わたしはコンチの軽い体を持ち上げて、ソファに背中を預けた。
「マチュは、さ……シュウちゃんのこと、好きなんだよね。だから、シュウちゃんを探そうとしてる」
コンチはなにも言わず、わたしの腕の中に大人しく収まっている。
「じゃあ……マチュがシュウちゃんを見つけることができたら……そのあとは?」
わたしの世界は狭い。過去形にしたいけど、でもまだ、狭い。そして、その狭い世界の大部分を締めているのが……マチュだ。
「わたしはマチュが好きだよ。大好き。とっても、大切な人。わたしと、マヴになろうって言ってくれた人」
コンチがピリピリと電子音を発した。わかってくれる相手がいるっていうのは、うれしい。
「シュウちゃんは……マチュにとってすごく大切な人。なら、わたしにとっても大切な人だよ。マチュがシュウちゃんを探すって言うなら、わたしも手伝う。どこまでもついてく。でも……」
コンチの小さな体を、ぎゅっと抱きしめる。古びたプラスチックの匂い。
「そのあと、わたしはどうなるの?」
コンチはなにも言わない。
「わたしはまた、一人になっちゃうのかな。何もかも失って、生きることしかできなかったあの頃に、戻っちゃうのかな」
こんなこと、マチュの前では絶対に言えない。ううん、言うまでもないのかも。わたしは自分の内心を隠し通せるほど器用じゃないし、それに……マチュはたぶん、わかってる。
それが、わたしにはこわい。
いつだったかベッドの中で、マチュはニュータイプは「わかりあえること」だって言ってた。
わかりあえることは、うれしい。特にわたしは、マチュみたいに普段から自分らしく自分を表現できないっていうか……人前で自分を出すのが、すごく苦手。どうしてかって考えたら、それは……わかってくれる人がいるって、信じられないからだと思う。
「難民」だとか「非合法バイトの受け子」だとか「優れたニュータイプ」だとかっていう服を着てないと、わたしはだれにも、わたしを見てもらえない。見えない。
でも、ニュータイプは違う。「難民」だとか「非合法バイトの受け子」だとか「優れたニュータイプ」だとかっていう服を脱ぎ捨てた、裸のわたしでいられる。わかりあえる。少なくともマチュはわたしにとってそれが期待できる相手だ。
でもそれは……逆に考えれば、裸にされてしまうってことだ。なにも隠せない。
こわい。
わたしのこの不安や疑念が、マチュにわかってしまってるかもしれないのが、こわい。
きっとマチュは、シュウちゃんが見つかっても、今まで通りにわたしに接してくれるだろう。シュウちゃんもたぶん同じ。
でも、わたしは……。
「ねえ、コンチ。わたし……」
そのあとの言葉が出てこなかった。コンチになにを言いたいのかもよくわからなくなってしまった。結局、わたしはため息をつくだけだった。