後方で生じたはずの爆光は、次元の向こうに流れ去ってすでに知覚できない。ワープゲートが閉じる寸前に、ネグザルツはゲート内に飛び込んでいた。
周辺の星々と爆光がはるか後方に長く尾を引き、光が無限長に引き伸ばされる。そこはすでに超空間通路だった。数瞬後、ネグザルツは機体をなんとか安定させ巡航体勢に――前方から熱源接近!
前方の空間を、浮遊機雷が埋め尽くしている。敵はネグザルツがこの超空間通路に飛び込んでくることを見越して罠を張っていたのだ。
ネグザルツは超空間通路の障壁に沿ってバレルロール機動。わずかでも障壁に接触すればそのまま制御を失い超空間と通常空間の境界線ですり潰される。対して浮遊機雷はネグザルツの回避機動を先読み(カウンターリード)し、他の機雷と連携してその未来位置を潰そうとしてくる。ただの浮遊機雷ではない。知性機雷(スマートマイン)だ。
ネグザルツは思考リソースをフルに使い、機雷群の未来位置、そして密集位置を予測演算。機体下部から粒子弾の弾幕を張る。
粒子弾の斉射を受けた機雷群が連続して誘爆、その隊列と未来位置に一瞬の穴が空く。ネグザルツは機雷群を振り切るべくその穴にきたいを滑り込ませ――瞬間、前方に網を張っていた機雷郡が一斉に爆裂! 同時に感覚機(センサー)が沈黙(ブラックアウト)! 爆発とともに機雷に仕込まれていた妨害物質が広範囲にわたって散布され、ネグザルツはすべての感覚を喪失。自己診断プログラムが感覚機(センサー)を回復(リカバリー)させる数秒間の間に、爆裂とともに超高速で飛来した機雷の破片がネグザルツの全身に叩き込まれた。さらに、機体に深々と突き刺さった破片からは強酸性の化学物質が滲出し、生体装甲を溶解させ始めた。このままでは機体構造、さらには神経中枢である竜骨(スパイン)まで侵食されてしまう。
そう判断した瞬間、ネグザルツは拡散太陽剣を自機とほぼ同座標の超至近距離から発動させた。座標から全方位に向けて発動した拡散太陽剣が、機体に突き刺さった破片を一次装甲ごと、さらに周辺に集まりつつあった機雷群を吹き飛ばす。
同時にネグザルツは回避機動を再計算。無数の機雷群の未来位置を予測し回避運動を行いつつ、さらに回避機動を再計算。回避と再計算を繰り返しつつわずかな時間を稼ぎ、生体装甲を再生させる。
超空間通路の出口が見えてきた瞬間、ネグザルツは急激に加速。鋸歯状の軌道を描きつつ機雷群のわずかな隙間を縫って出口を目指す。
機雷軍もすでにその機動を察知していた。全ての機雷が連携し、超空間通路の出口に殺到する。しかし、ネグザルツもまたその連携を察知していた。密集し、ほとんど壁となって出口を塞ぐ機雷群を前に、急激に逆噴射(リバース・スラスト)。
機体がへし折れるほどのGに、生体装甲が軋みを上げる。出口に殺到した機雷群はネグザルツを巻き込み損ない、次々と爆裂し爆裂し爆裂し爆裂。
次いでネグザルツは機首を下げ、飛来する無数の破片を回避。さらに間をおかず機首を上げ、機雷群の爆光をあとに超空間通路の出口に突き進む。瞬間、負荷に耐えられなくなった背面の生体装甲が大きくひび割れ、機体構造が露出する。撒き散らされる警告(アラート)を意識の埒外へ(キャンセル)、意識の埒外へ(キャンセル)、意識の埒外へ(キャンセル)。
思考リソースを極限まで先鋭化させ、放たれた鏃(ARROW HEAD)の如く疾走する。
超空間通路、脱出。
――そこには、ひとつの惑星が待ち受けていた。そうとしか形容できない威容があった。
超大型機動要塞「エクソダス」。
それが、超空間通路の向こう側に潜んでいた敵の補給源の正体だった。今この瞬間も、あの巨大な要塞内部では敵戦力が次々に生産されている。