動いてぶっ倒れて救急車で運ばれて、合宿中全部ふいにするのと、どっちがみんなの迷惑にならないと思う?」
「黒尾」
清水は厳しい顔をして黒尾を咎めた。谷地の目から涙が零れ落ちたからだ。
うう、と声を上げてなく谷地。清水がくれたタオルを目に当てると、しゃくりあげて泣き始めてしまった。
「ごめんな、悔しいよな」
くやしい、と清水が小さく繰り返した。黒尾は清水の方をみて、小さく頷いた。
しゃくりあげながら、谷地は首を横に振った。
悔しい、という言葉を否定したのではない。いやだいやだ、と駄々をこねているのだ、と谷地の冷静な部分は思った。
でも、だって、声にならない声がしゃくりあげた泣き声の間から聞こえる。
清水先輩と同じ働きができるとは思っていないけど、わからないことばかりで、聞くしかなくて、皆の仕事を増やして、早く一人前にならなきゃ、できるようになったこと忘れないようにメモしなきゃ
こんなこと言っても困らせるだけなのに、止まらない。
冷静な自分(谷地)が、ああ、本当に体調悪いんだ、と思う。
「暑いし寒いし気持ち悪くて吐くし、救急車で運ばれて点滴受けても治んなくて、その夏ずっと調子悪い……みたいな目、合わせたくないんだよ」
清水さんは、谷地さんに。もちろん俺も。
わかるな? とのぞき込まれ、頷く谷地。
妙に具体的だな、と思う清水。
落ち着くように谷地の背中を撫でる清水。
涙が落ち着いてきた谷地。
「ずびばせん・・・」
「分かればよろしい」
もう一杯飲んで。水分全部出ちゃったでしょ、といわれ麦茶をあおる。
立てる? 清水の声にふらつきながら立ち上がる。清水が支えてくれる。
「清水さん、谷地さん任せていいか? 烏野には言っとく」
「うん、お願い」
谷地がジャグやスクイズを見ていると
「これは俺が……あー、烏野と音駒の1年にやらせるから、元気になったらお礼してやって」
3年のしかも他校の主将にやらせたなんてことになったら、谷地が気にしそうだと思って言い直す黒尾。
「ありがとう」
清水がお礼を言う。ひらひらと手のひらを振って、大丈夫と表す黒尾。
黒尾が体育館に戻ると、試合中の烏野。
5校のため音駒は審判などをやっていた。
烏野のベンチに行く黒尾。
「試合中すみません」
武田先生に声をかける。
「どうしましたか?」
さすがに気付いていて、谷地と清水のことだろう、と目向ける武田先生。
「谷地さんが熱中症気味で。涼しいところで休んでもらっています。清水さんが付き添ってるんで大丈夫だと思うんですが。烏野マネージャーいなくなっちゃうんで、音駒も手伝いますね」
烏野一年とかに手伝ってもらっていいですか?
申し訳なさそうに言う黒尾に慌てて手を振る武田。
「そんな! むしろ手伝ってもらってすみません!」
「いえ、お互い様です」
こっちもマネージャーいない分、いつも手伝ってもらっているので。
「先生、様子見てきた方がいいんじゃないか?」
清水がいるなら大丈夫だと思うけど、と烏養。
「そうですね。そうさせてもらいます」
黒尾がジャグやスクイズを担いでくると、慌ててベンチから飛び出す山口、木下、成田。
「すいません! 俺たちやります!!!!」
「試合中なんだから集中」
ボールが切れたタイミングで澤村と目が合い、すまんとジェスチャーされたので、集中と口パクすると笑われる。
「ウチの一年がやるならいいよな? そういう約束だもんな?」
夜久に圧をかけられて、渋々了承する黒尾。
谷地は夕飯頃には回復して、「ご心配をおかけしました」とみんなに謝った。
烏野のみんなに心配され、頼りにしていると言われて、自信を持ち直す。
次の日。回復したとはいえ、病み上がりのため烏野と音駒の一年が手伝うことになった。
谷地が黒尾にありがとうございますと言いにいくと、お礼ならあいつらに、と一年ズを指し示す。
2日後。
一昨日のカンカン照りとは打って変わって台風が近づいている雨模様。
お礼のタイミングを見計らっていた谷地は、なんとなく黒尾の調子がいつもと違うような気がしていた。
なんとなく、いつもより仕草が緩慢なような。
なんとなく、いつもより表情が固いような。
なんとなく、いつもより周囲への気配りが少ない(といっても全然多いが)ような。
昨日は気づいていた、私の視線にも気づいていないような。
合宿のメニューが終わり、みんなの「あざーしたっ!」の声がこだまする。
木兎が自主練しようぜ、といつものメンバーに声をかける。
うるせーな今行く。
と黒尾が言いながら、メガネを直すような仕草でこめかみに触れた。
「あ、あの!!!!」
思わずかけた声は大きく上擦り、周囲の注目を集めた。
勢いで声をかけたはいいものの、なんて言おう。ええと、ええと。
「く、黒尾さんは今日、自主練しないです!! よね!?」
「え?」
「ん?」
うわー! 間違えた絶対間違えた! 新参者一年マネ(村人D)の分際で、なにを意見してるんだ!?!?
