【ポーラータングのオーナー】
ある男は散歩中、ふといつもと違う道を選んだ。
完全に思い付きだ。
知らない角を曲がり、初めての川沿いを気持ちよく歩いていると、なにやら黄色い建物が見え始める。
まさかと思って男が近づく。ポップな字体の看板には『カットサロン ポーラータング』と書かれてあった。
「お……」
小さな声が無意識に出た。
単純に、驚いたのだ。
ここ最近、ポーラータングという店をよく見かけるので。
彼はおもむろにスマホを取り出し、地図アプリを開く。
現在位置にカーソルを合わせ、検索欄に『ポーラータング』と打ち込むと、出るわ出るわ。
近場に8件ものポーラータングがズラリと並んだ。
このポーラータングの群れは、コンビニのように似たような店かと思いきや、それぞれ系統がまったく違う専門店だ。
定食屋もあれば、本屋、花屋、雑貨屋、靴屋、板金屋。
客が入っているかどうかも怪しい、占いの館なんてのもある。
そして今回はじめて見つけたカットサロン。
どれをみても、統一性は一切ない。
それぞれの店に共通しているのは、ポーラータングという名前と、店の雰囲気だ。
どの店も外観は全体的に黄色く、丸くてカワイイ窓が数個並ぶ。
それなのに内装はパイプが通っていたり、バルブが剥き出しだったり、外観の印象に反して意外と無骨。
うるさすぎず、静かすぎず。
まるで潜水艦に乗って海の中にいるみたいな、特別な気分になれるこぢんまりした落ち着く空間。
そんな店が多いのだ。
そしてこのポーラータングの群れを束ねているのが、店主たちに〝キャプテン〟と呼ばれる存在である。
彼は若く、背の高い男だ。
以前、カフェのポーラータングに行ったときに居合わせ、そう呼ばれていたのをよく覚えている。
彼が入店すると、店主たちは必ずニコニコ顔で出迎える。
親が気になる子供のように何かとあればすり寄り、サービスだってすごい。
店の雰囲気がパッと明るくなって、店主たちが〝キャプテン〟を大切にしていることがありありと伝わってくるのだ。
一方の〝キャプテン〟は「特別なサービスはいらねェ」なんて、そっけなく言って眉間の谷を深くするくせに、まんざらでもない様子を見せる。
そんな彼らは見ているだけで可笑しいし、なにも知らない客の自分まで嬉しくなってしまうほど。
ちょっぴり顔が恐いものの、彼はきっといいオーナーなのだろう。
一連の流れを思い出し、男は頬を緩める。
今度、あのヘアサロンにも行ってみよう。
そう思いながら、散歩を再開したのだった。
さて、そのころ『ヘアサロン ポーラータング』では、まさに〝キャプテン〟がご来店中。
「はい、できました。っと、キャプテン、変なところはありません?」
ハサミを止めた店主のシャチが、大きな鏡を後ろに横にと動かし、ヘアスタイルの確認をローに仰いだ。
「ある」
「えッ、どどどどこ!?」
「いや、髪じゃない。店の名前だ」
「なーんだ、よかった」
他でもないキャプテンの髪なので、不備があったら困るとオロオロ慌てたシャチだったが、ローの言葉にホッと安堵の息をはいた。
「よくねェよ。『ポーラータング』はやめろって言っただろ」
「おれの勝手でーす!」
ケープを脱がせてブラシで首周りの毛を散らしながら、シャチは軽く言った。
「お前ら、勝手にそこかしこで『ポーラータング』なんて店をはじめやがって。誤解されるのはおれなんだ、まったく」
ローが不満顔でぶつぶつ呟く。
シャチも、彼の言い分は分からないでもなかった。
ここいら近隣にあふれる多種多様な『ポーラータング』の店主たちは、ずっとずっとそのまたずっと昔、彼らが海賊だったころの仲間たちなのだ。
記憶を持って再び生まれた彼らが、勝手にローを見つけ、勝手にこの町に移り住み、勝手にそれぞれの得意分野で店を持ち始めた。
全員、勝手に『ポーラータング』という名前を付けて。
同じく記憶を持って生まれたローは、1件目の『定食屋 ポーラータング』にすぐに気がついた。
仲間との再会を喜び、開店を祝い、かつての家を模した店を歓迎し、常連になった。
そしてポーラータングを目印に集まってきた仲間たちは、ローが居付いた『定食屋 ポーラータング』を見てこう思う。
ずるい、と。
そいういわけで、ローの生活圏にポーラータングが2件3件と増えていく。
ローもこの異常事態にすぐに気が付いたが、気付いたうえですぐに慣れ、それぞれの店の常連になった。
さすが元海賊の船長。
肝っ玉の据わりは30億レベルである。
さて、あふれかえった『ポーラータング』と常連の〝キャプテン〟を見て、周りの人々は噂した。
「きっと彼が、これらポーラータングのオーナーなのだ」と。
「ンなワケあるか、おれはまだ学生だぞ」
「キャプテン、大人っぽいからな~」
「他人事だと思いやがって」
とはいえ、もう12件は『ポーラータング』が建つだろう。
ローを囲い込むように、続々と。
そしてシャチには、そんな仲間たちの気持ちがよく分かるのだ。
「これから来るやつらには、なんとかして止めさせねェと」
「無駄だと思いますけどね」
「船長命令」
だから、後から来る仲間に教えてやろう。
ドライな船長が無慈悲に命令しても、こういえば丸め込めるって。
これは経験談だ。
「ポーラータングはおれたちの家だったから、なんか落ち着くんですよね。それでもダメですか?」
「っぐ」
30億の船長だって、今の世の中じゃ可愛いもんだ。
おとなしく『オーナー』やっててください、おれたちのキャプテン。
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19:51
七月
もう既にワクワクします✨️お芋さん太郎さんもめちゃくちゃ筆早いですね👏
20:28
お芋さん太郎
ありがとうございます!ずっと構想あった話なので!
157:48
お芋さん太郎
直し終了です!見てくださってありがとうございました!
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向き
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ポーラータングのオーナー
初公開日: 2025年06月13日
最終更新日: 2025年06月15日
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コメント
練習です。
ONEPIECE二次小説。
ハートの海賊団転生現パロ記憶ありSS予定。