毎週木曜は滑り込みの日。もちろん夏コミ原稿がやばいんですがそれはそれとして映画は栄養なので見ていかねば。
というわけで今日見てきたのはこの2本!
なんか風の噂に聞く話によれば、本作で速水奨ボイスのポリンキーが拝めるらしいので見てきました。ちなみにわたくし人形使いの場合、速水奨氏と言えば蛙杖社長ですね。「KEY THE METAL IDOL」の。
さて本作、例によって例のごとく前情報はほとんど入れずに見に行きましたが、速水奨氏以外にもみんな大好き大塚「スネーク」明夫氏や大塚「ヤザン」芳忠氏や立木「ゲンドウ」文彦氏や関「ゴッドフィンガー」智一氏が参加されておりえっらい豪華声優陣が揃ってました。
「たべっ子どうぶつ」はお菓子の王国スイーツランドの誇るスーパーアイドル。しかしその舞台裏では、リーダーであるらいおんくんは人気を伸ばし続ける新メンバーのぺがさすちゃんへの嫉妬と自信の喪失に悩んでいました。
そんな中、ライブ開場からスイーツランド城に帰ってきた一行を待っていたのは、人気がないスイーツランドとなぞのわたあめ軍団。そのわたあめ軍団を統べる首魁こそが、この一連の事件を引き起こしたわたあめの怪物・キングゴットンでした。
大人気のスーパーアイドルではあるものの戦闘力ゼロのたべっ子どうぶつたちとスイーツランドの運命は!?
まず言わせていただきたいのが立木文彦ボイスで「我々のシナリオ通りだ!」は狙いすぎだろ。館内で思わず爆笑しそうになったわ。……と思いましたがこのネタが分かる世代はもはや初老に片足突っ込んでることに気が付き泣きそうになりました。
あと、ステージでは思いっきりアイドルしてるのに楽屋ではダウナーなねこちゃんが好き。
ピクサーアニメを思わせる色彩豊かで個性的なキャラと世界観、楽しい中にもシリアスさがあるストーリーと非常に完成度が高い作品でした。
というか本作、原作が原作なのでまあ一見子供向けのほのぼのとしたアニメなんですが扱っているテーマと言うかその根底に流れるものはかなりシリアスかつダークなのでは、と感じました。
まず「ライブ会場から帰ってきたら故郷が支配されていた」の時点でこれもういわゆる村焼き案件だろ、とか良くないオタクの側面で思ってしまいました。
かつまた、前述のリーダーであるらいおんくんの自信喪失とぺがさすちゃんへの嫉妬、仲間との不信もこういうガワだからこそ丁寧にかつストレートに描いておりこれが切っ先の鋭さとなって見ている者の心に刺さるわけです。
そのターゲット層を低年齢児に据えているであろう本作の登場キャラ、特にたべっ子どうぶつの面々はいわゆる成熟した大人ではなく子どもとして描かれています。なのでその言葉は下手な粉飾がないんですよね。本作におけるたべっ子どうぶつのチーム内トラブルは、乱暴に言ってしまえば子供グループの中では日常的に起こるレベルのケンカして仲直りなわけですが、大人になるとそのケンカして仲直りというプロセスの難しさを身にしみて感じるわけですよ。おとなになるってかなしいことなの……。
そんな中でもらいおんくんのいちばんの理解者であるぞうくんの存在がもう救いなんだよな……。この作品、日常に疲れた社会人が見たらボロ泣きしてしまうのでは。そして「なんで俺/私のとなりにはぞうくんがいないんだ……」と闇落ちしてしまうかも。そのくらいぞうくんの存在は大きな救いです。
あとラストバトルで最後まで残ったひよこちゃんの最後の活躍は良かった。男の子はいくつになっても「土壇場で秘められた力に覚醒する展開」が大好き。
メインヒロインであるぺがさすちゃんを演じるのは「ベイビーわるきゅーれ」の高石あかり氏。アクションがすごい上に本作ではその見事な歌唱力も披露してくれるので必聴です。
そして絶対に言及してなくてはいけないのが、本作の一連の事件の真の黒幕であり、もしかしたら裏の主人公とも言えるマッカロン教授。
キングゴットンに支配されたスイーツランドに隠れ住み反撃の機会を伺っているレジスタンスのリーダー、と思わせておいて実は……。
演じる大塚明夫氏レベルの人になるともう声優側の個性というか視聴者側の固定観念が非常に強く、「この声優さんならこのキャラ!」というイメージが固定されているもの。
しかしながら本作のマッカロン教授のようなタイプのキャラクターを大塚氏が演じることはまずなかったんじゃないでしょうかね。一番近いのは「アトミックハート」のサチノフ博士か?