内心パニックになる谷地。
「えーっと」
「谷地さん」
「そうそう! 谷地さん!」
「は、はひっ!?」
「谷地さんはなんか黒尾に用があんの?」
木兎の射抜くような瞳(本人にそのつもりは全くない)に見つめられて、谷地はえと、その、あの、しか言えなくなっていた。
「一昨日のことならもう気にしなくていいって」
元気なら、な。と黒尾が言う。
谷地の肩をいつのまにか隣に来ていた清水がぽんと叩く。
谷地の様子を見ていた清水も、谷地が何かに気づいたこと、それが黒尾の体調面なのではないかというところに気づいていた。
「黒尾は?」
「ん?」
「元気なの?」
元気、と小さく繰り返して、黒尾は気づく。
「あれ、もしかして俺、心配されてる?」
「え、黒尾、体調悪ぃの?」
「いや、別に……」
隠している、というわけではなく本当にわからず困惑する表情の黒尾。なんで???とはてなを浮かべている。
清水にはなぜ、が正直分からないので、谷地を見る。
清水が寄り添ってくれて落ち着いた谷地が、続ける。
「えっと……頭痛かったりしませんか?」
「しない、けど・・・」
そういえばちょっと重いような、締め付けられる気がするような、と声に出さずに思う黒尾。
「音とか臭いとか光が気になったり、気持ち悪かったり、あとは……眠かったりしませんか?」
ここまで聞いて何を疑っているのか分かった清水。
ああ、なるほど。とつぶやくと、困惑したままの黒尾と目が合った。
「黒尾、片頭痛持ちだったりする?」
「え」
片頭痛。知識としては知っているが、自分の持病だとは認識していなかった。
頭痛なんて多かれ少なかれみんななるし、特定の疾病が無くても例えば寝不足とか寝すぎでもなるし、自分の頭痛の回数が多いか少ないかなんて気にしたことは無かった。
確かに、皆隠しているだけかもしれないけど、皆より多い気がする?
先ほど言われた症状を感じたこともあった。
特に眠気は、今も感じている。ただただ疲れただけかと思っていたけれど、昨日や一昨日は感じなかったはずだ。
「あー・・・もしかしてこれ、そうなの、か?」
言うはずの無かった言葉がふとこぼれる。それは小さいものだったが、周囲の人間に伝わるには十分だった。
とくに、近くにいなかったものも、いつの間にか聞き耳を立てていた今は。
「いや、自分のことでしょう」
何で他人事なんですか、と自主練をするのかと近くに来た赤葦が言う。
「いやだって、別に多少頭痛いことくらいあるだろ、普通に」
寝不足の時とか、天気悪いときとか、と続けると木兎は腕を組んで首を傾げた。
「ねえなあ」
「え、ねえの?」
「寝不足とか寝すぎとかは分かりますけど、天候に左右されたりはしないですね」
「ツッキーは?」
「僕も、赤葦さんと同じ感じですね」
衝撃を受けている黒尾。
「どうするんですか、自主練」
「まあ痛くないし……」
途端に泣きそうになる谷地。
睨む清水。
慌てる黒尾。
研磨が通りすがりに黒尾にだけ言う。
「眠気が来てるならやめとけば? いつもの発作の症状でしょ」
「いつも?」
ため息をつく研磨。
「天気悪いときいつもそうでしょ。小さい時から」
自分が気づいてなかったことに幼さなじみにきづかれていることにさらに衝撃を受ける黒尾。
無理して倒れても知らないから。と研磨。
「お墨付きいただきましたけど」
シャワー浴びたら悪化するけど汗だくだし入らないわけにはいかないので、もう上がったらと周りにも言われる。
「黒尾さんが教えてくれたんですよ。無理して倒れて辛い思いしてほしくない、です!」
やりとりをしているうちにちょっとずつ痛みを増してきた頭痛を無視できなくて、黒尾は観念した。
「今日はもう、休みます……」
主に音駒からどよめき。
注目を浴びていたことに今気づく谷地と黒尾。
谷地は「はひぃっ!?」と震え上がった。
谷地さんお手柄だ、すごい! と夜久や海に褒められてまた「はひぃ!?」となる谷地。
「黒尾が自分から休むって言うなんて……」
「母ちゃんか何かか?」
「今までのやりとりで心中察して余りあるよ」
澤村にまで言われる。
話まとまったところで片付けな、とコーチ陣に言われる。慌ててモップを取ろうとしたところでリエーフたちに阻まれる。
黒尾さんはダメです。
マネたちに連れてってもらえーと声がかかり、ひと足先にお風呂や夕飯とすることに。
片付けくらいできると言っても梟谷マネに背中を押されていく。
風呂に突入されたくなかったら大人しく従え、と梟谷マネたちに脅され、普通逆じゃね?と思う黒尾。
マネちゃんたちは食堂のお手伝いをすると言う。
机を拭いたり、調味料類を用意したり、食器を用意したり。
いつもありがとな、と黒尾。
いいから風呂入れと追い出される。
「あいつ絶対手伝おうとするから」
上がってくる前に済まそうと急ぐマネ。