夏コミ戦利品レビューと合わせて、ペンギンSFアンソロジーも進めていきますよ。8月中に終わるかな終わらないかな。
・ニンゲン、大地を跳ぶ(刻露清秀氏)
動物の霊長たる人間も、SFの世界では時としてその地位を追われるもの。
本作から感じるペンギンイメージは「逆転」。
本作では知性化され高度な社会を形成しているペンギンとは逆に、人類は動物園の檻の中に。
こうした逆転はSFのお約束ですが、本作では「ペンギンから見た人類の姿」を徹底して奇妙な動物として描いています。いわゆる思弁SF的な展開であるとともに、我々繁栄した動物である人間がしばしば絶滅寸前の動物たちに対して思う「ああじゃなくてよかった」という感情が逆に人類に対して向けられているのが皮肉。
そして作中で繁栄を極めたかに見えたペンギンたちもまた、南極の氷が溶けてしまったことでその文明は崩壊。野生に帰ったペンギンの回顧が切なく悲しい一編でした。
・ペンギンホーム(馬村ありん氏)
タイトルにある「ペンギンホーム」とは、政府からペンギンの飼育を任された家庭のこと。
本作から感じるペンギンイメージは「出会いと別れ」。
ある日突然ペンギンを飼うことになった一家の騒動を描いた本作は、まさにこの季節に読むのにふさわしいひと夏の短い楽しい時間を描いています。
ペンギンというアイドルがいきなり転がり込んできた一家の面々のそれぞれの騒ぎが楽しい半面、その楽しい時間は永遠のものではないこと、遠くない未来に終わってしまうことが示唆されているのがまた切ない。特に主人公の「僕」がペンギンが来たことをきっかけに同僚の女性と仲良くなれるか……と思ってたらあっさり、というのが特に悲しい……。
しかし、一時のペンギンの訪れがもたらした変化は確かに残っていて、というラストは夏の終わりのこの時期に実にふさわしい締めでした。
今日はここまで。