最初は知的で堅物、そしてその思惑と正体を明かしてからは狂気の中に明らかな悲しさと寂しさを抱えているあの強烈なキャラクター像は多くの人が抱いている大塚明夫像を大きく外れた非常に意外なキャラでした。
マッカロン博士のなにが悲しいって、自分がやっていることをすべて自覚しているって点なんですよね。狂気に陥って我を失ってしまうことができないほど知性的で理性的だったのが彼の真の悲劇だったのでは。
劇中での彼のあの、いかにも狂気の悪役的な高笑いは彼の精一杯の強がりだったんだと思います。それを感じさせる大塚氏の演技力よ……。
彼は幼少期の孤独から「周りも笑顔を失ってしまえば自分と同じになる」という考えに執着した結果、一連の事件を引き起こしました。この孤独の原因というのが「親から優秀な自分であることを押し付けられ続けてきた」というのがなあ……。
そして彼がその手段として「わたあめ軍団によってスイーツランドを支配する」を選んだ理由というのが「幼少期に与えられた唯一のお菓子がわたあめだったから」。成人して老齢に達した彼が、なおわたあめを貪りながら研究に没頭する姿は、心理学でいうところの「固着」を感じました。
そして最終的にたべっ子動物たちに敗れ、崩落する城から落下する彼を救ったのもまたわたあめだったというのが、彼にふさわしい救いだったと思います。
そして本作が「お菓子」という食べ物をテーマにした作品であるという点を最大限に活かした点が「いただきます」ですよ。
たべっ子どうぶつたちは「おかしーず」という種族であり、人間が言う「いただきます!」というキーワードによって、食べてもらうために本来のお菓子の姿に戻るという設定があります。
作中ではこれをマッカロン博士に利用され、すんでのところまで迫ったたべっ子どうぶつたちはお菓子の姿に戻され無力化されます。しかしこれをさらにヒロイン?であるペロにさらに逆用され、マッカロン教授の「いただきます!」がスマホによって全国配信されてスイーツランドじゅうに広がっていったわたあめ軍団が一気にわたあめに戻って形勢逆転という。
思うんですがこれって、それまで人間であるスイーツランド国民たちがだれひとりとしてわたあめを食べようとしなかったってことなんだよな……。
いやーなんか最初のポスター見たときはたべっ子どうぶつが映画化という一発ネタかと思ってましたが、なかなかどうして奥の深い作品でした。今週末は応援上映に参加しますのでそっちの感想もお楽しみに。
それでは、ごちそうさまでした!
次はまったく毛色と客層が違うこの作品!
オタクなら誰でも名前は知っている、やたら長いタイトルのラノベを見るたびに思い出すこの作品。
これもまた「名前と大まかなストーリーは知ってるものの本編は触れたことがない」という作品のひとつ。これが塚口で上映されるということだったので見てきました。
本作はみんな大好きスタンリー・キューブリック監督最後の白黒映画。
もう冒頭の「この映画に描かれているようなことは現実には絶対に起こらないと、アメリカ空軍は保証する」といういきなりのフラグが出てくるので変な笑いが出てしまいました。
時は冷戦下、場所はアメリカ、バープルソン空軍基地。
基地の司令官であるリッパー准将は独断でアメリカ空軍全軍によるソ連への核攻撃を命じます。これによってアメリカ政府首脳部は大混乱に。慌てて出撃していったB-52爆撃機の帰投を命じる首脳部ですが通信はすでに暗号のみしか受け付けない状態に。さらにソ連には自国が攻撃を受けたときに自動的に報復を行う「皆殺し装置」を実戦配備しており、核攻撃が実行された場合にはこの「皆殺し装置」によって世界が死の灰に覆われることが判明します。刻一刻と悪化していく状況下、世界の運命はどうなってしまうのか!?
前述の通りわたくし人形使いは本作は初見だったんですが、なんかもう登場人物全員イカれてるじゃねーか!!
前述のリッパー准将はなんかなんの前触れもなく核攻撃を命じたと思ってコイツイカれてんなとか思ってたら、なんか体液が汚染されるからという理由で雨水と蒸留水と薬用アルコールしか常飲しない、水道水フッ化物添加が共産主義の陰謀であるという陰謀論に脳を支配されてて最終的に自殺してしまうという実にはた迷惑な人物だし、首脳会議では反共主義者のタージトソン将軍と大統領が延々と平行線の議論を続けてるし、さらに会議に駐米ソ連大使のサデスキーなんか呼んじゃったもんだから案の定ケンカ始めるし、もうめちゃくちゃです。あーやだやだ。
この辺のなんかもうどうにもならんあかんわこれ、みたいな空気は実にブラックな笑いがあって好き。
さらには、ようやく暗号を解読して出撃していった爆撃機に帰投命令が出されるものの、最終的に通信機の自己破壊機能で通信が途絶していた1機に乗っていたコング少佐が、よせばいいのに数々の苦難を乗り越えて最終的に手動投下装置を見事修理して、核爆弾ごと投下されていくのでした。あーあ。
そしていちばんイカれてるのがみんな大好きストレンジラブ博士ですよ。なんかもうこの人だけ作画が荒木飛呂彦だった。
もとナチスの科学者って時点でもうまともであるはずがないんですが、常に引きつった笑顔だしやたらテンション高いし義手が暴走するしもうまともな要素が一個もありません。こんなん首脳会議に呼ぶなよ……。
そして言ってることもだいぶイカれてて、皆殺し装置によって世界が大ピンチってときに嬉々として説明ゼリフを延々と続けてるし、核攻撃が実行されてしまったあとにもこれまた嬉々として地下帝国案を延々喋り続けてるという、オタクとマッドサイエンティストの悪いところを合体させて濃縮還元したかのような強烈なキャラで、出番自体はそう長くはないもののあまりにもキャラが強烈で最終的にコイツが全部持っていった感がありますね。最後にいきなり「総統! 歩けます!」とか言い始めるしな。クララかよ。
と言った感じでなんというか、「人間、どうしようもねーな……」と思いました。こういうの、笑えてるうちはまだいいんだろうけど、昨今の世界情勢を見るにつけあんまり笑えないんだよな……。
冒頭の「この映画に描かれているようなことは現実には絶対に起こらないと、アメリカ空軍は保証する」に、パトレイバーのごとく「……ただし、現在では定かではない」と注釈が着いてしまいそう。